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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第5章 ケルヤーク
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4 お魚・・・ミット

 これまで:ガルツ商会はパックの故郷ケルヤークの開発が急務だと判断した。ミットが訪れたアルモスブラフでは疫病に見舞われていて、ヤングが罹ってしまった。アリスがドロンで飛んで来たので事なきを得たのだが。

「パックー、そっちはどーお?」

「うん。歩いてきた経路は分かったよ。スレート道路は112ケラルと橋がひとつかな?大きな沼は迂回しちゃってもそんなに距離は変わらないからね」

「わー。3月じゃ届かないのかー、遠ーいねー。アルモスブラフはどーお?」


「距離は37ケラル、割と近いね。川が二つあるのは橋で良いけど、あの階段をどうしようか?僕はトンネルがいいと思うけど出口がどこにしたら良いか分からないんだ。

 街の手前だと坂が急になって使いにくい。街の中心を外して横に出したいかな。右は畑だったからそこで良いかも。橋の高さをそのまま持っていけばいくらもあげなくてもあの上につくけど、あの河原の15ケラルはいくらなんでも遠いんだ。橋は材料が大量に要るからね」


「ふーん。出来上がりのカッコいーのは橋だねー。坂もキツくないし走りやすそうだよ。風が強いと大変かもだけど。

 あー、アリスが今の拠点や温泉建てたのを覚えてる?あれ、屋根を先に作ってー、壁を地面、てか地下で作って全部持ち上げたんだよねー。橋も持ち上げちゃおー。

 川底とか河原なんてほっとけば自然と埋まっちゃうよ。急ぐとこは道を別に作って運んで埋めればいーと思うー」


「ああ、今までそんな大きな川を渡ったことがなかったからね。良いかもしれない。ガイドをどうするかだな。50メルくらい、100メルならもっと良いけど、足を飛ばさないと川を堰き止めちゃったら洪水になるかもだし」

「水の中にマシンって撒けるのかなー?」


「それは聞いたことないね。崖で道を作る時は上の材料を使って作るから、マシンは自分で飛んでいくって聞いたよ。撒くんじゃ風があるから届かないんだって」

「あー、あたいいっぺんだけ見た。上の岩がねー、ドロドローって流れて来て道がニュゥゥーってできちゃうの。あっ、そー言えば下から柱が支えてたところもあったよー」

「いいなー。僕も見たいから今度頼んでみよう」


「さて、戻るのに時間がかかったからねー。この後どーしよーかー?ガルツに聞いてみるー?」

「そうだね。でも、温泉に戻っても受付の仕事は代わりが入ってるし、何するんだろう?

 今の僕らの急ぎはここの食料調達と特産品の採取、ハイエデンは道路を延ばして交易のトラクを作ることくらいか。トラクを作る仕事をアリスがいなくても出来る様にしないとガルツさんに怒られるんだけど、肝心のアリスがアルモスブラフに行ったきりだからね」


「鉄とアルミーの土くらいだね。あれもここで分離できたら運ぶ量がすっごく減らせるんだけどねー。

 ワタはタネ撒いたばっかだし、コーヒーもゴムーも株分けでまだちょびっとしか採取出来ないし。

 川の魚って売れるかなー?」

「売るならセイヒョーキが欲しいね。お日様ハツデンも要るな」

「ミレルさんのとこへ行ってお茶にしようよー。さっき見たらガルツのツーシンは1ハワーくらい先だったからー」



「こんにちはー、チーノちゃん、いたー?」

「あら、ミット嬢さん、パックさんもいらっしゃい。チーノは近所の子と遊びに行ったわよ。東の町へ行ってきたんですって?」


「そう。アルモスブラフってゆー町。疫病で1200人が80人になっちゃったのー。アリスが今片付けに行ってるよー。ハイエデンのガルツと話せるまで時間があるから、お茶を飲みに来たのー」

「そうなの。ミントのお茶でいい?パイもつけるわ」

「わー、ありがとー」


「チーニー、元気になってよかったよ。この街も落ち着いたし」

「そうね。トレイルやアサーリ、マルリックなんかがすっかり大人しくなった。配給も警備隊に20人組ができて、人数分をちゃんと見てくれるようになったし。

 でも開拓団が出ていないのに、他所からこんなに食料を買って大丈夫なのかしら?今まで誰も見向きもしなかった赤土を運んでいるけど、あんなもので支払いになるの?パックさんの仲間だって言うけど、そんなに甘えて大丈夫なの?

 最初に来た男たちはみんな怖かったわ。たった5人に町の警備隊がみんな負けちゃったって言うじゃない?」


「あはは。そうだよね、あの赤土からは重さの半分の鉄が取れるんだよ。あの土が馬車5台で穀物が1台買えるんだ。白土が売れるようになればここの畑がダメでも収支はトントンになるよ。今はまだまだ借金だけど冬にはみんな返せると思うよ。それにはみんなに頑張ってもらわないといけないんだけどね。この間からやっているスレートの加工もいい値段になるんだよ。

 あ、道路を作りにトーレスたちが来てたね。あの人たちの費用は別だった。あれを入れたら来年1年かかっちゃうかな?でも道ができるとその効果はものすごいよ。(チューブ)の交易があっての話だけど、この街はどんどん良くなるよ」

「来年1年……あんな(ひど)い状況がたった2年で良くなるって言うの?……すごいのね」


「たぶん秋には他所から買わなくてもみんな食べられるだけの作物が穫れると思う。でもここにない食べ物が欲しいから買い付けは続けるよ。

 そうやって繋がりを作っておけば、干魃(かんばつ)なんかで困った時に他所(よそ)の食料を分けてもらえるんだ。そう言う相手がいくつもあれば、ちょっとずつ分けてもらってもすごい量になるよ。うちだって他所が困ってたら助けてあげられるしね」


「パックさんがそんなすごいこと考えたの?」

「元はガルツさんかな?」

「そうだねー。声でかいしー」

「態度と模擬戦はミットが一番だよね」

「あははー。そーだよー。このミットさまのご機嫌(きげん)をとんなさいよー」

「うふふ、え、模擬戦?」


「そうなんだよ、この間ってもう5ヵ月も経つか?仲間8人で模擬戦やったんだけど、ミットが優勝。ガルツさんを引っ張り出して負かしちゃった」

「まさか警備兵の猛者(もさ)3人抜きって?」

「猛者?3人ってゆーなら確かパイク、ケール……なんたっけ?」

「サナックよ」

「あー?そうだっけ?あたいが相手したけど、そんな強くなかったよ?」


「あー、それでか。なんかおかしいなと思ってたのよね。あいつら絶対誰が相手だったか言わないんだもの。まさかミット嬢さんが相手だったなんて、見てたんでもなけりゃ誰も信じないし笑われちゃうもんね」


「うーん?警備隊50人とマークス、見てたのはそれだけだね」

「50対6だったの?」

「えーっと、あたいとガルツとケビン。それと二人が両翼の警戒(けいかい)に就いててー、仕事はなかったねー、二人は食料の分配をやってたはずだね」


「じゃあ、50対3?」

「そうだーねー。命令する奴を二人ガルツが矢で黙らせたらそれでおしまい。これで納得はできないだろーから、あたいが相手してやったんだー」

「……それは……あたしでも大人しくなると思う……」


「あははー、まー、いーじゃない。おっと。

 ガルツとお話の時間だー、ごめんね?

 ガルツー、聞こえるー?パックー」

『お、ミット。どうした?』

「やーっと今日ケルヤークに戻ったよー。パックも一緒ー。ヤングも元気だよー。アリスはまだアルモスブラフにいるー。

 トーレスは赤土山が終わってー、白土街道にかかったよー。あと7日で終わらせたら3連休やるって言ったら張り切ってたよー。残業2ハワーの制限付きだけどー」


『お、おう。それはご苦労さん。7日って、ああ、残業制限か、分かった。思ったようにやってくれ。アリスは自分が納得しないと言うことを聞かんからな、できるだけ頻繁(ひんぱん)に話を聞いてやってくれ。俺にできることならなんとかするから知らせろよ。パックはどうした?』

「ここで二人の話に圧倒されてますよ。僕はそっちに戻ったほうがいいですか?」


『お前が来るとこっちの連中が甘えるからな。しばらくそっちにいてくれ。むう。結局ケルヤークの管理も俺たちがやるんだよなー。

 よし。お前、ケルヤークの首長をやれ。欲しいならこっちの人間を何人かつけるが、できればケルヤークの人間を上手く使って回せ。ミットが宣言を掛ければみんな付いてくると思うがどうだ?』

「何を言い出すんですか?ガルツさん。僕にそんな仕事……」

『お前ならできるんだよ。半年くらいの付き合いだがな。それくらいは見てるよ。まあ、いっぺんやってみろ。ダメならケツは()いてやる』


「おー、ガルツー。いーことゆー。レディの前で言っちゃいけない単語が混じってたけど許すー」

「分かりました。ほんとに助けてくださいよ?」

『ははは、心配すんな。

 あー、俺の方は順調だ。お前たちの消息が入ってこないのが唯一の悩みだな。鉄も入荷がスムーズになったしな。来月もう一班道路班を増やそうかと思ってる』


「あ、そうだ。アリスの案だけど、道路班の勤務日6、6、6と出て3連休とかどうだろうって。どんどん遠くなるからね、家に無理して帰るみたいだよー。みんなの意見聞かなきゃだけどー」

「ガルツさん、僕を首長にするんなら鉄とアルミーの分離マシン売ってもらっていいですか?貸し付けでもいいですができれば売りで。あとお日様ハツデンとセイヒョーキも。川魚が捕れるんです」


『ほう、川魚はいいな、食ってみたか?』

「ええ。でも日持ちしません」

『魚は寒風で干すのがいいって聞いたな。今の時期ではもう無理だな。燻製(くんせい)はいいかもしれんぞ。

 道具はアリスが戻らないと作れないんだ。セイヒョーキとお日様ハツデンは一台ずつ明日の帰り荷物に入れてやる。鉄とアルミーの方はサントスさんとローセルじいさんに聞いてみるよ。

 大口で売り買いするのは今のところ俺たちだけだが、今後どうなるかわからんからな』


「あたいはここでアリスを待ってるねー。ちゃんと連れて帰るから、寂しくても泣いちゃダメだよー」

『うぐっ!

 胸に突き刺さるセリフをありがとうよ。切るぞ』

「あーははは。はははー。ガルツーお嫁さん貰えばいーのにねー。やっぱりエレーナかなー?」


 今この町で機能している組織は警備隊だけだ。パックが警備隊に話を通すと言うので一緒に詰め所へ行った。


「こんにちはー。パックとミットだよー。20人組集めてほしーんだけどー」

「おっ、ミット嬢さん、パックさんもいらっしゃい。20人全員ですか?」

「そう。できるー?」

「はい、30メニいただきます。お待ちください。

 20人組非常招集!直ちに集合を知らせろ!外縁には早馬を出せ!

 二人外縁の見回りに出ておりますので、お茶でも飲んでお待ちください」


 ワタが申し訳程度に入ったソファでお茶を飲んでいると警備兵が二人、辺りを気にしながら入ってきた。


「パックさん」

「なんだい?どうかしたの?」


「俺たちは帰り道のあんたの警備についていたんだ。開拓団にも事故が起きる事は結構ある。働けないものを………あんたやあんたのお母さんだが、捨ててくるように命令を受けていたんだ。

 そんなことしたくないんだが、連れて帰れば俺たちは家族が牢に入れられる。昔斬首にされた奴もいたと聞いている。

 あの時は何人も警備兵が死んだ。上も気が立っていて、命令は苛烈(かれつ)だった。俺たちは……いや、言い訳にしかならないな。

 あんたとあんたの母さんを夜中に荒野の真ん中に捨てた。俺たちは住民を守るためにいるはずなんだよ。それがあんなことをさせられるなんてな。

 とにかくすまなかった。俺の体一つで気が済むならなんとでもしていい。家族にはこの話はしてあるから誰も恨んだりしない。

 それを言いたくてここにきた。本当にすまなかった」


「俺も同じだ。すまなかった」

「名前を聞いてもいいかな?」

「ケルターだ」「俺はヘイトンだ」


 パックはそのあと壁をじっと見ていた。


   ・   ・   ・


「お待たせしました。20人組集合しました」

「あー、忙しいところを済まない。僕はパックだ。ここの底辺集落出身だ。

 この街がガルツ商会の管理になっていることは知っていると思うけど、ハイエデンのガルツさんから指示があった。僕にこのケルヤークの首長をやれ、と言うものだ」


「「「なんですと?」」」「おおっ」「そんな

 っ」


「まあ、意見はそれぞれあると思う。けど、首長不在の状態が長く続くのがいいと思う者はいないと思う。暫定(ざんてい)か代理かは分からないがそう指示があった以上、僕はその指示に従う。

 でもお飾りの首長では意味がない。やれることをやっていかなければこの街は前には進めない。

 今この街が多額の借金をしていることは知っているか?その6割は食料の購入費だ。それを全てガルツ商会が肩代わりしているんだ。

 この中にお金の計算ができるものはいるか?知り合いに居ないか?

 交易で売れるものを売り必要なものを買って借金を返さなければ、この冬のように餓死(がし)者が出る事態になるんだ。借金を返しこの町を発展させるために日々の入金、出金をキッチリ捉える必要があるんだ。将来を計算して必要な準備や投資をしていかなければ何かあった時には身動きができない。

 前のトレイル、アサーリはこれを怠った。必要な食料さえも計算せず、住民を守らず切り捨てた。その一方で自分たちの食べる分を別に溜め込んでいた。

 前回の食料不足の原因の一つはよその土地で開拓をしたことだ。土地の世話をせず奪ってくるだけ。土は年々()せて収量が落ちる。他へ移動する。山から木を根こそぎに切る。山の木の栄養が畑の栄養のもとだと言うのに、その大元を根こそぎにしてしまった。

 大きいところだけでもこれだけあったんだ。そう言ったことを一つ一つ直していきたい。僕に協力してくれ」


 20人組は誰一人反駁(はんばく)しなかった。

 パックはよく見てるねー。思い当たるところがあるんだろーけど、大人のくせにだらしないなー。

 その日の夕方警備隊に手伝ってもらって住民を集めてもらった。


「ケルヤークのみんな。あたいはミットだ。

 知ってると思うけど、この町の首長はドジを踏んだ。住民の食料を計算できず不足させただけでなく、自分たちの食べる分を隠した。あたいたちが交易に来た時に積荷を奪おうとしたので、ボタン付きになってすっかり大人しくしてるのは見ての通りだよ。

 今この街はガルツ商会の管理下にある。すっごい借金ができたからだ。放っておいたらその借金は返せないってのは子供でもわかることだよ。

 今日ガルツから指示が来た。ガルツ商会はいつまでもこんな小さな町の面倒など見ていられない。この町の首長をパックに任せると言ったよ。お前たちはどうするんだい?パックはこの町出身で口減らしで殺されかけたけどね、それでも言いつけは守ると言ってる。街を発展させると言ってる。

 パックの話を聞いてやってくれ。

 あー、あんまりくどいのは嫌われるから短くな」


「今ミットから説明があった通りだよ」


 そこから主に交易の利点と道路を作る利点を手短に話しパックの話は終わった。最後に半信半疑な顔の群れを前にこう言い放った。


「この町にいるのは恩知らずじゃあないはずだ。ハイエデンの街に助けてもらったこの冬の恩をよその街へ返すんだ。交易を広げていけばそれができるんだ。協力してくれ!」


 警備兵が帰宅を促すなか5人ほどがあたいらの方へ遠慮(えんりょ)がちに寄って来た。

 元警備兵だと言うお爺さん、この冬子供を死なせたお母さん、助かったと言う夫婦、チーノの母親のミレル。

 特に何を言うわけでもなかったけど、涙を流しあたいたち二人の手を握って帰っていった。


 残ったミレルが言った。

「今日はご苦労様。いろいろ言ってたけど、あれは大変だよ。あたしに手伝わせてくれないかい。パックの両親には若い頃何かと世話をかけてさ。料理屋を始めたときもずいぶん世話になったんだよ。あたしは計算も少しはできるんだ」

「よろしくお願いします」


 ミレルはパックの手を握って涙を流していた。

 協力者を初日から一人獲得(かくとく)だよ!パックー、頑張んなー。


   ・   ・   ・


 翌日も朝から警備兵詰所へ押しかけ、魚捕りの得意な者を5人徴発(ちょうはつ)したよ。はっきり言ってこいつら多すぎだからー。80人だよー、ありえねーよー。いーとこ30人?

 今日はあたいが調練に参加してパックの協力者を増やしてやろーか?


「今日の帰り荷物で氷を作る機械が来るんだ。14ケラル先に大きな川があるよね。まあそこの川でも良いんだけど魚を捕って売りたいんだ。氷で冷やせば日持ちするんだけどハイエデンは海の街だからね。それだけじゃお客さんを集められないし、料理の仕方も違うからいろいろやってみたいんだ。燻製(くんせい)とか保存方法もやってみたい」


 あたいが予定通り55人を(しご)き倒していると、パックたちが川から上がってきて、背負いカゴにいっぱいの魚をミレルの店に運び込んだ。


「あとは午後からにするよー。いつまでも弱っちーのは務まんないよ。しっかりしなよー」


 ワックワクでミレルの店に飛び込むと、こりゃ料理どころじゃないね。魚を(さば)く練習の真っ最中だよー。お、この魚美味そう!


「ミレルー、これ塩焼きにしよー。絶対美味いよ」

「あら、どうやるんです?」


 え?塩焼きないの?まさかとは思うけど……


「塩はあるんだよね?」

「はい、ありますよ?」


 ふーん?8人か。


「この魚8匹出して。

 ワタを抜くよ。ざっと洗ったら両面にバッテンに切り込み入れて10メニくらい塩水に浸けて。あとは水気を()き取ってパラパラっと塩を振って焼くー。網とか有る?」

「塩って高いんですよ?そんなに使うんですか?」

「えー?パックー、塩、買ってないのかなー。アリスが山のよーに作ってたよねー?」

「いや塩は入ってきてるはずだよ。リストにあったもの」


「まった誰か抜き荷してるなー」

「ミレルさん、今使う分はあるんでしょ?言う通りにやってみましょう」

「ミット嬢さん。自分が午後から塩についてどうなっているか調べます」


 魚捕りの一人のケルターが言ってくれた。


「え?うん。頼んだー。

 そろそろ焼くよー」

「ケルヤークじゃ魚って言ったら煮るか焼くかくらいだよ。そういえばエレーナがいろんな料理してたよね」

「えー?こんな良い魚があるのにもったいないよー。そうだ!ミレルー、魚持ってエレーナのとこへ行ってきなー。料理の得意な子もう4人くらいいないかなー。一緒に10日くらい行かせるのはどーお?足は赤土便があるしー」


「うちのカミさん混ぜてもらって良いですか?」

 元警備隊長マルリックは乗り気だねー。

「良いけど奥さんが行くって言ったらだよー。無理強いすんじゃないよー。道路班に何人も出てるから増えても大丈夫と思うけどガルツには言っとくねー」


「今日セイヒョーキが来るから試運転して明日捕った魚と一緒に出発ってとこかな。荷馬車に付いて行けば店に着くから心配ないね。魚は毎日持たせるって事で手配してくれる?」

「魚を運ぶ箱を作ろうよー」

「このカゴじゃダメなんですか?」

「氷を一緒に入れるからねー。隙間はないほうがいいよー」


「焼くのは普通ですね。ちょっと匂いが良いかな?臭みが少ないっていうか?裏返しますね」

 火加減はミレルが見てくれる。


 あ、誰か来たよー。


「ごめんよー。魚食わしてくれ。あんまり良い匂いなんで足が引っ張られたよ。

 こりゃずいぶん捕ってきたな。わしも昔はよう捕ったもんじゃ」

「じいちゃん、魚の保存方法なんか知ってるかなー?」

「こりゃあ、ミット嬢さん。保存と言えば寒干しかのう。薪に余裕のある時は焼き干しもやったのう。どっちも味付けはせんかったから、そんなに美味いものではなかったのう」

「ふーん、塩や香草をつければ美味いかもだねー。焼き干しってどうやるのー?」

「小さめの魚をな、ハラワタを抜いて焼くんじゃ。あんまり焦げない程度にの。それを天日干しじゃ。カラカラにの」


「じいちゃん、できたよ」

「おおー。美味そうじゃのう。

 ほーっ。こんな美味い魚は初めてじゃ。んぐっ、もぐもぐ、ふがっ、くぅーーっ」

「じいさん。美味そうに食うなぁ。そんなにか?

 うわっ、なんだこりゃ、美味え!」


「ミット嬢さん、これ食べて。あたしは練習がてら3匹焼いて食べる!」

「あー、飛び入りに食われない様にねー」

「あら?ほんとねー。うふふー」


 うん、塩焼きはこうだよねー。

 さーて、あたいは午後の部行きますかー。


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