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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第3章 ハイエデン
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9 街の片付け・・・ガルツ

 これまで:ハイエデンの街に本拠を置く事にした一行は元ドルケルを労働力として押さえ、商品の量産態勢も出来つつある。

 やっと預かった土地の片付けが終わった。俺はアリスが用意してくれた道具を持たせ、元ドルケスを4人ずつ2組、ミットとパックを付け街の片付けに明日から出すことになった。


「リーダーはミットとパック。サブがケビンとヤングだ。手押し車4台に分解ブラシと梯子(はしご)を積んで行け」


 これからアイゼルからもらったリストを順に回ることになる。手押し車が一杯になれば戻ってきてここへ下ろす。

 だが近間で移動した方が効率がいいから、まとまった量にしてカジオに荷馬車で取りに行かせることも考えている。昼飯はここへ戻って食えばいいしな。

 1日で1班3軒から5軒は回れると見ている。残りは注文品の製造にあたる。多少は在庫も作っておきたい。


「アリス、どんな具合だ?」

「あ、ガルツさん。んーっとね、マシンを作る材料が海の水から少し採れたよ。もっと採らないと灯り200個がまだ手付かずだからねー。あとのは作り始めてるから5日もあれば大丈夫だよ」


「そうか。ナノマシンの材料か。鉱石も聞いてみるか?」

「鉱石って高かったよねー。欲しい材料なのか見ないと分かんないし」

「むぅ」


 西の避難民の生き残りも近々引き取る予定だしな。相談してみるか。


「ちょっとビクソンさんのところに行って来る。留守番は頼むぞ」

 俺は街へぶらりと出た。





 ビクソンの店は女神像の広場をはさんで向こう側の8軒目。とは言えこの辺りの建物が異様に大きいので3000メルくらいは離れている。

 石造りの建物が立ち並ぶ20メル幅の通りを北へ進む。通り沿いに窓や扉の修理をしている一軒が目に付いた。


「虫に破られたようだな。ここは何を扱っているんだ?」

「ここは毛皮を商っているんだが、肉が少し置いてあったんだよ」


「なるほど、それは災難だったな。猟師の持ち込みかな?」

「ああ、そうだよ。ここまで持って来てくれるんだ。そう邪険(じゃけん)にもできないんでな、高くは買ってやれないが、肉の他にも薬草だの珍しい石だのをよく引き取るんだよ」


 鉱石があるかもと思ったので寄ることにした。作業の邪魔(じゃま)になってはいけないと言うので隣の扉から入ると、店内を通って商品とは別の倉庫のような場所へ案内された。


「この辺りの棚が石だよ」

「ほう。これはまたずいぶん数があるな。こんな大きいのも運んでくるのか?」

「いや、ほんとに。そこは確かによくぞまあ、と正直感心しておりますよ」

「あとでうちの者を連れてくるので、欲しがる物があったら相談に乗ってもらえるか」


「はい。わたしはアルトンと言います」

「俺はガルツだ」

「あ、これは虫退治をしていただいた。

 分かりました。ガルツさま、お待ちしております」




 ビクソンの店は相変わらず人が少ない。何組も店の者が交易と称して行商に出ているからな。

「こんにちは。ビクソンさんは居られますか?ガルツと言います」


「あいにく主は、他出(たしゅつ)しております。わたくしが代わりに(たまわ)ります。ホーセルと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」


「早速ではありますが、ご用件をお伺いしても?」

「実は早急に鉱石が欲しくてな。在庫があるか聞きに来たのだ」

「鉱石でございますか?多少はございますがどのような物をお探しでしょう?」


「それなんだが、俺では分からんのだ。後でうちの者を連れてきて見せようと思う。どれくらいあるか見せてもらっていいか?」

「はい、どうぞこちらへ」



 在庫はそれほど多くなかったが種類はかなりあった。欲しいものがあったら今後は頼れそうだ。アリスを連れて来よう。

 また来るよと告げて店を後にした。






「今戻った。うん?カジオ、アリスはどこだ?」

「アリス嬢ちゃんでしたら、台所に何か取りに行ってやす」

「おお、そうか」

台所へ行くとアリスはカネツキーの調整をしているようだった。


「アリス。石を見に行こう」

「はーい。石ってー?」

「鉱石もあるんだが河原に落ちてるような石もあった。まあ見てみろ。さあ行くぞ」

「えっ、えー?えぇぇーーー?」




 まずアリスを毛皮商人の店まで引っ張って来た。


「さあアリス。この石を見てくれ」

「えっ、えー?えぇぇーーー?」

「いや、それはもういいから……」

「だって……この石って……」


「なんだ?どうした」

「きれい……」


「はあ?」

「とっても。きれい」

「……で?使えるのはどれだ?」


「使うって?え……こんなきれいなのに?」

「あのな。マシンの材料だろ。使えるのはあるのか?」


「むぅーーー。ない!

 でもこれ欲しいっ!」

「はぁ。分かった。3つだぞ」

「えぇーーーー。たった3つ……ガルツさんの……ケチ……」

「あー。分かったよ。5つだ」


「くっ!ケチは治らないか。むぅぅぅぅーーー、これと………これ。あとはこの黄色。

 悩むーーー、えーい。これにする。あと一個。

 むーーん、むぅー、うーん、……これにする……」


「デカイの行ったな、おい。

 すまんがいくらになる?」


「いえ、とんでもない。これほど思ってくださるお客様は初めてですよ。ぜひ今後もご贔屓(ひいき)にお願いしたいものです。全部で2000シルでいかがでしょう?」


「あぁ……それで分けてくれ。俺もこいつがいないと立ち行かない。必要経費って奴だ。もう一軒行くところがあるから石は帰りにもらうよ。もっと稼げるようになったらまた頼む」

「はい、ありがとうございます。どうぞご贔屓に」




「よし、アリス。次行くぞ。ビクソンのとこだ」

「あー、交易の人ねー」




「連れて来たぞ。鉱石を見せてくれ」

「これはガルツさま。お待ちしてました。先ほどは留守にしており失礼した。どうぞこちらでご覧下さい」


「ああ、ビクソンさん、お戻りでしたか。こちらこそ連絡もなしに伺い、失礼しました」

「どうでしょう、こちらが当店で扱っている鉱石のあらましです」





「あっ!ガルツさん、これ!」

「きれいとかぬかすと張り倒すぞ?」

「いい材料が採れるよー。こっちもいーね。ここにあるのだと6種類要るね。

 あれ?これしかないのー?」


「ああ、すみません。今ちょうど数を置いてなくて。そちらはお持ちになって結構ですよ。これから仕入れますので、どのくらいお要り用なのか教えて頂けませんか?」


「どうなんだ?アリス」

「そうだねー。この大きさだと20個ずつ?これだけは50個欲しいかな。今の感じで作るなら?」


「そうか。いくらになる?」

「そうですね。16万2000シルというところですね。ただ日数が2月程かかります」


「むぅ。どこまで取りに行くんだ?俺たちで行って来るってのはありか?」


「それほどお急ぎですか?では特急便を仕立てます。明日の出発で3週間ではいかがですか?値段は据え置きます。ご自身で行ったとしてもこれ以上の短縮は難しいと思います」


「アリス、灯り200個はなんとかなるのか?」

「ああ、こちらの発注分は120でしたね。そうですか。うちの納品は先日もお話した通り遅らせても構いません。トルケスにも言っておきますよ」


「ああすまん。他は間に合いそうなんだが、灯りの材料がな。同じ材料で試作中のものもあって行き詰まっていたんだ」

「ガルツさん。この石があれば200はなんとかなるかも。試作は無理っぽいけど」

「アリスちゃん。わたしはその試作という物に大変に興味があるよ。うちの分を半分の60にしてでも是非お見せいただきたいが、どうだろうか?」


「灯り60個分のマシン……やってみる。3日くらいかな?」

「では5日後にまた伺わせて貰います」

「ああ、よろしく頼む。あと、塩って売れるか?」


「塩ですか?もちろん売れます。いかほど用意できるのですか?」

「まだ試しだからな。量は少ないがみたことがないほど真っ白だったよ」

「それは……左様ですか。伺う楽しみが一つ増えました」


 アリスが試作と言ってるのは小さいバッテリとキューデンユニット、伸縮する梯子と槍のことだ。どれもナノマシンがないと動作しない。それを作る専用道具を作ると言うのだ。

 アリスでなくともナノマシンでナノマシンを作れる道具と言うややこしい話だが、それがあればアリスの負担はかなり減らせる。


「ちっちゃいバッテリの道具が先かなー?バッテリにはデンキを出すとか仕舞うとかの区切りはないんでしょ?

 ……ケースって言うのとブンシクミカエのマシンを作って、デンキョクとセルロースと水だっけ、組み込んで密封すればいーんだよね?

 ……あ、設計図どおりに……」


 そこまで言ってアリスが天井を見上げ、何やらぶつぶつが始まった。お茶でも淹れるか。


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