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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第7章 パルザノン
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8 ホンソワール温泉・・・ミット

 これまで:ホンソワール男爵家に落ち着いたアリスとミットはすっかり歓待させることとなった。

 夕食後は湯浴み。湯船と言ってもいいくらい大きな桶にお湯を入れてもらってミシェルに洗ってもらう。これは落ち着かない!

 着替えまでしてもらってもねえ。

 アリスも同じだったみたい。フラクタルに直談判だね。剣作りたいんでしょ?あたいが言ってくるねー。


 と言うわけで只今交渉中ー。


「どうしましたか?ミットどの」

「フラクタルさん。あの湯浴みはないと思うー」

「ミシェルが何か失礼を致しましか?」

「いーや。お風呂作ろーよ、お風呂ー。

 アリスが作るよー。きっと温泉になるよー」


「はて?オフロ?オンセン?」

「むう。通じないかー。湯浴みのおっきな桶より広いのにお湯を溜めて首まで浸かるんだよー」

「ああ、子供の頃にやったことがあるな。そんなに大量の湯を下働きに運ばせるわけにはいかぬ。それは出来ぬ相談である」

「うん。それは分かる。

 むー。そうだ!お試しで兵舎の裏に6人くらいの作っていいかなー」

「むむっ、ミットどの。その上目遣いは反則である。私に断る選択肢が無いではないか」

「フラクタルさん、ありがとー。ヤクトールさんにも相談して進めるねー」


 あたいはドアを閉めながら手を振ってあげた。



「ミットー、どうだった?」

「誰があたいに逆らえるってゆーのよー?」

「わっ。すっごい自信」

「まーねー。兵長に場所とか聞いてくるねー」


 門のそばの兵舎までぶらぶらとやって来たあたいは衛兵に声を掛けた。


「こんばんはー。ヤクトールさんは居たかなー?」

「ミットどの、こんな時間にどうしました?兵長なら兵舎におりますが」

「用事があるの。案内してくれるー」



「おやミットどの。どうされました?」

「兵長は温泉って知ってるー?」

「温泉ですか?存じておりますが何か?」

「ここの裏に温泉作るよー。明日の朝ー」

「えっ?なんの冗談でございますか?」

「むう。やっぱり通じないねー。まいーや。

 フラクタルさんに許可をもらったからこの裏にお風呂を作るよ。場所と大きさを決めて。脱衣所と洗い場も」

「はっ」


 あたいのハンパな命令口調でも、フラクタルの名前が乗ると効果があるんだねー。兵長の希望はだいたい分かったよー。


 戻るとシャルロットがあたいのぬいぐるみを並べてシロルと上機嫌に遊んでいた。アリスは隅っこで兵士の11振りを完成させてるしー。


「アリスー、お風呂計画オッケーだよー」

「さっすがミット。ミットの仕切りが一番収まりがいいよ」

「あら、なんのお話ですの?」

「あのねシャルちゃん、湯浴みは好きかなー?」

「えっ。シャルちゃん……」


 あー、そこからかー。両手でほっぺ押さえて悶えてるねー。


「あっ、湯浴みでございますか?」


 おー、再起動したよー。シャル呼びで大丈夫そうだなー。


「私は生まれた時からずっとアンナに洗ってもらってますから、そう言うものだと」


「じゃあ、他のメイドさんに変わったらどーお?」

「それはちょっと嫌かも知れません」

「だよねー。あたいはずっと一人で(ぬぐ)ってたし、やってもアリスと洗いっこだからねー。ミシェルには悪いけど、あの湯浴みは嫌だねー」

「はあ」


「それでねー。お試しで温泉を掘っちゃおうと思うんだ。明日、朝ご飯の後で兵舎の裏にお風呂を作るよー」

「でも、ミット。余り湯はどうしようか?多分自噴(じふん)になるけど、止めると冷めちゃうから出しっぱなしだよ。デンキを、あ、こっちでは魔力か、借りて汚れを分解とか還流(かんりゅう)するとかも考えないと」

「えー、そんな面倒なのー?そー言えばレクサールで北に流してたねー。まあ朝になったらフラクタルに聞いてみよー」

「なんだかよく分からないお話ですのね」

「それよりさー。シャルちゃん、気に入ったのあったー?」


 顔を赤くして答えてくれないねー。シロルを見ると


「シャルロット様はこちらがよろしいようですよ」


 ほー、クマ系かー。


「丸い耳としっぽがかわいーよねー。どれかひとつあげよーかー?」


 バッとシャルロットが顔を上げる。目が迷ってるねー。3つ気になるみたい。


「意地悪してごめんねー。3つにしよーかー」


 そーっと手を伸ばし3つのぬいぐるみを抱えて、あたいの顔をチラチラ見てるよー。この子かっわいー。シャルのぬいぐるみも作りたいねー。あとでアリスに相談しよー。


「それ3つねー。いいよ。あたいはまた作ればいいのー。他に欲しいのがあったら言ってね。作っちゃうよー」

「ミットは作るのが趣味で、作り過ぎて飾るとこがないからね。もらってあげて。

 よかったねミット。3つもはけたよ」

「うん」

「そろそろ寝よっか?明日も忙しいよ」


   ・   ・   ・


「アリスさま、ミットさま。朝食でございます。お支度をお願いします」


 シロルの声に起こされたよー。ふぁーー、よく寝たー。

 顔を洗って身支度したら食堂へ集合ー。

 なんとなく皆さんご機嫌(きげん)な様子だねー。

 それでもフラクタルさんの開始合図を待って、割と静かに朝食は終わったよ。


 さあ、温泉だよー。あたい達が兵舎へ向かうと男爵御一家の皆さん、執事さんが付いて来るねー。


「ヤクトールさん、おはよー」

「おはようございます。おや。

 男爵様。おはよう御座います。こんなところまでご苦労様です」

「ああ、私達は見学である。気にせず進めよ」

「はっ。ではミットどの。場所は昨日の通りです」

「兵長さん、あたし達の部屋から剣を運ばせてくれる?3人は要るかな?皆さん揃ってるから、ちょっと説明したいの」

「はっ」


 兵長は兵舎に入って4人お使いに出してくれたねー。

 その間にアリスが水とお湯の探査を始める。これ結構かかるんだよねー。1ハワーかかったこともあったよねー。

 やることは昨夜聞いてるからあたいがやっとくねー。


「クロ。台をここに出してー」


 クロに用意を手伝ってもらう。

 あー、剣が来たねー。


「ご苦労様ー。この台の上に置いてー」


「アリスどの、ミットどの、剣11振ありがとうございます。ですがこの短い剣は注文に無かったと思うのですが?」


「あー、それねー。昨夜シロルがシャルちゃんに聞いてねー。懐剣(かいけん)ってのがあるんだってー?シャルちゃんとジョスの分だよー」


「「私の分ですか?」」


 おー、さっすが母娘ー。ハモったねー。


「アリスの趣味だから、気にしなくていいよー。アリスは奇跡担当ー、あたいは仕切り担当だからー。

 フラクタルー。剣を兵士に授けてもらっていーかなー?」

「予定より早いが良かろう。剣を兵舎へ運べ。そちらで下げ渡す」


 フラクタルと兵長達は兵舎へ入って行った。


「手こずってるねー。アリスー。どーお?」

「水はあったよー。お湯は温度が足りないね。もう少し探すよ」


「あー!フラクタルー。お湯の捨てるとこってあるー?温泉ってずっと少しずつ出してないと冷めちゃうんだよー」

「下水道がある。そこで良かろう。この兵舎にも排水があるはずだ」

「はっ。こちらのマスが下水に繋がっております」

「さっすが貴族屋敷かなー?」

「そうではない。パルザノンには古くから下水道が有って、掃除も定期的に専門のものたちが行っておる。家を建てる者は必ず繋ぐ決まりになっておるのだ」


「ふーん。流末はどーなってるのー?」

「6ケラル北西の川へ流しておる」

「そーなんだー、浄化とかはしてないのー?」

「浄化であるか?特に何もしておらんはずだ」

「2万人の汚水だよー?大丈夫なのかなー。あ、邪魔(じゃま)してごめんねー」

「ああ、構わぬ」


 ほんと偉ぶらない貴族だねー。パルザノンの貴族ってみんな良い人なのかなー?



 あたいが兵舎から出て裏へ回ると温泉場がにょきにょき建ち上がっていた。幅4メル、奥行き10メルといったところだねー。

 中を覗くと脱衣所に洗い場が4つ、湯船は4メルの3メル。6人がゆったりかなー?

 硫黄泉と温度の低い炭酸泉が出たそうだ。


「いいねー。奥の壁がさみしーかなー?絵を描こうよー。シャルちゃん、何がいーかなー?」

「私が決めていいのですか?」

「大丈夫ー。シャルちゃんが決めたって言えば兵士さん達は逆らえないー」


「あははー。いーよー。みんなが気に入らなかったら書き直すから。やってみようよ」

「じゃあ、昨日のフォトー!赤いお花と道路、緑の絨毯(じゅうたん)に薄い青と白の山。あれがいい!」

「おー、トルネールイのおっ花畑ー。

 あそこはフォトーじゃわかんないけどー、グルーッと山に囲まれてるんだよー。だったら浴室の壁の上半分全部山にしちゃおー。床と奥の壁に赤い花と緑の絨毯って感じでどーかなー?」


「男の人は嫌がるかもね。まあやって見よう」

「そー言えばライトがパルザノンの街を山から一望したって言ってたねー。それもおさえとこーね」

「あら、そんな場所があるんですの?セバークは知っていて?」

「いいえ。聞いたことがありません」


 フラクタルと兵士達が戻ってきてキョロキョロと見回している。


「ちょうどいいね。お風呂の説明は要るかな?脱衣所で衣服を脱ぐのはいいよね。

 湯船に入る前にここで体を洗う。頭も洗う。それから湯船に入ってあったまる。長湯するとのぼせて意識がなくなることがあるから、ぼーっとして来る前に湯船を出る。お酒を飲んで入るのも結構危ないよー。

 あと、お湯が安定するまでは段々熱くなって行くから、入る前に温度を確かめること。温度の調整はここ。赤いハンドルでお湯、青で水の量を変えられる」

「はっ、了解であります」


「この絵はいったい……」

「こんな風景があるのでありますか?」

「トルネールイという村の風景だよー。岩山に囲まれたまあるい緑の平原。このパルザノンくらいの広さだよー。赤いのは3セロくらいの小さなお花。2月くらいの間咲いてる。今はまだ咲いてるはずー。シャルちゃんが決めたんだけど気に入らなければ書き直すよー。どうする?」


「とんでもありません。これほどの景色、なかなか見られるものではありません。ありがとうございます」


 あー、ヤクトールが言い切っちゃったー。ま、いっかー。

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