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聖槍のロンギヌス


「これは……!?」


 自身に押し寄せて来る膨大な神氣に驚くウイングとカヤード。そして二人の疲弊した体力も傷も、全て癒やされ完治していった。


(ロンギヌスは魔を払う力と、カルマの器を生み出す力の他に、世界中の『愛と善』を蓄える力がある……と、かつて初代教皇が言っていた……)


 ヴェルフェルムが突然そう呟やくと、ウイングは至極納得した様子で頷いた。


「そうか…………急に力が戻ったのも、今まで人々が残し伝えて来た『愛と善』の賜物と言う事か……」


「……ツバサ、雛菊も頑張ってはいるが、そろそろ第二波が来る! 次の一手で決めるぞ!」


 一発目の闇の波動を退いた直後、雛菊はラピスに対し最後の足掻きを見せていた。

 自身の力が尽きるまで、ひたすら技を放ち続け、一分一秒でも波動の発動を遅らせようと試みていたのだ。


「もう……カルマニクスも……尽きちゃったっス……」


 雛菊を覆っていた神氣は消失すると、そのまま意識を失い上空から落下して行く……。


「よく頑張ったな雛菊!」


 その雛菊を受け止めたのはかつてのマスターである、カヤード・ワインズマンであった。


「マスター……」


 ハタバキを召還出来ない為、神氣で光の翼を幻影剣で強引に作り出し、上空まで飛翔して来たのだ。

すまなかったな、お前にも大分心配かけたが……もう大丈夫だ、安心しろ」


 雛菊の瞳には『あの頃』と変わらない、優しくて強い『マスターの笑顔』がしっかりと映し出されていた……。


(ウイングよ、見た限りラピスの体は並大抵の技では傷一つ付けられん。何故ホムンクルスである雛菊が使えるのか理解不能だが、あやつの四柱奥義や最終奥義を持ってしてもラピスは無傷だ。奴の皮膚は何重にも闇を重ねた物のようだが、それ以上の力で、それ以上の技を用いなければ勝機は無いぞ!)


 ヴェルフェルムは冷静にラピスの分厚い皮膚構造を分析し、ウイングに伝える。


「あぁ。要は『ロンギヌスの力』で『最終奥義を超える技』を使えば勝てると言う事だろ?……至極簡単な事だっ!」


 カヤード同様、光の翼で飛翔するウイングは自身あり気に笑みを浮かべる。


(何か閃いたな?)


 ウイングの真意を察したヴェルフェルムの声色も、どこか明るい物へと変わった。


(よし、では我はカヤードと『お膳立て』に回ろう!)


 そう言葉を切ると、ヴェルフェルムはカヤードの精神へ意識を飛ばした。


(カヤード………を………で………する。)


 雛菊を地面に優しく降ろしたカヤードの心に響くヴェルフェルムの声。


 ヴェルフェルムの存在はゴルゴダの龍を撃破した直後から認識していたカヤードは、すんなり彼の意識を自身の精神世界に受け入れていた。


「………成る程、面白い、やってみよう! 少しでも可能性は上げて起きたいからな!」


 カヤードは頬を上げ、不敵な笑みを浮かべると再びラピスの浮遊する上空へと向かった。


「ルゥ! これが俺からお前への手向けだ!! 先に地獄で待っていろ!」


 カヤードは全快していた全ての神氣をメタトロンに注ぐと、死神の幻影を四体生み出す!


【幻影微塵酷死霊】


 ラピスの四方を囲む死神たちは一斉に四柱奥義を放ち、カヤード自身もラピスの頭上へと跳ね上がる!


 赤虎、白龍、蒼餓狼、黒獅子、四柱が同時にラピスに食らいつく!


【百花繚乱】


 間髪入れず、カヤードは本体である自分と四柱を放った後の死神と共に、『全ての幻影一刀流の技』を連続で繰り出して行く!!


 無限とも感じさせる技の数々は、無敵とも思えたラピスの体に確実なダメージを与えて行く。


 幻影一刀流を全てを叩き込まれたラピスの体に無数の亀裂が入る。先程までの不感症だった黒き女神はその身を大きく震わせた。


「今だ!ツバサっ!!」


 カヤードの叫びと同時にラピスの遥か上空にいたウイングは、ラピス目掛けて一気に急降下する!


 超高々度から繰り出される強力な突き。


 それは正にカヤードの『黒天殺』と全く同じ技である。


 幻影一刀流の心髄……


『魔を払い、人々に平穏をもたらす、揺るがぬ強く清き思い』


【聖天刹】


 ロンギヌスの聖なる力、人々が培って来た愛と善の力、神氣、そして『ウイングの命』、その全てを注いだ七色に輝く光がラピスの胸を貫いて行った……。






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