【一場面小説】ジョスイ物語 〜如水、盟友に救われるノ段
朝鮮から無断帰国した官兵衛を秀吉は許さなかった。謹慎の末、官兵衛は如水と名乗り死を覚悟する。しかし、秀吉はある特命を如水に与えた。
如水は冥い想いの帰途にある。あの丹波を毛利に婿入りさせろと秀吉は言う。出来れば赦してやると。丹波とは、丹波中納言木下秀俊。秀吉の後継者と目され、諸大名の接待で酒色に溺れてきた若者だ。名門を治める器のはずがない。
申し出に一門の後見、小早川侍従隆景は、幸甚、考えてみましょうと返事した。刹那、隆景が眉の微かな憂いを如水は見逃さなかった。
その後、暫くして官兵衛は聚楽第に伺候した。
「小早川侍従が秀俊を養子にくれだとよ。」
嬉々とする秀吉。官兵衛は驚いた、隆景は秀俊を毛利ではなく、我が跡継ぎにと懇願したらしい。無論、毛利本家を護る苦肉の策だ。秀俊を押し付け、毛利を豊臣に抱き込む企みが成った秀吉がキキキと哄う。
晋州城撫で斬りへの諫言、それ以来の秀吉の勘気は解けた。盟友が我が命を救ってくれたのだ、如水は深謝した。
この秀俊、後の小早川秀秋が国史に残した足跡は、過小ながら甚大だったが、そのあまりにも有名な裏切りを整えたのは、黒田であった。豊臣の滅亡は、この時から始まっていた。