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小学校の災難

カクヨムにも掲載してます。そちら話数多くして文字数少なめになっていますのでそちらの方が見やすい方はぜひそちらで!

「行ってきます。」


そう言って家を出たのはいつだったかはもう忘れてしまった。きっと俺はこの頃から壊れ始めていたんだろう。


・   ・    ・

 俺の家庭は、姉の(かなえ)妹の(のぞみ) の3人兄妹で、兄妹の関係性は比較的良好だと思う。ただそのかわりというものなのか、両親の中は最悪だった。


父親の光輝(こうき)は大声で怒鳴っていた


「おい!飯はまだなのかっ!」


それに言い返すように母親の起子(きこ)は言った


「子供たちと一緒のものを食べればいいじゃない!」


「なぜ俺がガキと一緒のものを食わなきゃいけないんだ!」


「毎回あなたのために作ってられないの!」


 こういった小さい喧嘩を大声でずっとしていた。

これが毎日。姉は慣れるかの如く妹を連れて二階にいき、俺も耳を塞いで寝たふりをしていた。

 暴力こそなかったが、精神的にはいつも辛かった。

そのせいもあってか学年も小学三年生にして、色々と諦めをついた子だったと思う。というのも学校ではいじめにあっていた。


「お、どろぼう!今日もここにきたのか笑お前の行くところは、けいむしょだろー」 


と彼らは笑う


「あーそうだな。」


面倒事が嫌いだった俺は気だるげに返した。

だが子供の彼らにはこの発言が癪に触ったのか


「なんだお前気持ち悪いな!」


そう言って軽く突き飛ばされた。その拍子に膝を擦りむいた俺は深くため息を吐いた。


(暴力は痛いんだよなぁ)


 父や母はよく言った『仕方がないこと。』今回のことも仕方がないのだ。

 事実俺はある時万引きをした。今となっては反省もしているしもうしないと誓ってもいる。だが罪は罪だ。それに伴って起きる物事は、『仕方がないこと』なのだ。


「ねぇ」


そう言われて振り向いた先には身長は俺より5センチ小さいぐらいの黒いショートカットの女の子が一人立っていた


「だれ?」


俺がそう聞くと彼女が答えた。


「私?日戸塚転香ひとつかてんか


「四年生?」


そう言って、年代ごとに分かれてる上履きの色を見て聞いた。


「?何年か言ったっけ……あー上履きか」


そう納得した日戸塚さんは、俺の上履きを見て再度答えた


「君はー三年生か。じゃあ私がお姉さんだね!」


「そうだね。それで、何かようでもあったんですか?」


「冷たいねぇ…まぁいいや。なんか嫌なこといっぱい言われてたからさ、いやじゃないの?って思ったから聞こうと思って。」


そう日戸塚さんは聞いてきた。いやじゃないわけないでしょ。そう思ったが、話を長く続けたくない。そう思った俺は


「仕方ない事だし。」


そう短く答えた。


「ふーん、変なの。あ、授業始まっちゃう!バイバイまたね!」


よし帰った。なんだったんだ一体。……また?いつのまにか次も会う約束がされていた。




 何故かあれ以来日戸塚さんは、俺が一人でいる時に度々現れるようになった。


「よ。昨日ぶりだねー」


「ほんとにきやがった…」


「失礼だな。聴き忘れた事あってさ。」


「聴き忘れた事?」


「名前!私だけ言って聞いてないじゃん」


「あー。尾張の《おわりの》だよ」


「下の名前は?」


「言いたくない。」


下の名前は、嫌いなんだそう言いそうになったが、ふと思った。なんかこいつのペースに乗らされる。なんか癪だ。


「ふーん。なんで?」


「なんでもいいだろ。聞きたいことは聞いたろ。どっかいけよ。」


そう突き放した俺に対して彼女はニタニタ笑ってた。


(こいつ……つくづく感に触りやがる。)


「そんな冷たくしないでよ笑かなしーなー」


「もう知らん。勝手にしてくれ。」


「そうするね!でねでね」


彼女はよく喋った。最初の頃はウザくて仕方がなかった。テキトーに返事していればいつかいなくなるだろう。そう思った俺は放っておくことにした。

 

この時なぜいやじゃなかったのかは、俺にはわからない。ただ不思議だったのだ。こんだけケラケラ笑いながら話すのに、目はひとつも笑っていない。彼女の感情が読み取れないのだ。


こういった場面が気づいたら半年も続いていた。


「でね!昨日初めてママと一緒に料理したんだけどさ!」


「そうか。美味かったか?」


「全然!おもっきり失敗しちゃったんだ!それがまたくそまずいの!面白いねー!」


そう笑い転げてる彼女を見て


「何一人で壺に入ってんだ」


「へへ、ついつい」


そういう彼女を見るのが、いつのまにか苦じゃなくなっていた。

 認めたくはないが、少し気が楽ではあった。


 この時の俺は幾分か救われていた。だからもし彼女が俺みたく疲弊していたらこの分ぐらいはお返しをしようそう思って接していた


だがそんな時は長く続かなかった。


 半年という時が過ぎた時、親から言われたのだ。


「明日学校は休みなさい。」


「なんで?」


「愛子の旦那が亡くなったのよ。」


そう悲しそうに母親は言った。愛子は母の姉にあたる人だ。そして愛子さんの家は、母 父 姉 弟の四人家族だ。俺もよく亡くなってしまったじゅんおじさんには、遊んでもらった記憶がある。


「わかった」


そう答えた俺は何も考えることなく眠りに落ちた。


これが1度目の災難と喪失の始まりだ。ここから壊れかけヒビだらけの家族崩壊が始まる。

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