雨上がりのベランダにて
雨上がりの朝
猫と一緒にベランダに出る
湿った風をなぞるように
からだの輪郭が
午前八時をほどいていく
洗濯物の影に
昨日の切れ端がはためいている
できたこと
できなかったこと
感情の濁りが服に染みているようで
それらを見つめながら
ぼくは昨日という日を
少しだけ俯瞰する
空が晴れていると不安になる
誰かがそう言っていた
たしかに今日は
なにもかもがあまりにも明るい
後ろでカーテンが呼吸する
猫はベランダの隅の
割れたプランターの横で目を細める
それは日差しのなかに
忘れられた夜をしまっているように見
えた
思い出せない誰かの声が
今日も誰かの足音に重なる
歩く
道路が渇いていく
猫がふりかえる
その耳の形は
ぼくに似ている
またそのうち雨が降る
それまでに
猫は大きなあくびをする




