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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第5章 ケルヤーク
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1 ケルヤーク・・・アリス

 ハイエデンの本拠はまだまだ形になってはいない。が、優先すべきは交易だ。陸路に道路網を整備する商会だがチューブ列車による交易が必要との結論に至る。‬

 パックの故郷に乗り込んだミットとガルツだったが.......‬


        登場人物


 アリス 主人公 15歳 薄い茶の髪、白い肌、青い目、身長155セロの女の子。


 マノさん ナノマシンコントロールユニット3型


 ミット 14歳 孤児 濃茶色の髪、やや褐色の肌、黒い目、木登りが得意、身長160セロの女の子。


 ガルツ 34歳 工房出身 元猟師 その後兵士を3年ほどやっていた。戦場で壊滅(かいめつ)した部隊から逃れて来た。日焼けした肌、赤黒い髪、青い目、身長185セロの大男。青ずくめの防具、楯と長剣が基本のスタイル。


 パック 15歳 ケルヤーク開拓団で町を出る 身長 156セロ 赤髪、灰目の男の子。


 チーノ   ケルヤークの少女 パックの幼馴染(おさななじみ)


 ヤング   元ドルケル


 エレーナ  調理人 22歳 157セロ ぽっちゃり系 短髪にしてる


 マークス  ケルヤークの商会長 デブ


 *********************************************


     第5章 ケルヤーク


     1 ケルヤーク・・・アリス


 イヴォンヌ班がオクトールを越えたと連絡があった。あとは放牧や農耕に向かない斜面を辿って進んでいくだけだ。いくつか大変そうなところはあるけれど、止まることはないだろう。


 トーレスが進める道の(はる)か先へイヴォンヌの班が進出するはずだ。

 3班で作った道は150ケラルを超えた。



 というわけでやっとあたしの体が空いたので、今日はケルヤークの乗り場へ行く日だ。

 きっとあそこにも隠しドアがある。ワックワクー。


「ガルツさん、おはよー」

「おう。今日も元気だな、アリス」

「早くご飯食べて行こうよ、ケルヤーク」

「まあ、そう(あわ)てないでよ、アリス」

「パックは何度も里帰りしてるけど、あたしは初めて行くんだからねー、もうワックワクなんだからー」

「しかしピピンを連れた4人の移動は久々だな」

「本当だねー、ガルツー。でもケルヤークに借金背負わせちゃったけど傷が浅くてよかったよー。上手くすれば今年中に完済できそうじゃないー?」


「ミットのおかげだな。あそこで動くに動けない俺の代わりに場を仕切ってくれたから、人も町も傷を浅くできたのさ。俺が前に出てたら乱闘は必至、山の様な死人が出たさ」

「あたいを()めたって何にも出ないよ。さあ出かけようよ」



 ケルヤークに着くとすぐに隠し部屋探しー。

「どーお、アリスー。ありそーお?」

「あったよ、隠しドア。今調べてる」

「こうなるとどこの乗り場にもあるんだろうな」


「ねーガルツー、マノにいは相変わらずー?」

「ああ、寝ぼけててハッキリしないが名前を聞かれた気がする」


「それ、きっとニンショーだよ。あたしはたしかお昼食べたあと、ぼーっとしてる時だったと思う。でもずいぶんかかったねー。そのうち何か言ってくると思うけど」

「そうなのか?」

「にいはさんの前だからね。能力が足りないのかな」

「なんだ?どう言うことだ」


「マノにいが先につくられて、それよりも性能のいいマノさんが後から出たんだよ。マノさんでもかなり難しいんだ。でもできそうなのはガルツさんだけだし生きているのもマノにいだけ。もう少しお話頑張ってみて」

「と言われてもな。何を頑張ったらいいものやら」


「よし。こっちはダメだ。裏口行きまーす」

「お茶にしよー」

「ここで火ぃ炊くのか?」

「カネツキー、一つ持ってきたー」

「うわっ。ミット、それ温泉場のだろ。大丈夫なのか?」


「へへーん。温泉の軽食と食堂でなんでこれが3台もいるのか?って話だよー。エレーナは1台でおんなじくらい回してるじゃない。

 この間耳を引っ張って行ってエレーナに(しご)かせたんだよ。あいつら泣いて喜んでたよ」

「それは思ってたけど……」


「思ってるだけじゃダメだよ。パックー。

 あ、もー沸いた。やっぱり違うねー。

 ほらカップだしなー。アリスのもねー」

「「ああ、お願いします」」

「なんでガルツまで神妙(しんみょう)にしてるの?

 ほら、エレーナのお菓子」


「おお、さすがはミット。用意がいい。はは、は」

「ふーん?ほらパックー、アリスにも回してよー」

「ミットー、ありがとう。もうちょっとだから」



 ここにも大量の箱紐(デンシブヒン)があった。死んだボタンは3個だけだった。穴を塞いでケルヤークへ入ると左手の畑作地に20人ほども出て耕している。

 あたしは馬車を降りて土を見に行く。


「こんにちはー。ちょっと土を見せてねー」

「ミット嬢ちゃん、こちらは?もしや、アリスさん?」

「あ、よく分かったね。あたしがアリスでーす。よろしくねー」

「こちらこそ。ガルツさんもパックさんもよく来てくれました」

「この土、チッソ?が足りないって。3メル間隔くらいでこの棒を土に刺してねー。やり過ぎは良くないから余ったらしまっておいてね」


 チッソコテイのマシンでニョーソ?透明な棒?をたくさん作った。


「人数の割に畑が狭いね、耕す人はまだ居るの?」

「はい。やりたがるものは4、50もいるのですがこのとおりでして」

「ふーん。その山は何かに使うの?」

「夏から秋にかけて僅かな山菜が採れます」


「僅かなら畑にしちゃっていーい?

 木も草もちょっとかわいそーだけど」

「ああ、ちょっと待て。アリス、この下にもいい場所があるんだ、そっちを見てから決めよう、な」

「え?まあいいけど」



 馬車で移動するがガルツさんとミットは大人気だ。声をかけるものお礼を言うもの。馬車の邪魔(じゃま)をするものがいないのはありがたい。


 途中でミットとパックが知り合いを見つけ、用があるとか言って馬車を降りた。


「ここだ」

「湿地だねー」

「ああ、湿地だ。どうだ?」

「この辺はどうなってるのかな?

 ………川はちょっと遠いけどあっちの方が低いね。なんだろうね、この水?

 ……センジョウチ?フクリュウスイ?へー。

 大昔の洪水?どっからそんな水が来るの?

 ……もう来ないんだ。筒が走る前の洪水?

 ……あの穴から噴き出たんだー。それでここの下には湧き水があるのね。そのまま流しちゃうのは勿体無いかなー」


 むう。どっかに貯めればいーんだけど町があるしねー。水があるのはこの真ん中だろーし。どこがいいー?

 ……地下?チョスイソー?それならなるべく上だね。


「ガルツさん。あの畑に一回戻ろ」

「んー、どうした?」

「この地下に水が流れてる。でっかい箱を畑より上につくって水を溜める。そしたら多分ここは乾く。水も使い放題になると思う」

「それはすごいな。やってみるか。




 乗り場の出口の少し下。この辺かな?大きさはどうしようか?あ。水の深さを先に見てみよう。

 マノさん、水探査。


 ……6メルか。その下は?

 ……8メルで水が切れた。深さは9メルにしよう。そこからあそこまで幅は17メルあれば塞げるかな?あとは蓋?柵で囲って橋の方がいいいかな?重い馬車が通る分補強すれば良いか?

 あー。下から柱を立てよう。それならいくら渡る距離が長くても大丈夫。山裾の壁は高くして崩れても大丈夫な様に。長さを切りよく20メルだとどーお?畑には影響ない。いいねー。

 じゃあこれでマシンを撒いちゃおー。

 終わるまで2ハワー40メニ!あたしは休憩するよ、マノさん、頼むねー。


「ガルツさん。ここはしばらくいーよ。でっかい箱に橋がかかるから」

「地面に架けたのか?」


 指差すので見ると先に橋と柵が出来ている。


「安全でいーじゃない?これからあの中が9メル下がって水が溜まるよ」

「ほう?それはすごいな」

「なんやかやで2、3日かかるかもね」

「それは大仕事だな。夕方までにハイエデンに戻ってまた来るか。エレーナの飯が食えないのは困る」


「それでー、なんか見るものあるの?」


 そう聞いた途端、ガルツさんがパンと手を打った。


「じいさん。どうだ?あれから何か思いついたか?今日はアリスが来てるからな。大概のことはなんとか……なる…かもな」


 へん!あたしに睨まれて(しぼ)んでやんの。わざわざ仕事増やすなよー。


「あんたがアリス嬢さん。いやー、お世話になっております。お顔を見るのは初めてですが、ミット嬢さんやパックがみんなあなたのお蔭だと言っておりました。ガルツさんがここまで仰るのです。お礼を申します。ありがとうございます」


 そう言って深々と頭を下げるおじいさん。


「えー、やだなー。みんな大袈裟(おおげさ)なんだからー。

 お困りのことがあったらできるだけですけど言ってくださいね」

「いや、先日ガルツさんにお話したネバネバの木が1本見つかりましてな、これがそのネバネバでございます」


「ふーん?……ゴムー?これすっごく使い道のある材料だよ。まず木を増やして欲しいな。挿木(さしき)ができるって。ただあと2月はこれの採取も挿木もダメだよ。今が一番弱ってるらしいから。2年くらいは増やすことにしましょう」

「今採取に行かせてますが……」

「すぐにやめさせて」


「はい。おい、知らせて来い、中止だ!」

「分かりました」


 例年だと筒で禿山の乗り場と逆方向にもう一箇所開墾(かいこん)のために住民を送り出す頃だが、乱伐が過ぎると言うことでガルツさんが中止させたそうだ。30年以上も開拓団によって食料調達をしていたらしい。

 その分を別のところで稼がなくてはならない。


「マークス。赤と白の土の採掘はどうなってる?無理させてるんじゃないだろうな?

 怪我人が出たらお前の首が飛ぶんだから、しっかりやるんだぞ?」

「ううっ、足場作りに難儀(なんぎ)してますが、なんとかやってます。怪我なんかさせません」

「町のものに聞けばすぐに分かることだ。まあいいだろう」


「筒の路線はどこまで分かってるの?全部で12あるよね?」

「嬢さん、親父に聞いた話だが、あの筒の乗り方が分かったのは偶然だったそうだ。5人で探索隊を組んで近いところから調べて行ったそうだよ。

 使える乗り場を二つ見つけたが45人が戻らなかったらしい。左右にそれぞれ3箇所まで探索したと聞いているよ。

 それからは街の半数を農場開拓団に出して来たんだ。だが10年前くらいから穫れる食料が減って来た。それでだんだんと乗り場から遠いところを開墾させていたんだ」


「それ、半分は山の木を根こそぎにしたせい」

「ううっ、そんなことがあるのか?」

「後の半分は畑の世話も半分だったからじゃないかな?種まき前や収穫後にだってやっておかなきゃいけないことはあるから」


「何をすると言うんだ?」

「分かりやすいのは堆肥(たいひ)の管理だねー。いい肥料をあげないと、どんどん土が()せていくよ。道具の手入れ、水路の掃除。あたしは詳しくないけどハルトのとこは、結構忙しそうだったよ」

「ううっ、そうだったのか」

「どうせ、ここでふん反り返っていたのだろう。そんなことで土地の管理ができるわけがない」

「今からこの町で畑を広げようと思うから、うまくいけば食料の心配はグッと減るよ」


「なんでそんなに色々ご心配下さるのですか?」

「最初に言っただろう。俺たちは交易をしに来たんだよ。相手がいなけりゃ交易はできねーんだよ。全く、人の話を聞かないやつだ」


「土の採取って遠いの?」

「赤は近いですよ。馬車で1ハワーかからないくらいです。白は遠くて片道6ハワーくらいです」

「ガルツさん。道路班呼ぼーか?」

「悩ましいところだな。確かに生産は上がるだろうが、対価もなくそこまで肩入れするのも違う気がする」

「うーん。あの土だってここで加工できれば運ぶ量がすっごく減るんだよ?」


「あのな、そこまでやったら乗っ取るしかなくなるぞ。おまえはここの800人の生き死にに責任が持てるのか?

 俺たちにできるのは自分の足で立って、食い扶持(ぶち)くらいは自分で稼げる様にするところまでだ。

 それだって借金になるが」


「……赤い土の採取場に案内して」

「はい。ではお支度をお願いします」

「支度って?」

「道が大変に悪いのです。お召し物が汚れてしまいますので」

「ふーん?洗えば済むことでしょ?着替えも持ってきてるし」

「左様で。では参りましょう」


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