プロローグ:花が咲く朝に
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朝露がきらめく庭の奥で、ひとつの花が静かに息をした。
白い小花が、まるで少女の呼吸に合わせるように、そっと開く。
「──おはよう、リリア」
まだ六つの少女、エリアは膝をつきながら囁いた。
小さな手を花の上にかざすと、淡い光が指先に集まる。
花弁がふるえ、露がきらりと舞い上がった。
「今日も元気に咲いてくれて、ありがとう」
村の外れの小さな庭は、彼女にとって世界のすべてだった。
花と話し、風と笑い、母の歌をまねして過ごす毎日。
けれどその静けさの奥で、誰も知らない力が育っていた。
──花が、彼女の声に応えて動く。
「……エリア、また花と話してるの?」
背後から声がした。振り返ると、兄のルークが腕を組んで立っていた。
「そんなの、村の子に見られたら変な目で見られるぞ」
エリアは小さく首を振る。
「変じゃないよ。だって、花はちゃんと聞いてくれるもん」
兄はため息をつき、頭を軽く撫でた。
「……まあ、お前が笑ってるならそれでいいか」
風が二人の髪を揺らした。
その瞬間、庭の花々が一斉に咲き誇る。
白、青、桃色──
それはまるで少女の心に呼応するような、鮮やかな奇跡だった。
エリアは知らなかった。
その“花の力”が、やがて世界の運命を動かすほどの魔法になることを。
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