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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第8章 魔物
74/157

7 続探索・・・マノさん

 これまで:レントガソールの知る狩場の洞窟でミドリグモを遂に狩った。アリス達は洞窟の未踏部分足を進める事にした。

「ナメクジ部屋の左がまだだよねー。行ってみよー」

「まあ、奥は大体見たしね。いいんじゃない?」

「そうだな」


 パンセラも連れて行くことになりました。


 あれだけ狩ったのにまだコウモリとカエルが出てきます。コウモリはミットさまとレントガソールさまの剣で、カエルはミットさまが弓の2連射で仕留めクロが回収して行きます。今朝は4匹の5匹でした。


 ナメクジ部屋に20程ナメクジが出ています。アリスさまとシロルのトゲ付きの針で離れた場所から削ります。レントガソールさまも弓で加勢するとみるみる数を減らします。左手の奥から何匹か出てきます。あちらに巣でもあるのでしょうか?


 左手の分岐へ進んでいくとそこそこ広いようですが天井が低い。クロミケが足を縮め2メル半の背丈になりましたがそれでも頭が当たり、レントガソールさまもまともに歩けません。足元もデコボコが大きく岩も多数転がっていて屈んだ姿勢が辛そうですが、(がん)として一緒に入っていきます。


「ナメクジは品切れー?」

「左側の天井が高いみたいだよ。行って見る?」


 クロが足を縮めナックルウォーク(ゴリラあるき)で移動し立ち上がりました。2メル半は大丈夫なようです。


 レントガソールさまもそちらへ移動します。

 パンセラがタタっと左へ行き少し先で岩壁に向き合いました。何か引っ掻くような動きです。レントガソールさまが手招(てまね)きをしています。


 アリスさまがそばへ行って見ると

「地虫だ。岩の隙間を出入りしているな。向こうは空洞かもしれん」

「うーん。こんな狭いとこから出て来る虫に余り興味はないんだけどな」

「アリスー。ここほれニャンニャンだよー」


「なによ、それ?

 でもどうするの?」

「ミケー、ちょっと蹴ってみなよー」


 当然でございますがクロ、ミケは自壊(じかい)の怖れのある攻撃は致しません。


 ドガン!ミシッ。

 かなり加減した一撃ですのに岩にヒビが入り、パラパラとカケラが落ちました。わたくし、今の衝撃(しょうげき)音響解析(おんきょうかいせき)を当然のように行なっております。計算中……

 右手の8メル辺りが薄いようです。アリスさまの網膜(もうまく)へ予想厚を投影します。先へ進んだ左側、地面に岩がたくさん散乱していますね。アリスさまが岩のカケラを持ち岩壁へ投げつけます。

 コーン。


 よく響くようです。クロミケが足元の岩を後ろへ放り、足元を広げると2体の蹴りが炸裂(さくれつ)しました。

 ボゴゴン!ガラガラー。


 随分と都合良く穴が空いたものです。ただちょっと狭いですね。1メルほどの穴ですので、クロミケとレントガソールさまには狭いですが、まずは奥の確認でしょう。

 ミットさまが灯りを一つ放り込みます。が、岩がゴロゴロと転がっている場所が見えたと思ったら隙間へ落ちて(ほの)かな光しか見えなくなりました。

 ミットさまは矢の中程に灯りを(くく)り付け、向こうへ放りました。6メルほどのところで光って周りが少し見えます。


「割と広いー?奥になんかいるねー。とにかくここを広げよーよー」


 ミットさまが場所を空けるとクロミケのダブルのハイキックが放たれました。

 ドガガ!ガラガラー。


 崩れが収まるとクロが頭を低くして潜り込み足元を(ふさ)ぐ岩を退()けていきます。足場を広げるとミケも潜って岩と格闘を始めました。


 クロミケが作業中でございますのでかなりうるさいと言うのに、ミットさまが右手を警戒しているご様子。


「クロミケ。ちょっと静かに!」


 ピタッと動きを止めるクロミケ。生身ではこうは行きません。

 ミットさまが弓を引き出します。それを見てレントガソールさまも弓を取りました。


「的は小さそうだよー?」


 そう言って2連射。

 ミットさまはよくこうやって、獲物を隠れ家から追い出したりしますが、この闇に射込んでどうしようと……途端に灯りの範囲に6匹ほどの大ネズミが飛び込んできました。アリスさまとシロルの針が飛び、ミットさまとレントガソールさまもそれぞれ1匹射抜いています。


 飛び道具の斉射(せいしゃ)が収まるとパンセラが計ったように飛び出し3匹を瞬く間に鋭い爪で叩き伏せました。

 パンセラの勢いはそこで止まらず、闇の奥へ踊り込んで行きます。赤外域(サーモ)で見ても動きが速くて何をしているのかよく分かりませんが、叩きつけるような音だけが響いてきます。


「すごいね、パンセラー。全然声を出さないんだねー」


 転がる岩が遮蔽(しゃへい)物となって、存在に気づかなかったようです。ネズミは体長50セロ、細い尻尾も同じくらい有ります。

 狩を終えたパンセラが2匹のネズミを(くわ)え、悠々(ゆうゆう)と戻ってきます。


「クロミケー、もういいよー」


 そう言ってパンセラを()で回すミットさま。


「これも魔物が混じっているようだな」


 レントガソールさまがさっそく腹を開き3匹から魔石を取り出しました。


「ナメクジとよく似ているな」


 パンセラはミットさまの抱擁(ほうよう)に満足したのか、獲物運びを再開します。壁の向こうではまだクロミケが岩を相手に奮闘(ふんとう)しています。

 パンセラは大ネズミを7匹持ってきました。

 魔石が9個、毛皮14枚、肉は47キルの戦果です。


 大ネズミの始末が終わり、20メニ経過。壁の向こうへ移動しましたが、まだクロミケが岩を退かす作業を続けています。1メルほどの通路の両側に2メル近い岩山ができていますが、あと1メルほどで抜けられそうです。


「気配が移動してるねー。なんだろうー?そこそこおっきいと思うんだけどー?」


 ミットさまの感知能力にも、すっかり馴染(なじ)んでおりましたが謎でございました。この人数で、しかもクロミケが作業中で騒音の最中(さなか)ですのに。先程のネズミにしても、パンセラが気づかなかったネズミを小さいとまで看破(かんぱ)していました。


 通路が開通しミットさまが先頭で探索を再開です。先程の戦利品は壁向こうの手押し車に積んで置いてきました。ミットさまは正面へまっすぐに進んでいきます。


 正面がぼんやりと明るいようです。発光生物でもいるのでしょうか?光はサーモには全く見えず冷光です。気配の温度も低い。冷血のようです。

 ミットさまはさらに近づいて行きます。6メルほど手前で止まりました。発光しているのは苔のようです。青黒い、背景と見分けの付きにくいものが気配の主のようです。

 浮かび上がる輪郭はヘビのようですね。ミットさまが合図して灯りを放りました。

 カン!

 レントガソールさまの矢が弾かれます。


 ガスッ!

 クロミケの槍は首の下に当りました。ヘビが大きく体を揺らします。


 灯りに照らされ見えたのは暗い緑色のヘビ。長さは3メル半、太さ20セロでしょうか。目の周りが真っ黒です。


 シャーーーーッ!

 突然の攻撃に怒ったのか真っ赤な口を開き威嚇して来ました。

 もちろん皆さまがそんな好機(チャンス)を見逃すはずがありません。ミットさまの矢と重い針が2本口に飛び込み、ヘビがのた打ちまわります。

 レントガソールさまが剣を抜き、上から首を切り落とそうと振り下ろしました。

 ザシュッ!


「切れるヘビはこんなもんだよねー」

「3メルクラスの血抜きかー。台を作ろうか。ちょっと待ってね」


 5メニほどかけて高さ2メルに滑り台のようなものが地面から立ち上がります。

 頭を下にヘビを乗せてもらい、尻尾の方から壁で挟み付けて締めて行きます。腹の辺りまで思い切り締め付けると滑らなくなりました。絞られた血は竪穴に落ちて行きます。


「こんなもんかな」


「向こうに出口があるみたいー。見てきた範囲は真っ暗だけど風が吹いてるよー」


 ミットさまが苔の明かりを指して言います。


「じゃ、行って見ますか」


 苔は正面の一部だけですぐに暗くなってしまいました。通路は右手に折れ、途中、大ネズミの8匹と遭遇しましたが、パンセラが叩き伏せてしまいました。普通ですと毛皮が爪で引き裂かれるので嫌がられるでしょう。

 クロが紐で縛って担いで行きます。


 200メルほど6、7メル幅の通路をまっすぐ進み左へ曲がると大きな岩が積み重なって道を塞いでいます。上の方にうっすらと明かりが見えるので出口が近いのでしょう。天井が余り高くないので、アリスさまが岩を沈める形で階段を作ることにしました。


 途中には分岐らしいものは見えなかったのですが、ミットさまが曲がり角で後ろを警戒しています。わたくしたちの気配に応じて、虫のようなものが岩壁を伝って降りてきたようです。

 7メル後方の両側の岩壁に、青緑のテラテラと光を反射する虫のカーテンがぞわぞわと降りてきます。大ムカデに似ていますが、頭は小さくお尻に大きなハサミ、平たい身体にたくさんの脚、8対16本でしょうか?

 大きいのでも体長40セロ、胴回りは10セロもありませんが、数が多い。200匹はいるでしょう。


 こちらの上へ回るものは(わず)かですが、それでも10匹ほど上から(ハサミムシ)が降って来ます。上でレントガソールさまの剣が振り回され、抜けて来た3匹はパンセラが引き裂きました。

 シロルが電撃を放ちました。ボトボトっと20数匹が地面に落ちましたが、死んではいないようです。効果はあるようですが、出力を上げるとそう何回も使えません。アリスさまのバッテリを使えば面倒はなさそうですが、やりすぎるとミットさまに怒られます。


 ミットさまの弓の連射が上へ向けて始まります。シロルも細い針を3本束で連射しています。地面から3メル辺りから(ハサミムシ)が飛び降り始め、先程電撃を浴びた虫と一緒に向かって来ます。

 クロミケが虫の中へ飛び込みました。両手の短剣と踏み潰しで蹂躙(じゅうりん)しますが、虫が(まと)わりついて身体が見えなくなりました。

 シロルの電撃で虫のベールが落ち、またクロミケが見えるようになりましたが、どんどん上から降って来るのでキリがありません。

 アリスさまをお呼びするしかなさそうですね。階段は10メルほど出来ていますが、先は遠そうです。


「うっわ。虫だらけだね」


 アリスさまがポケットからバッテリを一本出し握り締めます。

 バチィィッ!


 クロミケを巻き込む電撃で洞窟が青白く照らされました。地面と壁の5メルほどの範囲の(ハサミムシ)が煙を上げ落ちました。その上15メル辺りの虫も気絶して一緒に落ちて来ます。


「これは始末が悪いねー。生きてるのが混ざっちゃったよー」

「むー。

 とりあえず分解のマシンを撒いとくよ。減らさないとどうしようもないし」

「上の方にまだ虫が居るよー。あいつらも来るかなー?」

「ここを網で仕切ってみるかな?クロミケはそっちで遊んでてね」


 そう言ってアリスさまが、曲がり角から3メルの位置に高さ5メルの網を建て、仕切ってしまいました。


「忙しくなったらまた呼んで」


 出口へ向けた階段作りへ戻るようです。確かにここを横断して戻るのは大変そうですね。


 クロミケは表面に見える(ハサミムシ)を短剣で手当たり次第に切り飛ばしています。網のこちらにも数は少ないですが虫の雨は降り続け、レントガソールさまとパンセラが排除しています。

 5メニほどでまた虫のカーテンが落ち始めましたが、数は目に見えて減っています。

 積もった虫の山から這い出して網に取り付く虫をミットさまが双剣で突き殺します。

 シロルも細い針で網に取り付く虫を縫い飛ばしていると、クロミケの掃討(そうとう)が一段落したようで、網の両端の虫を背後から突き始めました。


 やっと動く(ハサミムシ)がいなくなりました。レントガソールさまが網を切り裂いて通路へ出ます。分解マシンが(かさ)を減らし続けていますが、まだ50セロもの厚みがある山の上へこちらの残骸を放り上げて行きます。

 パンセラが大事そうに振り回す(ハサミムシ)の死骸も取り上げてしまいました。


 ミットさまが階段を駆け上がります。


「アリスー、終わったよー。すっごい数だったねー」

「350くらいだって。タイセキワリー?」

「ネズミとハサミムシー、どっちが餌だったのかなー?」

「ネズミが餌に1票」


「シロルー、ネズミ肉ー、焼いてみよーかー?」

「ここでですか?そうですね、燃料はどうします?干し肉に加工済みの分を(かじ)られた方が良いのではございませんか?」

「えー、しゃーないかー。お腹すいちゃったよー」


「俺ももらおう。美味いのか?」

「どーだろー。お初だからねー」

「塩味は付けてあるよ。味の保証はできないかな?」


 狭い階段に腰掛けて3人で干し肉に()み付きます。前にちょこんと座ったパンセラが肉をねだりました。


「むう。固い肉だな」

「うん。薄く切ってみようか」


 アリスさまが薄刃のナイフを出して削いでいきます。


「どーお?」


 それぞれ1枚ずつ口に入れ噛み締めました。


「あー、悪くはないねー。でもやっぱりこのお肉もシロルに期待だねー」

「どんどん薄切りにするから食べちゃおー」


 パンセラは薄切りがお気に召さなかったようです。


 1ハワーほどの食休みを取りますと(ハサミムシ)の片付けが終わっており、階段の方もあと一回分、残り時間は20メニといったところでしょうか。虫に使った分解マシンを回収して、分離した(キチン質)が85キル。魔石は無かったようです。ネズミを食べていたとしても口が小さいですから、魔石を飲み込めなかったのでしょう。

 クロをアリスさまの護衛に残し、ミットさまとレントガソールさまがパンセラを連れて殻を手押し車に運ぶついでに、ヘビの様子を見に行きます。


 階段の方は程なく出来上がり、クロが先頭で登って行きます。登り切ると50メル先が明るくなっています。地虫がそこここに這い回る通路を進んで行くと緑に(おお)われた出口です。

 入った洞窟の上に出たようですね。下から見えていた山の上がこんな穏やかそうな森になっているとは。


 アリスさまが森をボーって見回しているとミットさまとレントガソールさまが出て来ました。大ネズミを2匹ぶら下げています。


「わー、キレーなとこだねー」


 ミットさまがクルクル回りパンセラが嗅ぎまわる横をレントガソールさまがこちらへやって来て、ネズミを持ち上げました。


「あのヘビを片付けた方がいい。こいつらが齧っていたぞ」

「分かったよ」


 収穫は随分ございましたからよろしいのではないですか?



 馬車まで戻るとまだ夕飯にも早い時刻です。


 虫の殻(キチン質)だけでも400キル、他に加工肉も400キルですから今の馬車で運ぶには量が多すぎます。

 後ろ側を80セロ、殻の素材で冷蔵室(レゾコ)を拡張して肉を積む場所を作りました。残りの殻は床下へ貼り付けます。

 次いで緑のヘビを解体します。皮が固いのは分かっていますので、マシンで分離します。肉と骨は別にして回収、内臓も分けた上で回収します。中からは火の魔石が出て来ました。






  



 ミットの用語解説だよー


 単位ねー


 お金 シル


 長さ セロ=センチメートル メル=メートル ケラル=キロメートル

    

 重さ キル=キログラム トン=トン


 時間 メニ=分 ハワー=時間


 温度 セッシド=度


 角度 デグリ =度


 


 アリスの目 見たものの寸法が分かってせんを引いてもらえるー 温度が見えるー 毒が見えるー


 マノボード マノさんが提供する絵やカメラの絵が見られる板


 サーモ ものの温度が見られる表示モード


 チズ   上から見た周りの絵が見えるー。大きさも変えられるってー


 マノボタン 飾りボタンだけどお返事がないらしいー。マノさん材料が採れるってー


 デンキ   浴びると軽いのは人や動物の動きが止まる。強いと気絶したり、死んだりする 滅多(めった)に使わないよー


 灯り    4セロの猫耳付きの白い円盤 厚さは半セロ 真ん中を押すと3段階で光るよ 明るいので連続3日くらい光るらしい


 バッテリ  元気な力(デンキー)を溜めるものー


 トラク 幅2メル30セロ 高さ2メル50セロの箱型の乗り物ー 長さは用途により変わるよー

 速度は150ケラル/ハワーまで出せるー


 木質(セルロース) 木が原料ー。木には戻らないけどこっちの方が丈夫ー。いろんなものになるよー。


 甘味(グルコース) 木が原料ー。甘い味の調味料ー。


 箱紐(デンシブヒン) 乗り場の隠し部屋で採れるー。たいがい四角い箱の片面から紐が何本も生えていて箱がぐるぐる巻になってるー。いろんな原料が採れるよー。


 虫の殻(キチン質) これもいろんなものを作る原料になるよー。


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