鎌鼬
天井ぎりぎりに浮遊していた龍型ヒドゥンは、烈火の如く激高し、『錐揉み』しながら遠心力を付けつつ、カヤードに突進して来る!
「【幻影剣・鎌鼬】!!」
挑発しつつ、カルマニクスを燃焼させていたカヤードは、ヒドゥンの突進に合わせて巨大な黒い鎌を刀身から打ち放った。
縦三メートル、横幅一メートル強の巨大な鎌は、地面を這うように海面に浮かぶ『鮫の背鰭』の如く疾走して行く。
「ハッハッハ!! 馬鹿め! その程度の技、難なくかわせるわっ!!」
自身の言う通り、地を這う鎌鼬の真上を余裕綽々で通り過ぎる龍型ヒドゥン。
「馬鹿はお前の方だ」
無表情のカヤード。
鎌鼬が回避されても、まるで動じていない。
「ほざけ!!」
カヤードの目前数メートルにまで接近したヒドゥン。
「再牙!!」
ヒドゥンの遥か後方を走っていた『鎌鼬』。
カヤードの声に呼応し、一本釣りの様に勢い良く地面から跳ね上がると、刃を反転させ、今度は天井と地面の間を先程の倍以上のスピードで滑空し、ヒドゥンの長い背中を切り裂いた!
不意討ちを喰らい、思わず地面に強烈な胴体着陸!
絶叫を上げるヒドゥン。
【幻影剣・鎌鼬・再牙】
鎌鼬を更に昇華させた発展技。
一度回避された地を這う鎌鼬を、ブーメランの様に加速を付けて反転させる秘剣である。
「寝起きで体が鈍っているのか?」
中傷混じりのカヤードの視線がヒドゥンを突き刺す。
「おのれぇ……小わっぱが頭に乗りおって!!」
ヒドゥンは切り裂かれた背中から、真っ黒な鮮血を垂れ流す。
「……だが、お遊びはここまでだ!」
龍型ヒドゥンは自らの長い尻尾を地面にめり込ませると、自身の妖気を爆発させた。
【龍刀打尾】
カヤードの全身がビリビリと震え始めた。
今まで感じた事の無い膨大な妖気に圧倒される。
「ネオ! 気を付けろ!!」
カヤードの叫びと同時に、祠内部の至る所から、数え切れない膨大な量の刃が勢い良く噴き出して来た!
この刃の正体は、龍型ヒドゥンの尻尾を覆う龍鱗一枚一枚が鋭い刃に変化し、祠内部に拡散させた物だ。
天井、壁、土が剥き出しになった地面、あらゆる方向、あらゆる角度から刃は襲いかかって来る。
黙っていれば串刺しになって終わる。
カヤードの叫びを聞いたネオは瞬時に高速の印を結んでいた。




