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【シリーズ】 13代目の破壊神

未来予知への目覚め

作者: 千路文也

 記憶というのは実に曖昧だと私は思っている。本当に今まで体験してきた事は何偽りも無く真実なのか。それを断言できる事は出来ない。この世界に住む全員が自分の記憶が本物だと信じている、ただそれだけで自分の記憶として成り立っていた。


 でも、私はそうじゃないと疑問に感じる事がある。ふとした瞬間に、母親に見守られてブランコを揺らす幼少期の私を思い出した。その記憶は微かに覚えている程度で、いったい何処の公園だったのか、何歳の時だったのか、それらをハッキリと思い出せない。断片的にしか記憶が存在していない。


 こういう記憶を思い出すと常々感じる。本当に体験した出来事だったのかどうか、結局は分からず終いで、私の頭の中には疑問符が踊っているのだが。


 しかしこんな私にも唯一信じられる思い出があった。それは両親が死んだという悲しい思い出。両親が死んだ理由に私が関係しているのも知っている。


 それは紛れもない真実。


 なのに、私の目の前には偽物の両親が微笑みかけている。おもちゃやぬいぐるみを買ってきて私のご機嫌をとろうとしている。


 私には分からない。何が真実で何が嘘なのか。


 こうして疑問に思っている今でさえ昔の記憶が蘇る。だがこの記憶はまったく体験した事のない物だった。目の前にいる偽物の両親が、何者かに銃で撃たれ、額に真紅色の穴を開ける。


 でも。目の前には笑顔の彼らがいた。いつもの変わり映えしない方法で私のご機嫌をうかがっている。


 私は必死になって彼らが撃たれるビジョンを消そうとする。


 「違う。これは私の記憶じゃない!」


 だが、いくら足掻こうとも彼らが撃たれたビジョンを拭い去れないのだ。こんな悪夢が続くのならばいっその事、全ての記憶を消したい。無の状態に戻って、何もかもやり直したい。


 やがて私はそう思うようになっていた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに、昔の記憶という者は不確かで、自己改竄されていることも多いですね。 このお話を読んでその事をふと思い出させられました。
2014/10/13 19:36 退会済み
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