衝突
その惨状を目の当たりにしてもセシリアの表情に変化は無く、眉一つ動きがない。
二つの遺体に短い祈りを捧げると、再びスコープ越しに周囲を確認するセシリア。
昇って来た階段の左右にはドアがそれぞれある。
右のドアからは二つの遺体に向かって血の海が流れており、二人がそこから逃げようとしていたのが容易に想像出来る。
セシリアはもう一つの閉まっている右のドアへと向かう。
木製のドアに背を預け、ライフルを構えつつ、彼女は短く一呼吸。
気配の源はこのドアの奥。セシリアは意を決し、一気に室内へと突入する!
スコープにはベッドに横たわっていた人物を貪る狼男の姿が映し出されていた。
セシリアの侵入に気付き、肉を引き千切りながらゆっくりと、此方に左半顔を覗かせる狼男。
「ヒドゥン発見、これより殲滅します」
セシリアは顔に付けたインカムに向かって淡々と呟きながら、ライフルの引き金を引いた。
QUICK TRIGGER!
放たれた初撃は勢い良く狼男の左耳を吹き飛ばす。
床に転がる薬莢。
悲鳴、絶叫、憤り。
狼男は怒号を上げながら黒い鮮血を左耳から噴き出すと、セシリアを睨みつけ、口を大きく開ける。
その刹那、喉の奥から青い閃光が走る。
「こしゃく!」
立て続けに二射目、三射目を銃口から放つセシリア。
喉元目掛けて放たれた銀製のライフル弾、撃たれる度に後ろに仰け反りながらも、寸での所で踏みとどまる狼男。
そして再び放たれた閃光の魔弾。
狭い寝室の中を、俊敏なローリングで魔弾を回避するセシリア。
吹き飛ぶ階段への扉。
向かいの部屋のドアも転がる二つの遺体も、粉々に大破。




