10 復興・・・パック
これまで:ハイエデンの街に本拠を置く事にしたガルツ一行は元ドルケルを労働力として押さえ、商品の量産態勢も出来つつある。街の倒壊した家の片付けが始まっている。
僕は朝からケビンたち4人と大ムカデに壊された家の片付けに出ている。ミットたちは南から、僕らは北の方から順に片付けて来ることになっている。
1箇所目に着いてみると2軒の隣あった店が潰されていた。片方は肉屋だったようだ。どちらの店も家の者は全滅。休みをとっていた者が何人か難を逃れたらしく、僕らが行くと手伝いたいと言って来た。
「こうごちゃっと重なってちゃ何にもできないね。ケビンさん、周りに立って人が立ち入らないように見てて。ハンスさん、分解マシンを撒いちゃって。足元に気を付けてね。釘なんか踏まないようにね」
「パックさんの話は聞いたな。ハンス以外は立ち入りを見張るぞ。優しくお断りするんだぞ?いいか」
「兄貴。兄貴の喋り方の方がよっぽど怖いでやすよ」
「お?そうか、急には変えられんよな。はっはっは」
「あー、坊主ども。ここは見ての通り危ないんだ。俺たちの片付けが終わるまで入らんでくれるか?おうすまんな」
「おじさん、片付けってどれくらいかかるの?」
「パックさん、かかる時間って分かりやすか?」
「2ハワーくらいだと思うよ」
「坊主。2ハワーと言ってるが余裕をみて昼前だと思ってくれ。何かあると予定ってのはすぐに延びるから」
「うん、おじさん。ありがとう」
「おう、気ぃ付けて行きな」
だいぶ嵩が減って来たけど、もうしばらくはできる事はないね。散布はとっくに終わってるし、まあゆっくりやろう。
周りを見回すと近所の人が遠巻きに見ている。僕は人数の多いそばへ行って声をかけた。
「首長のアイゼルさんの依頼で片付けをしています。このままでは危ないし、見栄えも悪いんで木材や瓦礫は一旦撤去します。作業中は近づかないようにお願いします。2ハワーくらいできれいになると思います」
「はあ、そんなに早く片付くのか」
「うちの隣もやられたんだが、子供がいるんで怪我しないか心配なんだ。来るのか?」
「この地図でどこか分かりますか?」
「えーと、大通り、雑貨屋……ここだ。赤丸がついてるな、ここだよ」
「早くて明後日、3日くらいのうちにはいけると思います」
「そうか。なるべく早く頼むよ」
「あんた、うちの近所はどうなってる?」
「はい、どちらでしょう?この地図で見てください」
「んー?これには載ってないな。こっちの方はないのか?」
「4、5日分の予定ということでこの地図1枚だけ預かってます。申し訳ないですがそれ以上は今分かりません。首長のアイゼルさんに聞いてもらった方が早いと思います」
「そうか。聞いて来るよ」
「そろそろ、ってもう始めてたか。みんな頼むよ」
「任せて下せえ。パックさん」
「木質の大きいのはこっちに集めてブラシをかけてね」
「へい。分かってやすよ。ハンス、頼んだでやす」
「へい」
端の方から大きな木質を集め、小さい塊をトンボで集めていく。トンボ作業が始まると1ハワーほどですっかりガレキは片付き、基礎が無くなった凸凹の地面が残った。木質は量が多いのでカジオに頼むことにして脇に寄せ積み上げると、手押し車には他のものを積んだ。1台半と言ったところか。
次へ移動する、すぐ近所の一軒家だった。
ハンスにマシンを撒いてもらって、待つ間に先程の解体現場の基礎の溝に残っているマシンをざっと集めるように頼んだ。
みんなで見張りをして、ハンスが戻って来ると回収が始まる。家一軒だと勝負が早いね。手押し車2台ちょっと、4台がほぼ埋まった。次へ移動すると10数軒の家がなぎ倒されたように潰れている。
ハンスのマシン撒きと見張りをみんなに頼んで僕は木質を片隅に固めておろしていく。他の材料も同じ種類同士くっつけてまとめた。
金属と何かわからないけど量の少ない物、骨のブロックは全部積み直した。
積み替えが終わって周りを見ると、手前から回収が始まっていた。二人が手押し車に木質を積み集めて戻って来ると、ハンスがそれにブラシをかけて積み上げる。ケビンはトンボで集めて通路を優先して作っていく。この調子ならここを片付けてお昼でちょうどいいかな?
僕もトンボを持って集めるとしよう。溝の中のマシンを集めるのに箒が要るね。アリスに頼もう。
木質は全部集め終わった。木質と石を残し手押し車に材料を積むとお昼に戻る。
戻るとミットたちも通りの向こうに見えた。女神像の前で合流して、戦果を自慢し合う連中を横目にミットと笑い合う。
「材料をそこに下ろしたら服を脱いで体を軽く洗うんだよー。ばっちいのが一杯付いてるんだから。着替えたらお昼だからねー。食堂に集まんなよー」
「「「「へーい」」」」「ミット母さんは厳しいよー」「「「ははは」」」
昼飯もなかなかのご馳走だ。というか量があって美味い。みんなガッツリ食ってるよ。食休みは1ハワーあるから大丈夫だろう。
カジオに馬車で材料の回収を頼んだ。ミットの方も2台分くらいあるらしい。あと二人連れて行くと言っていた。
午後はピピンが忙しそうだね。
その日はあと2件片付けて少し早いけど戻って来た。戻ると荷下ろしの後、骨ブロックを慰霊碑に納めてみんなでお祈りする。
それが終わると夕飯前のお風呂だ。入らないやつは食べさせてもらえない。僕らは服をまた着替えて食堂に集まる。
「みんなご苦労だった。予定通りの件数をこなしてくれたようで嬉しいよ。初日なんで少しだが酒を用意した。今日の分はこの甕に一つだけだがまあ飲んでくれ。メシもエレーナが腕によりをかけて作ってくれた。味見してみたが絶品だぞ。
さあ、食うぞー」
「あーあ、ガルツー、無茶苦茶だよー」
「その割には顔が笑ってますよ?ミットさん」
「へへー。パックだって。あたいも食うぞー」
「「「おおー」」」
ミットの用語解説だよー
単位ねー
お金 シル
長さ セロ=センチメートル メル=メートル ケラル=キロメートル
重さ キル=キログラム トン=トン
時間 メニ=分 ハワー=時間
温度 セッシド=度
角度 デグリ =度
マノさん アリスが勝手に名前をつけた魔法ーつかいー
飾り紐 いろんな糸で撚ったひもー 房が二つ付いてて、一つは布や皮、もう一つは鉄を弄れるみたいー この頃は土系も弄れるー
アリスの目 見たものの寸法が分かってせんを引いてもらえるー 温度が見えるー 毒が見えるー
黒い帽子 お日様が大好きな帽子。
チズ 上から見た周りの絵が見えるー。大きさも変えられるってー
死んだマノさん 飾りボタンだけどお返事がないらしいー。マノさん材料が採れるってー
ケッカイ キャンプ地を囲うように黒いひもを結んでおくと15メル以内を何かが通るのを察知してうるさくビービー鳴く道具
ハッポー ふわふわのタマゴ 皮素材から作るー
メッポー ハッポーをちっちゃくする袋 出すとまたおっきなハッポーに戻るよー
デンキ 浴びると軽いのは人や動物の動きが止まる。強いと気絶したり、死んだりする 滅多に使わないよー
灯り 4セロの猫耳付きの白い円盤 厚さは半セロ 真ん中を押すと3段階で光るよ 明るいので連続3日くらい光るらしい
フィルタ 木の中の糸を固めて入れ物のような形にしたもの 水を漉して飲めるようにしてくれるー
分解ブラシ マノさんを撒いてガレキを分解して分けてもらうブラシー
お日様ハツデン 黒い膜でお日様を浴びて元気な力を作るー
バッテリ 元気な力を溜めるものー
やっほー。ミットだよー。
ハイエデンはキレーな町だよねー。あたいがこんな町に住めるなんて思ってなかったよー。
みんなアリスとガルツのおかげー。グッスン。
ハイエデンのお話はもう少し続くよー。
何をするにも足場固めだもんねー。
じゃあ、まったねー。バイバーイ。




