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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第7章 パルザノン
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1 休暇・・・アリス

 まとまった休みを貰ったアリスとミットだったが、僅か2日で飽きてしまい、シロル、クロミケを伴って内陸へ出来上がった道路で遊びに行くことにした。遊んだことのあまりない二人なので、あちこち寄って行く中で息抜きだか、仕事だかわからないことになって行く。‬

      登場人物


 アリス 主人公 16歳 薄い茶の髪、白い肌、青い目、身長158セロの女の子。


 マノさん ナノマシンコントロールユニット3型


 ミット 15歳 孤児 濃茶色の髪、やや褐色の肌、黒い目、木登りが得意、身長162セロの女の子。


 ガルツ 36歳 工房出身 元猟師 その後兵士を3年ほどやっていた。戦場で壊滅した部隊から逃れて来た。日焼けした肌、赤黒い髪、青い目、身長185セロの大男。青ずくめの防具、楯と長剣が基本のスタイル。現在ガルツ商会の会頭を務める。


 シロル アリスの従僕 白猫ベースのネコミミメイド ロボト


 クロミケ アリスの従僕 クロとミケの2体 身長3メルのネコ耳ヤロー ロボト


 サントス ハイエデンの金物屋の店主。商取引の仲介役。


 イヴォンヌ ハイエデンの商会長ローセルの孫娘 美人 170セロの長身。


 エレーナ  ガルツ商会本部の調理長 157セロ ぽっちゃり系 短髪にしてる


 フラクタル パルザノンのホンソワール男爵家当主


 ジョセフィーヌ パルザノンのホンソワール男爵家内義


 テレクソン パルザノンのホンソワール男爵家長男 19歳


 シャルロット パルザノンのホンソワール男爵家長女 12歳


 セバーク パルザノンのホンソワール男爵家執事


 ヤクトール パルザノンのホンソワール男爵家兵長


 *********************************************



     第7章 パルザノン


     1 休暇・・・アリス


 ハイエデンに戻り5日間の休暇をもらった。

 1日目は地下温泉に篭って、竹籠(たけかご)内職(ないしょく)の商品をワイワイ言いながら増やしたりして楽しんだ。


 2日目は探検仕様の作業トラクでミットとシロル、クロミケを乗せ海沿いを北から西へ走ってみた。ビクソンさんの交易路を整備したのでこの道が一番遠くに行けるのだ。このトラクはマノさんやシロルが制御できるので運転席はあるけど運転する必要がない。シロルの給仕でお茶と景色を楽しみながら、他のクルマがいない直線路になると最高速で走って行く。

 おおよそ2ハワーごとに休憩で停車するが、車内はトン、トン、と振動があるだけ、軽く揺れる程度なのでミットはぬいぐるみを縫っているし、あたしは石鹸(せっけん)の香りを改良していたりで楽しんでいる。風景に夢中なのはシロルだ。ねだられて運転席の上にある出口に半球形の透明板を作ったら、用のない時はずっと(かぶ)り付きだ。


「アリスさま、ミットさま。すごいです。山と海の対比と岩のお色が素晴らしいですよ。ご覧になってください」


 あたしがシロルが見ている絵をマノボードに出すと、ミットがそれを見て前席へ移動した。

 シロルがミットを見たりあちこちへ視線を振るのでじっくり景色が見られない。あたしも前で見ようか。

 トラクが速度を落として観光モードに入っているのでゆっくり見られるよ。

 行って見ると大きな鮮やかな赤と黒の横縞模様の岩が河口に突き立っていた。左の切り立った山の斜面に一部重なって背後に見える明るく煌めく海の青。きれいだ。


「だいぶ前に山賊退治にここから左に行ったねー。カイラス山だっけ、あの時はなんだとも思わなかったけど今日はすっごいねー」

「うん、あたしもここ夕方に走ったよ。夕日でキレイだったけど、昼間でこの色はなかなか見られないと思うよ」

「あたくし、この景色はサーバに保存しますわ」


 サーバというのはレクサールの隠し部屋の隠し棚にあった灰色の小さな四角い箱でキロク?できるんだそうだ。マノボタンにもキロクはできるけど少ないらしい。サーバには6万5千倍のキロクが出来るというので、あたしと一緒にいるマノさんとシロルが使っている。


「もう少し行くとオクトールへ向かう分岐があるよ。あっちの景色もなかなかだから帰りはそっちを通ろうね」


 そのあともシロルはきゃあきゃあ言って景色を見ていた。その度にシロルの目に映る絵を確認して

「あー、海だね」と言うのが午後も続いていた。


 そろそろハイエデンから800ケラルを過ぎた辺りで海岸線が北へ逸れて行く。間の山地を大きく迂回しているので、直線距離なら460ケラル程だけど方角ではレクサールが近いはずなんだ。


「ねえ、ミット。あたし前から思ってたんだけど、(チューブ)の乗り場ってどのくらい離れてるんだろうね。方角で言うと多分ここがレクサールに一番近いと思うんだ。海沿いに北に行けば着くと思うんだよね」

「なーに、アリスー。それ、あたいたちで行こーってんじゃないでしょーね?そんなの道路班を一班回してもらおーよ。筒の調査の一つだもの、ダメってことにはならないよ」

「ううっ、ミットにはすぐバレるねー。

 分かったよ。ガルツさんに言って海沿いに北を目指してもらうよ」


「ガルツー、通じるの3ハワー後だね、夕飯の後かー。ちょうどいいかー。もう少し進んだら西の人たちの故郷だね。明日は少し見て行こーよ」

「うん、サーラムさんやニコラスさんから土産話を拾ってこようね」


 聞いていた通り廃墟(はいきょ)になったウエスティアの片隅にはまだ70人程が暮らしていた。この近く100ケラル以内に人が住む集落は他にはない。道が通った最近までは、たまにビクソンの交易隊が通るだけで孤立して自給自足だった。


「ガルツー、ウエスティアの手前で海が北へ行っちゃうでしょー?そこってレクサールが近いはずなんだよ。そーは言っても200ケラル以上あるから見えないんだけどさー。

 でねー、北に向けて道路を作ろーよ。うまく行けばレクサールに行けるし、なんかいい交易材料があるかもよー」

『むう。そうだな、いずれはやらなきゃならんことだしな。分かったよ』


「あとね、ガルツさん。ウエスティアに支店を出さない?こっちに今70人が自給自足でガレキの中で暮らしてる。こっちに戻りたい人がやっていけるように拠点になる建物だけでも作ってあげたいの」

『支店か。いいな。サーラムに引き継ぎをさせるよ。あいつを支店長で送り込む。10日後くらいに出発かな、嫌とは言わんだろう。せいぜい立派なやつを頼むぞ。倉庫も広いのがあるといいな。そこで働いた分は休暇を延長すると良い。往復分も仕事だからちゃんと申請しろよ?』


「ワンマン経営者は決断が早くていーねー。アリスが稼ぎ頭だから逆らえないのもありそー」

『ウグッ!とにかく要るものがあったらなんでも言ってこい。出来るものはすぐに送るから』

「分かったー、70人10日分の食料を頼むよー。切るよー」


   ・   ・   ・


 朝、明るくなるとすぐに散歩に出た。20メニ程中心街だったらしい通りを歩いても街は続いていた。結構大きな街だったんだね。

 そろそろシロルに怒られるので、来た道を考えながら戻った。西の人は100人ちょっとだけどみんなが帰りたいわけじゃない。80人が来るとして、家も農地もまるで足りない。やっぱりガルツ商会の支店かな?まずは片付け、並行して開墾(かいこん)。その間は買付けた食料で回すしかないね。今いる人も雇用しちゃおうか?


「アリスさま、おかえりななさい」

「ただいまー。ミット、起きた?」

「ええ、髪を()かしてらっしゃいます」


 今起きたばっかりか。あたしも手を洗おう。


「ミット、おはよう」

「アリスー、どこ行ってたのー」

「ウェスティアを散歩して来たよ。おっきな街だったんだね。廃墟になってるから片付けが大変だよ」

「ふーん、今いるのって70人だっけ?少ないねー」

「そうだね。まずはご飯にしよう」


 瓦礫に埋もれるように建つバラック。ウエスティア役場という看板がなければ人が住んでいるのも怪しいような建物だ。もっともこのあたりではこれ以上立派な建物などない。


「おはようございます。ガルツ商会のアリスです」

「同じくミットだよー」

「ここの代表はどなたですか?」


 くたびれた上着に汚れが固まったようなゴワゴワの赤毛を、無造作に搔き上げ日焼けした精悍な顔付きの男が応対した。

「あー、一応俺かな、ウィルマだ。よろしくな。

 で、どんな用だ?」

「この街の再開発のためガルツ商会が支店を出すことになりましたのでそのご挨拶(あいさつ)です。10日ほど後に支店長のサーラムが参りますので、それまでに店を建てる場所を決めたいんです。どの辺りがいいでしょうか?」


「ガルツ商会ねえ。何を売るとこかな?」

「売るものはいろいろありますけど買付けもやってます。農産物なんかは喜ばれますよ」

「ふむ。場所の方は見ての通りの廃墟だよ。どこでも好きなところに陣取ったら良いよ。これが今の街の絵だ。ここが俺たちのいるところだよ。どこにする?」


「これが今の街道ですか?では街道の南側10メルと交差するこちらも道の両側を100メル幅でいいでしょうか?」

「広く取ったのはまだわかるが、この10メル幅はどうするつもりなんだ?」

「街の顔になる主要道路ですから豪華にします。十字街ですね」

「……?」


「あと、従業員を雇いたいのですけど斡旋をお願いしても良いでしょうか?」

「どんな条件だ?」

「そうですね。住み込み3食付き。3ヶ月間給料は試用期間ということで月に1万シル。その後採用となったらご相談の上再契約。ちょっと安いですけど、どうでしょうか?最初の3日くらいは準備もありますから御不自由をかけそうですけど」


「3食と給料だけでご不自由ってのが3ヶ月でも文句を言う奴はなさそうだが、何人だ?」

「多い方がありがたいですね。100人居ても大丈夫です」

「いや、ここにはジジババ子供、俺を入れても73人しか居ねーよ。どんな仕事をするんだ?」


大雑把(おおざっぱ)に言うと最初は片付けですね。道路と店を立てる場所、寮を建てる場所、馬車を停める場所。それが1段落したら得意なお仕事に割り振ります。道具も貸与しますから、お年寄りでも子供さんでも、頑張ってくれれば結構ですよ」

「分かった。今日中にみんなの意見をまとめるよ」


「ではこの交差点の角に仮店舗を建てますが、よろしいでしょうか?」

「ああ、問題ない。午後からでも手伝いに行こうか?」


 そう言いながらあたしの後ろに立つミットをチラッと見てる。


「午後からですか?お構いできないと思いますが、いらしてください。では」

「じゃあねー」


「アリスー、すっごいよそ行きー」

「えへへー。頑張ったよー」

「ウィルマの方が先に地金が出てたねー」


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