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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第6章 レクサール
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3 隠し部屋・・・ガルツ

 これまで:通路が途中ですっぱりと断ち斬られていた乗り場の溝の向こうには大量の瓦礫があった。アリスはその資材回収に2体のロボトを投入した。3メル丈のクロとミケ。

 朝出発して乗り場の通路に着くと

「マノボタンがもうないんだよ。補充(ほじゅう)したいよ」


 アリスが言うので通路にトラクを止めて隠しドアを探す。すぐに見つけて20メニほどで裏口を開けた。もう慣れたもので灯りを放り込み中へ滑り込むとミットが辺りを調べ、アリスが中から解錠する。クロが扉を押し開けた。


 入って見ると随分と広い。ミットが騒ぐわけだ。天井が2メルちょっとしかないのでクロとミケは通路で待機だ。手押し車を出し中を見て歩く。

 最初の部屋は棚と机が3つずつあった。机の前には黒い板がそれぞれかかっていて左の壁にも4枚かかっていた。俺は壁の板から外しクロとミケに渡す。アリスが机とロッカを解錠したので、机の引き出しを抜いてどんどん通路へ出す。


 アリスがロッカで上等の服を二揃い見つけた。男物らしいが俺が着るにはだいぶ小さい。まあ、あんなかっちりした服は似合わんだろうが。


「これガイコツさん…テレーズさんが着てたのと同じ服だよ。

 ……このボタンはさんだね。マノさんが3つに増えたー」


 黒いマントが1枚、濃い緑の飾り(えり)が1枚。大事そうに畳んでいる。


「それは?」

「お日様ハツデンの小さいのだよ。働きはあたしのちょうちょや帽子と同じ」

「アリスー、隣もすごいよー。見た事ないものがいっぱいー」


 部屋は4つあった。3つは個室らしくそれぞれにベッドがあり、テーブルと椅子、壁には黒い板と小さなハコヒモ。これも回収だ。

 もう一つは白い台所だった。6人掛けのテーブルと椅子。大きな黒いデンネツキーと蓋に透明板の付いた鉄製らしい白い箱が4つ。白い引き出しには見たことのない調理器具。白い棚には一風変わった鍋類。


「これはそっくりエレーナのお土産だな」

「「それがいいいね」」


 アリスがロッカを分解して大きな箱に変形させたので引き出しを下に置き、白い箱を詰め、鍋類を重ねて入れた。入り切らずにもう一つ箱を作り表へ出した。


 入り口の部屋へ戻るとアリスが右奥をじっと見ている。何かあるのか?

 天井と左右の壁を辿るように見渡して、まっすぐその隅に近づいて行った。1メル40セロほどの高さで壁に手を突き引くと壁紙を破って50セロくらいの扉が現れた。

 隠し部屋の中にも隠し場所があるのか?


「こんなのは前のとこにはなかったねー」


 箱が二つ重なったものを机の上まで持ってきて中を見始めた。

 一体どうなっていたのかと気になって隠し扉を見に行く。取っ手も何もないのにどうやって開けたんだ?動かそうとしたが、全く動かない。

 よく見ると蝶番の近くの棒で固定されていた。コイツが扉を押し出したらしい。アリスの手はスイッチでも押したのか?表面の壁紙を()がして見るがそれらしいものは無かった。

 ふーむ?


「ガルツー。そろそろ閉めるってー」

「分かった。出るよ」


 出した荷物は荷台の後ろに並べて置いてあった。これどうするんだ?

 閉めて出て来たアリスも並んだ荷物を見て目を丸くしていた。いくつか箱を取り分けミットに持たせるとミケの肩に乗って荷台の嵩上(かさあ)げを始めた。今の屋根を薄くしてもう一枚屋根を作り50セロ持ち上げたので、トラクと同じ高さになった。

 片面は閉じていないので、そこからクロとミケが荷物を押し込んだ。入らない大きさのものは箱を作り直して入れた。まだ半分くらい入れられるが、そのまま蓋をしてここに置いて行くことにした。


 トラクは荷台を曳いて頭から通路へ入って来たので向きを変える必要があった。あの斜路をずっとバックするのは落ち着かないのだ。

 それで出口左側に転回場所を鳥に(ねら)われながら作ることになったが、今度はクロとミケが居る。襲ってくる鳥に10キルほどもある石を投げて、3羽たたき落とすともう下には降りて来なくなった。

 動きはのっそりしているのだが、飛んでいく石はアリス以上に早いし正確だ。これはすごい戦闘力だな。俺はこの中では最弱か、参ったよ。


 トラクの向きを変えあの水溜りまで走って、夕食後の会議だ。


「今回の隠し部屋はすごかったねー。エレーナのお土産は驚く顔が目に浮かぶよー」

「あたしも箱紐(デンシブヒン)がいっぱいあったから何が作れるか楽しみだよ」

「あの隠し扉の箱は何が入ってたんだ?」

「マノボードとこの街のチズに、サーバ?だって。後はガラクタかな、使ってた人の思い出の品、みたいな?」


 マノボードは丸められないみたいだな。サーバは何をするものか分からんが四角い灰色の小さな箱だ。見ているとアリスがチズの紙を広げ始めた。


「昨日まで調べてたのがこの施設だね。あの出口の向かい側がこの辺。すごいね、8本の道がここに集まってくるんだ。今いるのは多分この辺。溝の中に落ちた街は影も形もガレキさえもないんだよ?どうなっちゃったんだろうね。

 溝はこう曲がって行ってるからこの先にも3ケラルのガレキがあるよ。エーセイガゾにも映ってるし。

 ここから斜路だと高さが足りないから600メル戻って登って行こうと思う」


「でかい街だな。ハイエデンの50倍?もっとか。ここの材料分解だけでもすごい産業になるな」

「使うのはガルツ商会だけだよー。他に買う人がいないー。それって産業って言うのー?」

「まあ、加工して製品にしないと売れないからな。工場をここに建てるか?」

「うん、それがいいね。何が作れて何が売れそうかってのが問題だよ」


「それでガレキを抜けるのに5日はかかるのか。あとは大きな川が一本とその支流があるから橋に2日かな。また荷台を作って交易品を用意するか?

 カップと櫛、灯りは評判が良かったろ。ここでも売れるだろ。あとはこの河原まで行けば木から甘味料(グルコース)が取れる」

「そうだねー、さっすがにガレキの木質(セルロース)からできたグルコは食べたくないからねー」


「このトラクの材料でどれも道具が作れるよ。マノボタンも20個あるから。棚とか引き出しのは見てないからまだあるかもね。

 そうだ、小さいロボトも1体作ろうか?ここに乗れるくらいの」

「いいかもな。手伝いがいると何かと助かるからな。クロミケと一緒でもアリスに(あお)られるのは(こた)えたよ」

「えー、ひっどーい。ちゃんと話をして1日10回を8回に減らしたじゃない」


「ガルツー、アリスが煽るってのは間違いだよー。煽るのはクロミケだよー。正直、あたいも疲れたよー。あいつら全然休まないから、休むって言い出しにくくってさー。昼休みもフツーに動いてたしー」


「あっ!そっかー。ごめんねー、気がつかなかったよー。そうだよねー、一緒に働いてるんだもの、ロボトだからって見えたら気になっちゃうよね。あれはロボトだからって割り切っちゃう、ってのもなんか悲しいよね。

 分かったよ。クロミケもちゃんと休ませるよ」


「まあ俺たちが付いていけなかったってのは事実だからな、人手が?ああ猫の手か、増えるのは助かるよ」

「あらー?ガルツさんー?増えるのがネコの手とおっしゃるのはー、どう言うことーですのー?」


「なーに、何猫にするかで悩むくらいだろ。いつものことだ」

「あはは。何猫ってのはなさそうだよ、ガルツさん」

「そうですわよー、失礼なー。

 お仕事がーメイドですからー、品の良い白ネコがいいーですわー」


「だよねー。トラは落ち着きない感じだし、白黒の2択だけどクロは使ったからシロだよねー。名前にちょっと困るかなー?」

「アリスー、そんなに言い当てたら、あたいの立場がないー」

「あははー。ミット、ごめんってー。ほらどんな服にするー?」


「うーん、黒のヒラヒラがいーけど、外の仕事もするんだよねー?パパッとお着替えができたりしないー?あとはなるべくフツーに話したい」

「そうだね、それいいねー。なんとかなるかなー?

 ……マノボタンとマノさんを一個使うの?ふーん。いいかもね。

 背丈は1メル半の女の子風。あ、いっぱいあるね。ミットー、どれにしよー?」


 マノボードにズラッとリストが並ぶ。


「なんでこんなにいっぱい出てくるのよー?」

「……なんかね。需要があるんだって、ネコミミメイド」

「ふーん?

 あ、この子可愛いー。これにしよーよー」

「いいけどあたしより胸がおっきいね。ミットには負けてるか。えーっと、材料はー?

 ……あ、だいたいあるけど……この辺の土から採れるの?

 ミットー、外出るから見張りお願いー」

「あいよー」


「材料はこれとこれと……

 あとは土をこのくらい?

 揃った?

 ミットー。戻るよー」

「あいあーい」

「さてと、設計図はこれか。えーっとこうなってこーなって……」

「ガルツー、お風呂先に入ってー」


 おっと、面白そうだからまだ見たかったんだが。


「ああ、じゃ、先に入るぞ」


 いやー、今日も忙しかったなー。

 トラクの風呂は少し狭いけど、もうあいつらとは入れないし十分だ。

 ふいー。一通り洗ったしあとは寝るだけだ。

 お、着替えか。ミット姐さん、気が利くね。


「着替え、ミットかー?ありがとうな」

「いーえー」


 作成中の白猫娘(ネコミミメイド)にシーツ被せてやんの。まあいいか。ベッドに上がるとしよう。


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