4 訓練・・・シロル
これまで:早々にとんでもない距離の転移を覚えたミットはシロルの案内で周回する衛星の調査に乗り出した。ジーナが自らの生い立ちを話してくれた。
有機体に比べ効率が良いとは言え、身体を使う作業の負荷はあたくしにとっても軽いものではありませんが、皆さまがお休みの間にさまざまな検証などを行うのはいつもの事でございます。
あの突然始まったあたくしのものではないデータの検索。マノ[さん]に通信を試みます。この通信方式はあたくしが送る送らないを決められます。[さん]のメモリ検索も[さん]の許可を取ればこの回線で行うことができます。
然るに、軌道上で認証なしに突然起こった外部接続と検索は、これまでにない機器の存在を意味します。それは地上に降りても継続していました。あれから今に至るまで同様な現象は起きていません。
共通要素は外に放置された衛星ですが、明らかに活動を停止しておりますので除外しておりました。
念のため詳細を調べるべきでしょうか?
あたくしは休んでいた椅子から立ち上がり、静かにトラクの外へと向かいます。アリスさまとミットさまの安らかな寝息が心地良く響いていますね。
ああ、これはいけませんね。地面に直置きの上、夜露などが当たってしまいます。マシンを撒いて地面から台を作り衛星を30セロ程持ち上げます。トラクから差掛けの屋根を出し、1メル半の塊を覆いました。発電素子は大き過ぎるので剥き出しですが問題ないでしょう。
マノ[さん]と連携して衛星を調べてみましたが、やはり衛星の機能は停止しています。
・ ・ ・
アリスさまが家を建て温泉を掘り、といつもの街づくりが始まりました。その傍らでミットさまは物を浮かせる特訓をジーナさまから受けておられます。
「ほれほれ、しっかり集中せんか。力は十分に集まっているが、肝心の場所に来ておらん。
ようく見よ。こうじゃ!」
30セロ程の生身で持ち上げるには重い石が浮き上がります。重力の操作でしょうか?慣性はどうなっているのでしょう?
叱られながらミットさまも小石を僅かに浮かせます。コロンと横に転がりました。額に大粒の汗を浮かべて真剣な眼差しで石を睨み付け、今度は2セロ程も持ち上げました。
「ふむ、ようやった。休憩いたそう。やはりミットさんは筋がいいの。これができたら次は圧縮じゃぞ。固い石を縮めて少し小さくするのじゃ。物によっては宝石ができるでな、よい値で売れる。ワシは胡散臭いババア故、売ったことはないがの」
うふふ。最初からおばあさんでもなかったでしょうに。
でも石って小さく縮められるのですか?そのままであれば起きる現象としては結晶化ですね。宝石もそのひとつです。時間をかければナノマシンにも可能です。
あたくしはミットさまとジーナさまにお茶のお代わりを注ぎながら、そんなことを考えておりました。
午後はジーナさまが静止軌道へ療養に行ってしまわれたので、ミットさまは海へ食料調達でございます。養う口が増えたからとおっしゃいますが、遊ぶ気満々なのはお見通しですよ。
あたくしもボートでお手伝いとなりました。
沖へ出て水中へ飛び込んだミットさまがすぐに上がってきました。
「シロルー。カニが居たよー。足のなっがいやつー。うじゃうじゃ居るよー。捕りたいねー」
この間は化かされたと言ってましたね。
「ミットさま、1匹ずつ足を畳んで持ち上げるのはできますか?」
「えー、ジーナの術でかいー?できないことはなさそーだねー。あたいの手に負えればだけどー」
「うまく持ち上がったら突いてしまいましょう」
「おー、そしたら捕りホーダイだねー」
ミットさまは早速潜って集中を始めます。狙いを付けた1匹が足を畳みました。と、隣もまとめて足を縮めています。ああっ!2匹の足が潰れて固まってしまいます。そのまま2匹が水面まで浮いてきました。あたくしが元気そうな方を槍で突いてもびくともしません。もう一方も引き抜いた槍で止めを刺しました。
ボートに無事2匹のカニを回収です。
「シロルー。次はまとめて持ち上げるよ。浮いたら順番に突いちゃってー」
あらっ?やっぱりでございますか?
あたくしは急に忙しくなりました。カニが10数匹単位で上がってくるのを突いて突いて、終わるとミットさまがボートの上へドシャっと置き、次を持って来ます。
6回目にはボートが半ば沈みかけ、ミットさまがボートごと持ち上げました。あたくしも乗るところがなくなり、2人で泳いで戻る始末でございました。ボートはひっくり返ることもなく大人しくあたくしとミットさまに引かれて戻ったので、今夜はカニ尽くしでございますね。
・ ・ ・
村の引っ越しも全て終わり、立派な温泉付きの村長屋敷。その大広間で今夜は引っ越し祝いの宴会でございます。
朝からミットさまとジーナさまがハイエデンのガルツ商会本店で、活カニを売って買い付けた野菜、穀物とお酒を大量に持ち帰っていますので食材も豊富です。トラクのお肉も使って、あたくしも腕の振るい甲斐があるというものです。
ここ数日はネギラさまとチロルさまがあたくしの助手に付き、料理を一生懸命覚えておりました。
宴会が始まり、お酒が回って口も滑らかになった頃、アリスさまがヤルクツールへの転移の件をジーナさまに切り出します。ですが心当たりはないご様子で、明日にでも行ってみて来ようということになりました。
「たまにはこーやって息を抜かないとねー」
大皿から料理をとりながらミットさまの言われる通り、ここ数日は皆さま引っ越しに開墾に一生懸命でした。ミットさまの先導でカニの生簀も作って、そこへジーナさまが海底のカニの群れを50匹以上も生きたまま移し新たな収入源としたり、西の内海の幸も工夫次第で楽しみです。
あたくしはアリスさまの許可をもらい、夜間に衛星の解体を行なっていました。丁寧に取り外し、外観に傷みのないものはひとつひとつ弱い電流から通してみて反応を見ます。
この衛星というものは半分がバッテリ、1/5が計算、記録用のメモリ、その他は姿勢制御の機器で燃焼剤。そのタンクは空でしたが、残りは受発信機器と8個のカメラでした。メモリと受発信の一部は通電に反応がありました。
やっと一通りの作業が終わりましたが、中身の解析にはまだ時間がかかります。
ジーナさまとミットさまがあたくしとアリスさまをそれぞれ連れて、ヤルクツールへ転移した広場の上空へ現れます。
「こんな田舎は見るものもないでの、ここへは来たことがない。東の峠道を超えて左へ曲がる道というと、あの山の裏を回る道じゃな。ここから見る限り行き止まりじゃが、1000ケラル先へ通じておって戻れないとはのう。あの山の上に降りてみようぞ」
次の瞬間立木に囲まれた山の上。後ろに内海の水面が木の隙間から望めます。転移した少し広い場所は何の変哲もないようなのですが
「ふうむ。妙な渦があるの。ミットさん見えるかの?」
「えーっ。あたいには渦は見えないかなー、ちょーっと変な感じはあるよー」
「そうかえ。あの草の薄くなっている辺り、よーく見てごらん。空気が渦巻くようにワシには見えるがどうじゃ」
「空気って見えないんだよー。えっと、あそこー?うーん?お?
あれあれー。
ほんとだー、よーく見ると巻いてるねー」
「よしよし。そうなるとあの渦はどこから来ておるのか。そのままの目で広場全体を見てみようぞ」
しばらくお二人はボーっと広場を眺め下ろしていました。アリスさまは諦めたように、内海の景色を眺めています。
「ねー、この下にひとつあるよねー?」
「うむ」
「向こう側にもなんかあるような気がするんだけど、分かんないねー」
「まあ、一度飛ばされてみて、自分で戻って来ても良いのじゃがの。
では下を見に行こうぞ」
山裾へ一瞬で移動しました。広場より一段高い木の間、草地になっています。あたくしのサーモグラフでは若干温度ムラがあるようですが、陽射しが有るのでどことも分かりません。
「うん。この辺だねー。ぶっとい棒がほわっと立ってる感じ?」
「地面の下をよく見るんじゃ」
「えっ、下なの?うーん?」
「どうじゃ?掘り出しても大丈夫そうじゃの。持ち上げてみるが良い」
ミットさまが何もない地面を睨み付けます。両の拳を握りしめ背がふるふると揺れ、突然ボコッと地面が持ち上がりました。
「ああ、これはいかんやつじゃ。強すぎる。一旦滝上のワシの家に放り込んでおくれ」
「あーい」
直後持ち上がっていた土の山にミットさま垣間見え、山がペシャっと潰れます。
戻って来たミットさまが広場を見て言いました。
「おー、真ん中の渦が消えたねー」
「あれと同じものがまだあるはずじゃ。向こう側を見て参ろうかの」
あと二つ同じものが埋まっていて全て滝上に転送してしまいます。三角の焦点に転移渦があったということなのでしょう。転移渦の場所をジーナさまとミットさまが改めて調べます。
「場所はこの辺だよねー?」
「そうじゃ。草が薄くなっておる。少し力を流すぞ。よく見ておれ」
「お、お、なんかあるねー。渦はできないよー?」
「あれが出たらワシらはとうに飛ばされておる。上の土を退けてみよ」
ミットさまが両手を翳し持ち上げるような仕草をすると3メル四方の土が草ごと浮き上がり、
右手の離れた場所へ移動しました。
20セロ下からは平らな灰色の板が現れます。
「ふむ、よく練習したの。どれ、もっと大きいようじゃの。ミットさんも力を流してみよ」
ミットさまが先程のジーナさまを真似て集中します。
「あ、これ!」
ジーナさまの声が上がったと思うと山に挟まれた全く別の場所。不整地車両の軌道跡が見えます。これはヤルクツールの奥ですね。
「やー、失敗したよー」
「そうじゃの。じゃがここには受けるような仕掛けは無いようじゃの。それが分かっただけでも無駄とは言えんの」
そう言うと一度上空へ転移しました。湖と川が見えます。ヤルクツールの街は遥か下流、ここからは見えません。西の内海もおそらくはあの山の向こうと思って見ているとまた突然風景が変わり、戻って来たようです。
「この板に転移の機能があって、外した3つの玉は力を注いでいたというところかの。なかなか面白いではないか」
ジーナさまは土を退かし、この板を丸ごと持ち上げて裏側を見ましたが、のっぺりとした板で中がどうなっているのか分かりませんでした。
アリスさまが解析のため、分解マシンを撒き分子単位のマッピングを試みます。薄いので然程の時間はかかりません。ところが板は均一な石で、なんの仕掛けらしきものも見つけられませんでした。
ミットさまが再度力を注ぐと転移は動作するようです。よくわからないままここを引き上げることになりました。
・ ・ ・
今夜の議題は2つ。衛星の修理とここまで作って来た道です。
衛星は回収した分の選分けまで出来ています。使えそうなものを残し、後は原材料に戻しました。バッテリは全く充電能力がありませんでしたし、発電素子は半分が潰れてしまって使えません。軌道修正機構も燃料タンクに穴が空き噴射管もダメ。設計図が無いので今のところ修理は出来ません。カメラは8個回収、送受信回路、メモリの1/3は回収しましたが、内部の記録へのアクセスはできていません。
あたくしがそう報告しますとミットさまが
「別のがまだあるんでしょー?」
「12個あったって話だよね?」
「はい、その通りです。稼働中のものは1個のみ、それも故障箇所が多い状態です。他に軌道から弾かれ消えたものが3個ございます」
「でー、残りの使えないの8個のうちの1つがこれねー」
「今動いてるのは最後にしよーか?片端から回収して部品を集めよう。上手くすれば何個か修理して戻せるかもね。明日はミットとシロルで行ってきてくれる?」
「あーい」「かしこまりました」
道をこの先どうするかはアリスさまがジーナさまと明日相談されるそうです。
・ ・ ・
衛星の回収は順調です。午前、午後とも2個ずつの回収ができました。1個は受発信機器周辺に何か当たったらしく他のほとんどの機材は無事でした。最初の受発信機器と周囲の破損した部品を取り付け、明日にも周回軌道に戻せそうです。軌道修正の燃料が用意できないのが残念です。
内海の道路はアリスさまはジーナさまと残り600ケラルで1周となる道の検討をされて、このまま進めていくことになりました。
サイナス村から見ればこの先のルートの方が近いからということでした。
ジーナさまはこの内海の周遊路ができるということで、周囲がどうなっているかとても気になりだしたようです。自身は何処へでも跳んでいけますが、村の交易相手がパルザノン方面だけというのが淋しいと言っていました。
ジーナさまが改めて上空へ上がり近所の町や村を見て行った結果、内海をぐるっと囲む山の向こうの西に村がありその先に町、400ケラル先にトリスタンと言う街があるとのお話でした。トリスタンは何度も行ったことがあるそうですが、こうやって位置を確かめたのは初めてだそうです。
何処へでも転移できるので地図も位置関係も考えたことが無かったらしいですね。少し北へ戻って西へ山越えが出来れば有力な交易相手になりそうです。
「そう言えば、先代が言い伝えだと言っての、4代前というから5、600年ほど前じゃろうか、巨大化の術を編み出した者が居たと話してくれた。そんな術は伝わっておらぬがの。
孤児の扱いが余りに酷い街が有っての。巨大な剣で街をバッサリ切ったというのじゃ。大地が大きく割れて真っ赤に溶けた岩がその割れ目から吹き出したそうじゃ。街は岩の熱で焼き尽くされ滅んだと言う。
その時右足を踏み締めてできたのがこの内海で、周りに押し上げられたのが山になったと言うのじゃ。丁度東に大地の割れ目があるでの。あれが切られた街だそうじゃが、左足の場所は上から見てもわからんじゃったわ」
「どっかで似たような話を聞いたねー?」
「あれじゃない?レクサール。悪魔がどうとか」
「はい、レクサール。悪魔が剣で街を割った。街は燃えて、住んでいたものは全滅した。と言うものですね。リッツさまが200年以上前と言ってました」
「レクサール?あそこの孤児は周りの大人が懸命に守っておるが酷い待遇じゃぞ。親身なものが周りにおるだけマシじゃで手は出さんが、心配でたまに見に行くのじゃ、冬の終わり頃にな」
「ケルヤーク、レクサール、ヤルクツールは今のハイエデンからチューブ列車で行ける交易圏です。食料事情はかなり改善しているはずですよ」
「そうかの。ならば良いのだがのう。
村もようなったし、また大きな街を巡って酷い暮らしの孤児たちを集めてこようかの」
「あたいたちはえーせいを修理するよー」
・ ・ ・
部品をやりくりして再び軌道に戻せたのは4個でした。
最初は正しい高度と起動速度を合わせるのは大変な作業でした。と言うのもミットさまが衛星を連れて転移すると、静止軌道同様に地表の真上を保つ速度で現れるため、低軌道では全く速度が足りないのです。
そのため3ケラルほど上の軌道に転移しそのまま押し下げてもらいました。高度が下がるに連れて対地速度が上がり、使用可能な軌道速度を得ることがきました。1ハワー付きっきりでモニターしなければならない面倒な作業でしたが、これで通信も地図更新も上空に来ている時はこなせます。
更新間隔は最大でも40メニ程度ですし、地形図も衛星同士でやり取りするので最新版が手に入るようになりました。
3日も掛けただけの成果はありましたね。
内海周遊路にかかりますと地盤の固い岩場が続き、平坦にするだけで50ケラルほど進んだ後、また川と海岸まで迫る山越えに突き当たりました。橋で高さを稼ぎ、正面の岬にトンネルを掘ることになりました。
前回と違うのは地形の踏査を、ミットさまに抱えられたあたくしが空中から行う点です。
2ケラルのトンネルに4日を費やして抜ける先が落差16メルの断崖になっていると分かり、100メル手前から右に曲がる経路に変更します。
そのあとは崖に貼り付くように棚状の道路で、下まで降りる1600メルほどの斜路となります。降りた先は岩がゴロゴロとした海岸ですのでこの先の進行は余り早くはなりませんね。
予定通りに右へ曲がるトンネルが抜けた時のことです。崖の岩面に緑色の形の定かではないヌラリとしたものが貼り付いていました。
「なんかナメクジっぽいー?」
「あの洞窟のナメクジは結構食べられる味だったよね?」
「わー、結構いるよー。デンキで下に落としたらダメになるかなー?」
「さすがに16メルも落ちると潰れちゃうよ。このまま道を作っちゃおうか?」
「えー?せっかくのナメさん、混ざっちゃわないー?
アリスー、おっきな箱作って。あたいが集めて中に入れるよ」
「分かった。シロル、トラクを5メル下げて。前に箱を作るから」
アリスさまはクロミケに木質を3本運ばせて、トラクの前に3メルのサイコロ状の箱を作りました。それをミットさまが断崖のトンネル出口から見える岩だらけの地面に一緒に転移します。200キルもの重さの箱を難なく下ろすご様子は、ジーナさまのご指導と練習の成果でしょう。
次はナメクジのような緑の生き物を、岩から10数匹まとめて引き剥がします。丸いダンゴのように固めて箱の上まで持って行くと、2メルほどの高さから
ドシャァ!
落としました。
次の区画100メル分を片付けるのに5回繰り返すと、箱はもう半分程も埋まってしまいました。
ともあれこれで1区間の斜路が作れます。
マシンを散布し待ち時間にアリスさまとミットさまがクロを連れて箱まで降りて行き解体を始めました。
「あのナメさんとは違う感じだねー。食べられるかなー?」
アリスさまが止めを刺したものにマシンを撒き分解しています。肉は僅かですね。皮は脂肪分が多く身体のほとんどが水分のようです。肉質以外は水分を抜き肥料にするようです。あの巨大な箱半分のナメクジから3キルの肉を回収して来てくれました。料理番としては味見しないわけにも参りません。
見た目よりもしっかりしたお肉ですね。試食用に切り分け焼き、蒸し、煮るなどで厚みを変えて加熱してみます。
臭みは無いですがほんのりとした甘味があります。歯応えは頼りない感じですので硬めに調理できれば割と美味しいお肉です。
「アリスさま、生よりは干し肉加工や燻製が良さそうです」
「それはいいね。日持ちするのはありがたいかな?じゃあ次は干し肉で行こう」
岩壁に涌いていたナメクジの粗方をミットさまが回収して60キルほどの干し肉と180キルの肥料が残りました。
降りて見ると色付きのゴツゴツした岩が折り重なるように敷き詰められた一面の岩原で、緩い斜面が海に向かって没しています。半透明の濁った白、灰色の岩にクッキリした青が細い縞模様で並ぶ岩に黒いザラザラした岩。光の加減でしょうか、上から見た時はこんなに綺麗ではありませんでした。
右手の山裾は10メルほどの岩の斜面でその上に木が生えていて森といった感じですが、この岩は皆この山が崩れたものなのでしょうか。だとするとこのまま斜面の近くに道を作るのは、いつまた岩が崩れてくるかわからず危険かも知れません。
山裾から10メル離して平らに均すだけの簡単な道にしました。岩がここまで転がってくることもあるでしょうが、勢いはかなり抑えられるでしょう。海面からも2メル以上も高いので嵐でもなければ大丈夫です。
「この青い縞は欲しい鉱物だね。均す時にこれだけ別にしてくれるかな?」
「はい分かりました」
岩の分解でこの鉱物だけ除外する形でいいでしょうか。兎も角やってみましょう。
灰色の岩は溶けて平らになっていますが、斜めに青い板が宙に突き出た形で残っていますね。トラクを前進させ次の区間へ進めます。その後ろから道路にクロミケが座り込み踏み折った青い鉱物を集めタガネで根元を突いて折取っています。
見かねたアリスさまがトラクの後ろに重い鉄ローラーを3本取り付けました。次の区間ではほぼ平らに青い鉱物が折れて、箒でマシンの回収と同時に鉱物を集めるようになりました。
シャリシャリと涼しげな音と共に青い鉱物が集められます。
岩浜は30ケラル続き砂浜へと変わりました。鉱物は400キル近い量が集まりアリスさまはほくほく顔です。
砂浜ということでクロは警戒に、ミケは魚釣り、アリスさまとミットさまはボートで漁に出ます。また砂地を走る荷車を作ってもらい、走らせるミットさまの楽しそうなこと。望遠で見るその表情をしっかりと目に焼き付けながら、あたくしは引き続き砂地に道を作って行きます。




