表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第3章 ハイエデン
27/157

7 気鬱・・・パック

 これまで:ハイエデンの街に本拠を置く事にした一行は元ドルケルを労働力として押さえ、商品の量産態勢も出来つつある。不法居住区と呼ばれる土地のガレキ片付けも進んできている。そんななかパックは買い出しを頼まれていた。

 午前中は緊急買い出しでケビンとカジオに連れられて、畑やら街やらを回って2日分の食糧を調達して来た。二人の方がこの街には詳しいから僕の役目はお金を払うだけだった。


 最初は少し心配だったけどアリスのボタンは強力だし、もともと真面目な人だというのは本当で、どこでどう踏み外しちゃったんだろうと首を傾げるよ。まあ、僕も人のことなんて言えない。あそこでガルツさんたちに拾われなければ死んでいた身だもの。


 午後は3人でミットがやっている敷地の片付けに合流だ。木の回収は終わったと言っていたけど細かいのと骨がまだまだ有るので、骨ブロックになったやつを手押し車にどんどん放り込む。腰が痛くなったらトンボを持った人と交代して奥の方から片付けて来る。

 たったの3日でこの広い土地の1/3が終わる。明日は間違いなくお墓を建てて片付けが終わるよ。アリスはすごいな。


「休憩ー。お茶にするよー、戻ろうー」


 ミットが声をかけた。


「「「へーい」」」


 嬉しそうにみんなが返事を返す。


「休憩に来たよー。あんたらもお茶にしよー」

「「「へーい」」」


「でー?アリスー、どんな塩梅(あんばい)ー?」

「ベルトをつくる道具ができたよー。注文品の分はあと灯りを作る道具だけ。でも家のベンキーを早く作りたい」


「海水はどーお?」

「塩がいっぱいできたよ」

「ねー、ケビンー。塩って売れるー?」

「売れますよ、ミット嬢ちゃん。安いですけど」


「安くて結構ー。元値がタダだもーん。貧乏人が買えないなんてことがないようにやっすく売らなきゃねー」

「ミット嬢ちゃん、商人に聞かれたら怒られますよ、それ」

「そーなの?困ったものねー」


 そうか、商人と話をするってことは相場を覚えなきゃいけないんだ。

 その上で貧乏な人にも買えるようにできたらいいな。僕の家だって底辺集落なんて言われて配給だって最後の方で………

 母さんどうしてるかな………


「パックー、あんた帰って来てからおかしいよー?何かあったのー?あ、なんかホームシックー?」

「うーん、それもあるかな?」

「それもってー?なんか不満ー?」

「僕もよくわかんないよ」

「そっかー。ま、ゆっくりやんなさいー」


 ミットはよく見てるな。僕なんて大して役に立ってないのに、なんで気にかけてくれるんだろ?




「さー、あんたたちー。もう一踏ん張り行っくよー」

「「「「おう」」」」


 片付けの続きが始まった。僕が最初に骨ブロック拾いを買って出た。体重がないとトンボは引きにくいっていうこともあるし。


「パックさん、代わりやすぜ」

「ああ、ありがとう」


 立ち上がって見回すと半分を過ぎたくらいか。もう少しだね。トンボを持ってどんどん引き集めて行く。どうしてもちょっと遅れ気味になるけど、両方の隣が広めに取ってカバーしてくれる。何にも言わないけどみんな気にかけてくれるのが分かる。なんで僕なんかに………


 黙々とトンボを引き続けているとミットの声が響く。


「終いにするよー。手近の分だけ積んじゃってよ。道具もねー」

「「「「へーい」」」」


 戻って夕飯を食べたあとは会議だ。



「あたしの方は注文品を作る道具が全部揃ったよ。トーメイ板は時間がかかるけど、他は3日もあったらだいたい揃うんじゃないかな?明日はベンキーを揃えちゃうよ。あと海水のブンセキー?が3層まで行ったよ。欲しい材料が採れそうだって」


「あたいの方はパックが戻ってからいい調子で進んでるー。一人しか人数が増えてないのにねー。なんかちょっとづつ動きが違うんだー。なんでだろ?

 明日の昼前に片付くと思うよー」


「僕は昼前は買い出しに行ったけど、店も知らないし相場も分からないから、ただ付いて行ってお金を払っただけだった」


「ふーん?本当にそうか?俺はケビンに話を聞いたが、値切り交渉をしたらしいな」

「え、あれはあんまり高いことを言うから………」

「他には転んだ婆さんを道の脇で休ませたって?」

「そんなの当たり前だよ………」

「みんなそれを聞いて嬉しかったって言ってたよ。あたしもちょっと鼻が高いもん」


「でも僕は………」

「何を腐ってるのか知らんが、明日ミットの方が片付くんなら、午後は休みにしよう。

 ただゴロゴロしてもしょうがないから、賞金を出して模擬戦だ。6位までは1人10000シル出すぞ」


「「わーい。ボッコボコにするぞー」」

「おい、ちゃんと手加減しろよ!

 でと、俺の方はサントスさんに料理人を紹介してもらった。面接で一人決めたんで明日の昼はご馳走だ。あと二人は欲しいよな。食糧の配達は明後日からだな」


   ・   ・   ・


 翌日は雨だったけど、それほどひどい降りじゃないんで敷地の片付けはやることになった。午前中の休憩には終わってしまった。なんなんだこのペースは?もう付いて行くのがやっとだったよ。


 休憩の間に雨が上がったので片付け部隊で模擬戦会場を作ることにした。アリスが8本の杭をぐるっと建ててロープを1メル20の高さに一本張った。この10メル四方、8角形の中が試合場だ。

 武器は全部木製。ミットとアリスは不利だと思うんだけど、ひどく楽しみにしている。

 ガルツさんは希望があれば出るって、どう言うことだろう?


 アリスが周りにベンチとテーブルをいくつも作っている。アイゼルさんやサントスさんたちも呼んだらしい。準備もできたところで、会場に全員集められ、ガルツさんがベンチの上に立って声を上げた。


「ちょっと話を聞いてくれ。今日、ここに住んでいた人たちの遺骨を、集め終わったことは聞いていると思う。これから略式ではあるけれども、そこに慰霊碑(いれいひ)を作り納めたいと思う」


 指差す先を見るといつのまにか石の箱ができていて、中に骨ブロックが積み上げてあった。この土地の一番海に近く見晴らしの良い場所だ。


「西の故郷に帰りたかっただろうに、さぞ無念だったろうと思う。せめて俺たちで安らかに眠ってもらえるように祈ろう」


 ガルツさんが鉢金を外し右手を胸に当てた。そうして目を閉じると静かに首を垂れ、祈る姿勢を見せると集まった者は皆それに(なら)い、しばしの静寂に包まれた。


「さて、それはそれとしてだ。この街の人達も千人から亡くなったと聞く。家もかなり壊れたそうだ。俺はその片付けをしたいと思っている。みんなの力を貸してもらいたい。

 そして、ここに住んでいたものたちが100人近く生き残ったと聞いた。俺は彼らもここに引き取って、いつか西の故郷へ帰してやりたいと思っている。まあそれについてはゆっくり考えてくれればいい。

 今日は景気付けもあってな。模擬戦をやるぞ。上位6人に俺が10000ずつ賞金を出すぞ。腕に覚えのあるやつは参加してくれ。俺は希望があれば出るが賞金は取らないからそのつもりでやってくれ。

 さあ、誰からだ?」


「俺は出るぞ」


 ケビンがきたね。じゃあ。


「僕も出るよ!」

「あたいたちも混ぜてねー」

「あっしもやりますぜ」カジオが名乗りを上げた。

「じゃあ、俺も出よう」

 ヤングも参加、と。他にユーラスとワイズが参加し8人になった。


「ようし。くじ引きだ。恨みっこなしだぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ