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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第4章 ガルツ商会
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6 トラク・・・アリス

 これまで:ハイエデンの街に本拠と温泉場は軌道に乗った。ガルツはチューブ列車でケルヤークへ行った。アリスもこの先に必要になりそうなものを考えていた。

 今日はミットとガルツが筒でパックの町を探しに行くそうだ。ケルヤークって言ったっけ。多分もう一つか二つ左のはずなんだけどなー。

 あの禿山の乗り場とハイエデンがどのくらい離れているのかわからないんで困る。チズの途中がないんだもん。

 最大で200ケラルくらいの範囲が描けるから、もっと遠いってことだけしか分からない。ケルヤークが隣だったらチズが繋がるかもね。

 渡したマノにいはまだガルツさんをニンショーしてないみたいだし、こっち方面はうまくいかないねー。


 ねー、マノさん。地図って死んだボタンでも見られる?

 ……ジュシン?できるの?シュツリョク?ができない。なーにそれ?

 ……あ、目に映すやつかー。……紙に描くのもダメー?

 なんかないのー。そーゆー道具。

 ……タブーボー?ボードー?マノボードでいいや。

 あー、四角い板に映すの?ずっと板じゃ、邪魔(じゃま)だよー?あ、巻いて筒にするの?矢筒に入るかな?

 ヘー、いいかも。

 おっと、今日はパックに頼まれた5メル道路の作成道具だった。でも幅5メルってなんで5メルだっけ?


 あー、洞穴近くの道路がちょっきり5メルでマノさん絡みって言われてたねー。

 荷馬車の出口に椅子を据えて取り止めもなくそんなことをマノさんと問答していると


「アリスちゃん。あたくしちょっとお時間ができましたの。お話していいかしら?」


 この人はイヴォンヌさん。ローセル商会長っていうおじいちゃんのお孫さん。20歳くらいかな。背が高い美人さん。今日は薄い緑のシャツ濃い青のリボンを首に巻いて蝶々結びが高い胸の上で踊っている。白いヒダヒダのスカート、ヒダの隙間に青が見える変わった生地だね。


「あ、イヴォンヌさん、いらっしゃい」

「交易路を作るんですって?」

「ええ、パックに頼まれちゃって」

「道幅が5メルって聞きましたけど、広くないですか?まあ広い分にはいいのかもしれませんけど」


「むしろ狭いくらいだと思うよ。馬車って荷台が大体2メルでしょ?頑丈な車輪がくっ付いてるから、本当の幅は2メル半に近いんだ。それがすれ違うんだよー」

「すれ違う?あら、そうね、すれ違いますわね」


「そしたらどっちかが止まって、もう1台がゆっくりと通り過ぎるのを待つんだよ。ギリッギリだねー。

 それにねー荷物を積んだ馬車って重いんだよ。車輪が道から外れたら、そこがうーんと硬ければいーけどハマっちゃったりしたら、もー大変だよ。交易が盛んになればその台数も増えるから、いちいち止まってなんか居られないよ」


「あらあら。トラクでしたっけ?それも大変なの?」

「トラクはこれから作るんで大きさはどーでもなるけど……荷物を積みやすい大きさにしたいよねー」

「そうですわね。大体のものはメル単位ですわ。家具とか輸送用の箱とか。そうすると1メルとか2メルのものが積みやすいってことですね。ちょっきりじゃあ困るわね。片側10セロ広ければ手も入るしなんとかできますわ」

「荷台の内寸で2メル20セロ。壁が5セロだと全部で2メル30セロかー。トラクって馬車の5倍以上速いんですよー。それがすれ違う……」


 あたしがブルっと震えるとイヴォンヌさんが笑った。


「本当ねー、ぶつからないって言われても怖いわ。端っこに寄るのだって怖いと思うのにすれ違うなんて」

「だから両側に1メルくらい余裕がないととても安心できませんよ」


「そうねー。それだと全部で7メル半、かしら」

「半かーなるべくちょっきりがいーな。8にしちゃおうか」

「あらどうして?」


「あー、数字に馴染(なじ)みのない人に使ってもらうんです。それでなるべく分かりやすい方がいいんで。

 今回の道具は太さ3セロの筒を11メルに伸ばして使うつもりです。道の向きと登り下りの設定をその棒でやるんですけど、これは実際にやるとけっこう大変だと思うんですよ。だから棒の操作板は幅の設定と撒く、始め、中止、伸びる、縮むくらいに減らしたいんです」


「ふうん。アリスちゃん、道を作る場所って全部平らじゃないんでしょ?山があったり川があったり小さな水路があったり……あとは、地面が傾いてたり」

「そうなんですよ。いろんな条件でも道幅を確保しないといけないんです。それでも設定にない条件の場所はあたしが行って繋ぐしかないかもです」


 なんか見に行くたんびに条件が増えていきそうなんだよね。こんな複雑なの、設定のナノマシンじゃ対応できない気がする。

 6個しかないけど死んだボタンを使おうかな?3セットは欲しいよね。


「とりあえず、今わかる条件を書き出して見ましょうか?

 あ、でも、行くってどうやって行くの?どんどん遠くなるんでしょ?それに、道を作る人も寝たり食べたりができないと大変だわ」

「そこで作ってるってことはそこまで道が繋がってるってことだから、トラクで寝泊まりすれば良いですね。買い出しに戻れるしお日様ハツデンも積める。

 あたしも小さいトラク?

 ……ジョーヨー?人を運ぶの?荷物はちょっぴり?

 ……ふーん。ジョーヨーねえ。それで出来上がった道を走るのは楽しそう!」

「ジョーヨーですの?まあステキ。あたくしも行ってみたいですわ!」


 イヴォンヌさんが椅子から飛び上がってくるりと回った。こんなはしゃぐとこ、初めて見たよ。


「わっ、イヴォンヌさん、落ち着いて」

「だって、あたくしこの街から出た事ないのよ。遠くに見えるあの場所の風景。行って見たいじゃない」


 結局、トラクから作ることになった。

 長さ8メルの幅2メル30セロ、高さ2メル50セロ、車輪が8個付いていて真っ直ぐから真横まで自在に曲がる。それぞれ独立した動力を持ち8メル幅の中、その場でくるりと向きを変えるトンデモな四角いトラク。車体は木質に金属を混ぜて強化し、中空を蜂の巣構造で埋めたものを基本材とした。

 屋根にべったりと(お日様ハツデン)を貼り小バッテリを4つ、キューデンも積んだ。ベンキーが1台、1メル半と1メルの浴槽、2メル角の狭い台所。折り畳みの2段ベッドが2つ。一番後ろの1メル半は貨物庫。

 1メル幅の出入り口は左側1ヶ所で、丸い30セロの窓が天井近くに1メル間隔で両側に並んでいる。運転席は一番前の左側、50セロの通路を挟んで3人が座れて前面は4/5セロ厚のトーメイ板。右側の外壁一面に黒壁から見たハイエデンの街が浮き出るように描かれている。

 乗ってみるととにかく狭い。ここに4人かー。あたしはジョーヨーでたまに行くくらいでいーや。


「きゃー。ステキー。あたくし気に入りましたわ。道路作っちゃいます。ガルツさんがお帰りになったら交渉しますわ!」

「いや、4人揃えないとダメだよ?男も混ぜないと作業が大変だと思うよ?それで大丈夫?」

「まあ!そうですの?そうなると更衣室が要りますわね……この辺に作れません?」


 意外とゆーか乗り気になっちゃったよー。めんどくさい人だねー。そりゃちょっとでも広いほーがいーけどさー。どーにかなる?

 ……なにそれ?止まってる時だけ幅を広げちゃうってー?1メル半も広くできるんだ。

 ……入り口の後ろだけ?2メル半しかないよ?入り口、前に持っていっていーい?

 ……6メルあるけどお風呂と貨物庫だし。お風呂って一緒にしまえたりする?

 ……空なら出来るんだ。じゃあ貨物庫の前に台所、そのよこに畳めるお風呂と脱衣所。2段ベッドは壁と一緒に動く?

 ……よーし。じゃあそれで直しちゃおー。


「あら、

ずいぶんご機嫌(きげん)ですけどどうなりましたの?」

「広くできるよー。直すのに1ハワーくらいかかるって。

 次はガイドにする棒だね。30セロ浮かせれば道路の登り下りが見やすいと思う。トラクの指示はしたから、直るまでこっちをやってみようよ」

「あらあら。どうしますの?」


 あたしは材料を積み上げてある中から必要なものを(つか)み取って集めると外に戻り椅子に座った。

 イヴォンヌさん来ないね。戻ってみると首を傾げながら右手で材料を掴んで動かそうとしている。なんか可愛いー。


「どうしたの?」

「えっ?だって、アリスちゃん、これをウニって取っていったじゃない?全然取れないんだけど、どうやったの?」


「あははは、それできるのアリスだけだよ」

「あら、パックさん。見てらしたの?」

「僕は受付が持ち場だからね。そこだもん」


 掛け持ちであちこち動くから、いないと思ってたよ。


「パック、一段落したの?」

「え、ああ、もうちょっと。八百屋のサクがそろそろ来るはずなんだ。そしたら手が空くからそっちを手伝うよ」


「分かった。イヴォンヌさん、続きやろ」

「ええ、いいわよ。パックさん、あとでね」



 椅子に座ってマノさんと作るものの細かいところを詰める。ポケットからボタンを一個出して載せると長さ50セロ、太さ3セロの黒い筒に変形して行き、表面に、撒く、始め、中止、伸びる、縮む、回収と書かれたボタンが浮き上がる。その右に幅10セロ、高さ3セロの板ができて行く。

 イヴォンヌさんがそわそわと見守る中、5メニくらいも集中していた。


「ふう、できたよー。どーかなー?やってみよー。あ、的と固定道具がない!」


 隣へ行って持ち易い分の木質を千切って戻ると2メル程の白い棒を一本作った。


「イヴォンヌさん。この棒を離れたところに立てて欲しいんだけどいーい?」


「向こうまで行くのね?」


「あー。遠いですよ?もっと近くても……」


「どうせ行くんでしょ?トラクもたくさん走れるし?行ってくるわね」


 トラクで向こうまで走る?いいかもー。

 えーっと、固定道具どんなのがあるー?

 ……サンキャク?あー、いいね棒を(つま)んでくれるんだー。じゃあそれ二つお願い。

 設計図のあるものは早いよねー。

 じゃあ11メルの棒をニューッと。ここが始まりー、棒を置いてー、んーあそこだなー。よしここにサンキャクを据えて棒を固定して。

 あ、始まりから見ないとわかんないや。戻って戻ってー。ちょーっとズレたねマノさん。

 ……あたしの最後の固定が違ったって?早く言ってよー。


「アリス、これがガイドかい?長いね」

「わー、パックが来たー。この棒の30セロ下に幅8メルの道ができるよ。20メル先にこれ立てるから高さを見てね」

「あら、アリスちゃんお迎えに来てくれたの?」

「これが高さの目印。この辺に高さ30セロで立てるよー。イヴォンヌさんもパックのとこでみてねー」

「あらあら」


 11メルの先端に戻った。


「パックー。向きがずれてるの分かるー?」

「えっ、あ、本当だー」

「あたくしにも見せてくださいな。

 あら、半セロもないんじゃなくって?右にちょっとですわね」


「じゃあ直すからいいところで止めてねー」


 わざと逆へ動かしてみる。


「あら、アリスちゃん逆ですわー」

「はーい」


 どうかなー?


「もうちょっとですわ。はいそこでいいと思います。パックさん、どうですか?」


「おー、ぴったりだな」

「じゃあ次は高さだよー、ここはあんまりデコボコしてないから、あそこで30セロ上げたよー。今度は上下に調整するよー」


 イヴォンヌさんが後ろを向いて足の間から覗き込んだ。しゃがむと地面にスカートがつくからかな?スカートをちょっと持ち上げたところでパックの顔が真っ赤になった。


「もうちょっと下かしらね?パックさん、どうですか?」

「ええっ?ええと……」

「あら、大丈夫ですか?あまり頭を揺らすと見えないと思いますけど?」


 これはまだまだいろんな準備が要るみたいだねー。イヴォンヌさんのズボンとか。

 30セロ浮かせるのは棒の安定は良いけど作業する姿勢が大変だね。あ、マノボード!

 マノさんあの高さの絵ってボードに出せる?

 ……はあ。出せる。見やすくして?はあ。そーいうのもっと早く。って言うだけ無駄かー。

 じゃあボード作ろう。


「なんかねー。もっと見やすくできるってー。材料取ってくるから待っててー」


 このボードも丸められた方がいーかな?外だからねー風が吹いて飛ばされるー?雨で濡れるー?運ぶ途中で転んで下敷きー?

 ……そーですか。心配なしですか。

 戻って椅子に座る。あたしはさらっとしか聞いてないのでおまかせだ。サンキャクは一緒だね?あ、ボードができてきた。でっか!

 高さ30セロ幅60セロの薄い黒い板が出来上がった。

 イヴォンヌさんは興味津々だ。

「まあ、これ、なんですの?」


「ボードだよー。無理な姿勢で覗かなくても良いようにね。ここからでも見えるかな?

 ……大丈夫だって。この縁の丸いボタンを押すのね」


 黒かった板の表面がパアッと明るくなって黒い棒の拡大された絵と的が横に2分割されて現れた。左のは横から見た絵で、右は上から見た絵か。向きはいい感じに合ってるね。この数字は?4/100セロって書いてある?

 ……右にずれてる?


「うえっ。この右の絵、右に4/100セロずれてるって意味だってよー。判定、キッビシーよね?」

「あらあら。ではこの左のは上下ですの?30/100セロ、下を向いていると?」

「そうだね。右上の赤い四角で切り替え?チョンと押すの?」


「こうですの?あら、線と数字だけになりましたわ。見やすいかって言われるとどうなんでしょう?」

「上の青いボタンは横にずらすんだって。拡大と縮小ってなーに?」

「大きくする、小さくする。でしょうか?

 動かしても線だけだとさっぱりですわ。さっきの絵に戻るかしら。わっ。あたくしの立てた棒がこんなに大きく見えてますわ。あらあら、これは面白いですね」


 あんなに細かい数字出されても調整できないじゃない。

 ……ねじ?そー言えば、なんか丸いのがついてたね。

 棒と固定している三脚を見に行くと向きの違う丸いつまみが二つ。ふーん?


「ちょっとボード持ってきてー」


 先端のそばにしゃがむとゆっくりつまみを回してみる。


「数字が小さくなったよ。あ、もうちょっと。今ゼロになった。でもアリスのどこが見えてるのかな?」

「切り替えはどうですの?あらやっぱり線だけですのね。この絵って必要なんでしょうか?」

「次に行くよ。下げるんだっけ?」

「いいえ、上げるんですわ。30/100セロ」

「こうかな?」


「減りましたわ。どんどん回してくださいませ。17、9、3、ちょっと行き過ぎです。はいそこでゼロ。あら、左に2ですわ。はい結構です両方ともゼロになりました。合わせるのがとっても簡単で楽しいですね。おじいさまに言って絶対あたくしも道路を作ります」

「じゃあ幅8メルの道路を作って見るよ。撒く。

 始め。

 0/12?」


「ボードにも同じのが出てますわ。0/12メニ。作成中。ですって。

 12メニでできちゃうってことかしら?」


 むう。あのおしゃべりマノさんが返事しないよ。12メニならすぐだし、待ってよーか。


「僕、エレーナにお茶を頼んでみるね」


 2メニと経たないうちにパックがお茶を持って来た。


「アリスちゃんってガルツさんとずっと旅をしてたの?」

「そうですね。ここにくる前2か月くらいかな。最初はミットと3人で歩いて、2日くらいだったね。そのあとピピンが来て馬車の旅。筒の乗り場を見つけて、パックを見つけて。ハゲ山の植林ー。あれ楽しかったよねー、パックー。

 パックの町を探すつもりで筒に乗ったんだけど降りたら虫だらけ。でもこのハイエデンっていい街だよね。あたしが見た中でいっちばん平和だよー」


「まあ?確かに大きな争い事はないですけど」

「うふふ。虫の騒ぎから4カ月?ゆっくりのんびりやりたいことをやって!平和だよー」

「僕もそう思うな。お腹空かせて、()たれこそしなかったけど、嫌な命令されて……僕もこの街が好きだな。なんか役に立ちたいよ」


「あたくしはこの街から出たことがないんです。乗り場も100年以上も閉鎖されたままだったし周囲は貧しい集落ばかり。幸いここは食料には困らなくてこれだけの人が集まりました。

 いい街っていうのはその通りだと思いますけど、あたくしは広い世界を見てみたい」


「どっかで聞いたなー。あ、ガルツさんだ。

 パックに会う前にねー。温泉見つけたんだー。だーれもいない荒地の中にポツンとある森のそば。浴槽が3つ有ってね。ゴミだらけでさー。ミットと3人で掃除して入ったんだよー。気持ちのいーお湯でさー。ここに家を建てて3人で住もーかって言ったんだよねー。

 そしたらガルツさんがね。お前たちにはもっと広い世界を見てほしいって言ってねー」


 ふと横を見ると、できたね道路ー。

 あたしの見る方を二人も見た。


「あら、お話してる間に出来てますね。次はどうするんですの?」

「このブロック、両端の真ん中に穴があるんだ。そこにこの支持棒を立てるの。11メルのガイド棒を持ってきて載せるでしょ?パック、サンキャクをあそこに据えて。イヴォンヌさんはボードで向きを指示して」

「「はい」」


「パックさん、もう少し右ですわ。あ、すみません。あたくしの右ですから左へ5セロです。高さもう少し上がります?もう1セロ。はい、では微調整です。大きい方から行きますよ。

 右へ89/100。指で動かしちゃいましょう。22/100。つまみで右へ16、8、2、はい。

 高さ13/100下です。8、3、はい。

 ちょっと戻して。はい。1/100左。はいできました」


「イヴォンヌさんすごいよ。あっという間だね。それで、撒くを押して。うん、次は始め。

 0/12だね。また休憩ー。

 あれ?回収、忘れてた。あのね、撒く、で撒いたマシンが仕事をしてくれてこのブロックができたんだけど、マシンってそんなに移動できないの。このブロックの表面に見えないくらいちっちゃいマシンが出てきて集めてくれるのを待ってるんだよ。それを回収してあげないと数が減ってブロックが作れなくなるの」


「アリス、できるのを待ってる間に集めたら?」

「えっ?ああ、そうね、パック。箒がいい?」


「ああ頼むよ。箒がいいよ」

「ちょっと待ってねー。材料がそばにあるっていいーねー」


 むう。回収ボタンも付けたのに。



 できた箒を渡すとイヴォンヌさんが楽しそうにマシンを回収していた。


「トラクの直しが終わったみたいよ」

「あら大変。あたくしのトラク見てあげなくっちゃ」

「出入り口は前の方なんだね。階段は2段か」

「あまり変わってませんわ。広いってお風呂がなくなった分ですの?」


「今は走る時の形だからー。じゃあ始めるよー。

 到着しましたー。お泊まりなのでここのボタンを押しまーす。これ、先に運転席でお泊まりボタンを押しておかないと動かないよ」


 入り口から後ろを見ていると、右の壁が外の方へずれて広がって行く。面白いねー。1メル半広がったところで止まった。


「はーい。

 お部屋が広くなりましたー。台所の右にお風呂も出来てまーす。更衣室は脱衣所を使ってね。トイレは狭いけど入り口正面のがそうだよ。2段ベッドの部屋部分は、一応間仕切りカーテンで分けられるようになってます。

 どーお?」


「きゃー、ステキー。もうどこまでも行けちゃうじゃない。おじいさまに1台買っていただくわー」

「ふーん。よく出来てるなぁ。運転席、カッコいい。あ、大人用か。足がつかないや。でもすごいよアリス」

「荷運びのトラクは運転席部分だけであとは荷台だよ。積み下ろしの蓋が両側でガバッと開いて、長さは11メルかなー。高さはもうちょっと有ってもいいかもね」


「あ、サーラムたちが片付けから帰って来た。もうお昼だね。僕食堂の手伝いに行くよ」

「イヴォンヌさん。あたしたちも行きましょう」

「あ?ええっ、ちょっと待って、あの棒とボード片付けて、ここもちゃんと閉めなきゃダメよ!

 盗みなんてしょっちゅうなんだから。こんな面白そうなものをほっとくわけないわ」


 9/12まで進んでいたのでそれほど待たずに片付けが出来た。そうかー、トラクの戸締りも考えよー。



 夕食後の会議で、パックの町ケルヤークについて聞いた。ひどい食料不足だそうだ。ガルツさんは商会長を通じて馬車3台の穀物や肉野菜の手配をしていて、明日荷が揃い次第また行ってくるそうだ。


「それでな、アリス。今日の分の代金は宝飾品なんかでもらって来たんだが、それもあと2台分なんだ。あいつらが無事に冬を越すには20台は要ると思う。ハイエデンがどこまで出せるかわからんが、ビクソンも掻き集めると言ってくれた。

 でな。これを見てくれないか?」


 赤い土?……赤いのってサンカテツ?なーにそれ?鉄かー。重さの半分が鉄?


「この土は鉄が採れるって。重さの半分」


 このタネは?……ワタ?ふわふわお布団?ぬいぐるみ?ここでも作れるかな?

 ……できそうなんだ!


「これ、ワタのタネだって。ここでも育つって」


 これ豆?カラカラの真っ茶っ茶……コーヒー?なにそれ?美味しいの?

 ……うえっ!苦いのー?ダメだよー?

 ……大人がー?本当かなー?マノさんもたまに間違うからなー。


「なんかねー、コーヒー?お茶みたいに飲み物になるってー。すっごく苦いらしい。ほんとに飲めるのかなー?」

「マノさんが言うんじゃやってみるか。どうすればいいんだ?」

「なんかね、これをちょっと粒々ーくらいに()いて、お茶みたいに淹れるらしーよ」

「どれ、やってみるか。エレーナに頼んでくる」


「パックー、チーノちゃんが居たー」

「え?チーニー?」

「うん、痩せてたよ。でもちっちゃい子3人の面倒を見てたー。あたいはガルツがサボるから仕切んなきゃいけなくって、あんまりお話できなかったけどー」


「なんでミットが仕切るのよー?」

「だってー。あんな人相の悪いおっさん5人とゴツイ青ゴリラだよー。あたいが黙って見てたら皆殺しになっちゃうでしょー。おかげで死人は二人で済んだんだよ」


「すごい。ミットすごいよー。快挙だねー」

「えへへー。他にも交易品候補が二つあったからー。上手く行くといーね」

「コーヒー、淹れてもらった。やっぱり苦いな」


「でしょー。あたしはよしとくねー」

「僕は飲んでみたい。町の収入になるかもしれないから」

「あたいもよすよ。でも香りがいいねー」


「あ、そうだね。香りかー。隣で飲んでるとご飯が美味しいとか?」

「どーだろ」


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