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知らない罪

作者: かもめ
掲載日:2023/01/12

少年は鳥になった。


別段望んだわけではなかったが、

父も兄も鳥になったものだから、


母に背中を押されるままに

鳥になりたいと願った。


空は青く広く、休む場所も海に

浮かんでいる鉄船くらいしかなかった。


鳥になったからには

世界へ飛んでいかねばならない。

故郷に戻ろうものなら,

きっと溺れてしまうだろう。


「なぁ、お前は願って鳥になったのか?」

友が問う。

「あぁ。」

少年は短く答えた。


「そうかそうか、じゃあ一緒に飛ぼう」

彼は笑って羽ばたいた。


でもその日、

少年は彼と共に戻りはしなかった。


彼は遠い餌を求めたばっかりに、

海に堕ちてフカに喰われたのだった。


残ったのは、ほねとはねのみ。


少年は哭く。誰にも聞こえない空で。


「おい。お前は細いじゃないか」

先輩が怒鳴る。

「えぇ。」

少年は短く答えた。


「一口でいいから食え」

彼は叱って羽ばたいた。


やはりその日、

彼は戻ってきやしなかった。


彼は魚の群れに突っ込んだきり、

姿が見えなくなったのだった。


今度はなにも、残らなかった。



少年は哭く。誰かに聞こえてほしい空で。



「兄さん、父さん。

あなたの見た空は青かったですか。」


どこへ飛んだのか知らない兄と父。


兄は美しい婚約者がいた。

父は少年の妹の顔を知らないままだった。


「友よ、先輩よ、

あなたのおちた海は冷たかったですか。」


自由を奪われた、友と先輩。


友は空に憧れていた。

先輩は誰より痩せこけていた。



少年は鳥になった。

鳥になったからには、青年にはなれない。



その日は飛ばなかった。

しん。…音がしたんだろうか。


少年にはわからない。だが少年は見た。


空が白くなるのを。覆われる空から闇が降るのを。


さぁ君も見て。少年はいるだろうか?


いや、いない。


後には何も、残らない。

とんと音も聞こえない。ぽっちりさえも、

残らない。


空は青い。空は広い。

今日の空には、少年たちは飛ばない。

でも見えて欲しい。覚えて欲しい。


その空が白くなった日があったということを。

たくさんの彼らが空へ羽ばたいたということを。



少年は、鳥になった。

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