6 受注2・・・マノさん
これまで:ハイエデンの街に本拠を置く事にした一行は「食住」の充実を図る。元ドルケルを労働力として押さえ、商品の量産態勢も出来つつある。そんな中ハイエデン商人のトルケスとビクソンが注文を持ち込んだ。
早速注文が入りました。わたくしが万全であればなんということもございません。ですが今の状態ですとあまり余裕はありません。
ガルツさまもご心配なようでアリスさまに聞いています。
「で、やれそうか?」
「トーメイ板は1日6枚は作れるね。カップ200、櫛120、髪飾り80、ブローチが80。
この辺は専用道具の試作ができたよ。
ナイフ50本、ベルト80セットは種類が多いからね、どうしようかな?
灯り200個もナノマシンが要るね。マノさん、マシンの材料はやっぱり箱紐なのー?」
《海の水はいかがでしょう》
「ウミノミズー?」
「アリス、海の水がどうかしたのか?」
「それってなーに?」
「ああ、前に話しただろう、しょっぱい水溜り」
「ふーん、おっきい水溜りならそこにあるね?」
「あれが海だよ。ものすごく塩からい水だ。海水だ」
「あ、カイスイーって海の塩からい水かー」
「なんだよ?どうしたんだ?」
「マノさんのマシンの材料が採れるかもって話だよ?」
「ほう。どうするんだ?」
「さあ?これから聞くの」
《やっと通じました。では海水を採取致しましょう。成分分析ですのでキチン質で内径2セロの管を作成して深さ200メルごとに5層程海水を吸い上げます。1回目に必要な管は500メル、先端にカニ型マニピュレータを配置して海底を自走致します。
管を牽引するには大きな重量が必要になりますので、逆に地上より材料を海底に送り海底で管を作成することで延伸して行きます。マニピュレータは言わば案内役兼フィルター役ということでございます。
鉄を2キル、キチン質のブロックを一つご用意ください。この場所より海底200メルまでは斜坑を掘削します》
「……大ムカデの殻と鉄が2キル要るって」
「おう、持って来てやる。海水を汲むんなら塩も採れるか?」
《大量の塩を戻す手間が省けて助かります》
「……なんか塩を海に戻さなくていい分、助かるって」
「ほう?そう言うものか。塩も売れるかな?」
「今度聞いてみようよ。こっちは時間がかかるみたい。虫の殻のナイフが15本。これの作成道具を作るよ。材料は虫の殻だけだね。これも長さと色、形を選んでやらないといけないね。
次はハサミ40個。材料は虫の殻。長さに形と色。
白い紙が1000枚。材料は木質。大きさを何種類か選べればいいか。
3色ペンが200本。材料は木質と鉱物が少々?」
《ペンのインクはこの土地の土から3色合成可能です。ペン先にごく少量の鉄が必要でございます》
「ここの土でも行けるって。鉄がほんの少し」
ミットさまが皆に木質をピピンに運ばせ戻って参りましたね。
「アリスー、いっぱいになったから下ろしに来たよー。調子はどーお?」
「注文が来たから、作り始めたいとこだねー。
お茶にしよっかー」
「いーねー、お茶お茶ー。ほら、みんなもおいでよー」
「へーい」「ごちそうさまです」
「俺が沸かすよ。湯呑みを頼む」
「「はーい」」
「ハセル、お茶うけに熊の干し肉を薄く切ってくれないか?」
「へい。お任せ下せぇ」
「お湯がパパッと沸いていいものだな。注いでやるから湯呑みを出しな」
「へい、お願いしやす」
「ほらほら、順番だよー。焦んないのー。ちゃんと回るからー、んっとに手がかかるねー」
「へへ、ミット嬢ちゃんにあっちゃ、あっしらもかたなしだ」
「でー?何人か回そーか?こっちは急がないんだしー」
「そうだな、6人かな?」
ミットさまが帰ってくる途端に賑やかになります。
「うん。手伝ってくれると助かるよ」
「ふーん。それじゃここからこっちは手伝いなー。あとはあたいと片付けの続きだぞー」
「へい」「分かりやした」
「しかしこの熊の干し肉は美味いっすね。固いのがまた薄く切ったから、いい歯応えで」
「だから飯にはちょっと具合が悪いんだ。今までお茶はあんまりやらなかったから残ってたのさ」
「で、あっしらは何をしたらいいんで?」
「順番に行こっか。カップから行くよー。あなたにお願いするね。名前は?」
「ハンスでさ」
「カップの注文表だよ。字は読める?」
「あー……これなら…読めやす」
「うん。これがカップを作る道具だよー。みんなも見ててねー。使い方はよく似てるからー。
まずここに使う材料が書いてあります。骨ブロックと熊の毛だね。次に形と色と大きさを選びます。注文表によると最初は猫さんカップ色は赤、子供用ですね。
この小さな窓を指で左右に動かすと絵が変わるよ。ほら」
「あ。本当に変わりやした。うーんと……これでやすかい?」
「正解ー!みんなにも見せてあげて」
「ほら、こうすると」
「おお、絵が変わるんでやすな」「なるほど」
「はーい。次行っくよー。上に材料を置きまーす。何を置くのー?」
「骨ブロック。これでやすか?」
「はーい。正解ー」
「それと熊の毛。どれだろ?」
「熊さんの毛はこの箱に入ってまーす。
少しでいーよー。一緒に上に置いてー、始めのボタンを押すと下からカップが出てくるよー。はい、押してー」
「お。おおお。赤い小さな猫カップ!すげぇ」
「よくできましたー。でー、ここにペンがありまーす。注文表にはこれが10個と書いてあるので、今1個作ったから横線を1本引きます。こんな感じー。線は4本まで横線5本目は4本の横線に重ねた縦線を引きまーす。5個作ったら、5本の線がひと塊になるので数えやすいでしょう?知ってる人は笑ってねー」
「ほー、そんな書き方があったのか」「知らんやった」
「ふーん?次行くよー。ハンスさんも見ててねー」
「へい」
「次は櫛だよー。これはあなたにお願いします」
「あっしはジャグでやす」
「ジャグさんね。これが注文表。材料はさっきと同じ。使い方も一緒。やって見てー」
「へい。黄色い大人用の四角い櫛が5つでやすね。えーっと、これかな?」
「正解ー。他のも分かるー?」
「へい、これが丸い櫛、色もたくさんありやすね?」
「うん。作ってみて」
「へい………おお。出て来やした!」
「よくできました。次は透明板行くよー。あなたにお願いね」
「あっしはテモンドと申しやす」
「テモンドさん。今度はちょっと違うのよー。
ひとつ目ー。木を粒々にしまーす。このブラシを見てください。ここに 1 粒やめ 2 粒始め 3 撒く って書いてありまーす。読めますか?」
「へい、読めやす」
「これはボタンが一つっきりですのでこの数字の分ボタンを押します。テモンドさん袋に木質ブロックを入れて下さい」
「こうでやすか?」
「はい。ではこのブラシを持ってください。これからこのブロックを分解しますが、分解する粉がここから、ブラシのボタン側の木口から出ます。まず撒くをやってください」
「へい、こう向けて……いいですかい?」
「はい。大丈夫ですよ」
「で、ボタンを3回」ポチポチポチ
「次に粒始め、2回ですね」
ポチポチ
「この分解は時間が掛かります。このブロックの大きさだと3ハワーから4ハワーでしょうか。それで分解を止めたい時は 粒やめ 1回です。押してみてください。今お話している間にできた粒ー。見えるかなー?」
「あ。これですかい?3粒しか有りやせんぜ?」
「そーですね。で、今止めたので分解はしてません。2回で粒始め、押してください。
はい。ここは終わるまで放っておきましょう。
こっちに粒になったものがありまーす。一昨日パックがやってくれたものです。これが板を作る道具です。この赤いところから板が出て来ます。注文表を見てください。厚さ3/5セロ3メルが20枚です。まず漏斗にこの粒を7分目くらい入れて下さい。粒が小さいので溢れると厄介ですよー。入れたら手でザッと均して、こっちの操作板に手をかざしてみてねー。どーお?」
「1と3が光ってやす」
「書いてある通り上が長さ1メル。下は厚さ3/5セロだよー。今設定されているボタンが光ってまーす。動かす前に必ず確認するんだよー。誰かがいじったりするかもだからねー。
では注文表に合わせてねー」
「へい。注文は5メルの3/5セロが20枚でやす。5と3でやすね?」
「正解ー。始める前にー、この赤いところから透明板が伸びていくんだよー。どうなると思うー?」
「途中に何かあると大変でやすね」
「そうだね。ちょっと印をしとこーか?
ここが1メルだよー。2メルー。3メルー。4メルー。5メルー。邪魔物がないようにお掃除をお願いね」
アリスさまはブローチと髪飾りの作成をマックスさまとヤングさまに割り当てていきます。荒くれ者の割に物覚えが良いようですね。
説明が一段落したところへパックさまたちがようやく戻って参りました。カゴにも手押し車にも色々な食料が満載でございますね。
「アリス、ご苦労様。たくさん買って来たよ。美味しいものを作るよ」
「わー。たっのしみー!あたしももうちょっと頑張っちゃう。道具作りは3色ペンと軽量ナイフからだったね。
マノさん、折り畳みナイフはサイズと色を変えたいね。材料は鉄と皮。これも軽量版があってもいいかも。設定表示に材料も入れちゃう?」
《材料ごとに使うナノマシンが変わりますが、デザインが共通なのはメリットですから大丈夫でございます》
「やったー。じゃあ軽量ナイフの道具に戻って鉄とセラミックを入れちゃおう。そーするとー、前に作ったバネーで飛び出すのも作れるようにしとこう。マノさん、材料に皮もいれていいよねー。
次はハサミ40個。材料は虫の殻。
色とサイズと形、柄は全部軽量版にしよう」
準備していたミットさま台所から顔を出しましたよ
「みんなー、お昼にするよー」
「もうちょっとなんで待って下せぇ」「こっちもでさぁ」「すみません」「………」
「あんたたち、決まりがついたら手を洗ってから来るんだよー」
「「「「へーい」」」」
昼食は買って来た串焼きとパン、手早く作ったスープですね。皆さん美味しそうに食べておられます。こういう時はわたくしも少し羨ましかったりしますね。
水深200メルの海底まで掘削が終了しました。配置していただいた材料でマニピュレータと筒を作り送り出します。到着までまた待ちになりました。
「ミットー。もう3人引っ張っていーかな?ナイフと白い紙とペンの道具ができたの」
「いいよー。木は終わったしー。奥の方からトンボでこっちへ細かいのを引っ張って来てるんだー。どんどん近くなって、残っても楽になるからー」
「ありがとうね」
「なーに言ってるのー。あたいこそありがとうだよー。毎日楽しーねー」
「ほんとにそーだねー」




