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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第3章 ハイエデン
24/157

5 ドルケル 2・・・マノさん

 これまで:ハイエデンの街に本拠を置く事にした一行は「食住」の充実を図る。向かった女神像広場の市で遭遇した「ドルケル」という地回りをガルツ達は壊滅させて、捕虜にして連れ帰った。

 ガルツさまが労働力に仕立てるとおっしゃった、ドルケルの子分さま達について、間も無く昼食という時間ではございましたが、犯罪者予備軍を放しておくのも(はばか)られ、精神制御ユニットを作成することとなりました。


 設計図は3種類ありますが一番簡易な物を使います。脳に向かって20セロほど侵入し56本に分岐する端子には、銀によるコーティングが必要ですがそう多くの量は必要ありません。


 一人ずつ呼んでいただき植付けを行います。植付けと除去にはかなりの痛みを伴いますので、まず横になっていただき、施術(せじゅつ)前に軽い電撃により意識を奪います。施術そのものは1メニと掛かりませんし、終われば痛みもありませんので覚醒(かくせい)していただき、次の方を呼んでいただきます。準備も含め30メニほどで13名の

 施術を終了いたしました。


 その効果といたしましては、悪意を伴う思考ができなくなる一点の制限と、本人の意に依らず迷い出てしまった場合に回収可能とするため、ボタン様の発信器だけでございます。

 他者によりこの発信器を引き抜かれた場合、精神崩壊を引き起こすと言うのが欠点と申せば欠点でしょうか。犯罪者の更生を目的としていますのでこの点はご容赦(ようしゃ)いただけるというのが設計の意図であったと………


[警告:この部分の記述は混乱しています。他のデータを上書きされた可能性があります]


 ………申し訳ございません。一部メモリに異常があるようです。

 バックアップを参照できましたら、お()びして訂正いたします。


 その間に彼らの名前だけ聞き取りが行われました。大男はケビン、案内の小男はハセルというそうです。


 さて、昼食は野菜が入手できたため皆様ご満足のご様子。新たに加わった13名に対し背負いカゴ、手押し車、分解ブラシの使用についてパックさまよりご指導があり、皆恙無(つつがな)く心得られたようでございます。

 昨日より分解の終わった材料とお(こつ)回収に荷馬車を引いたピピンと皆様がミットさま、ガルツさまに従って向かわれました。お留守番は今日もアリスさまとパックさまでございますね。


「アリス、まず何からやるの?」

「うーん、どうしよっか?

 伸びる梯子、小さいバッテリ、だったね。何をするにもバッテリだね」


《はい。ケースは耐蝕性(たいしょくせい)セラミックを使います。このあたりの土から必要とする99%が得られます。

 必要な特性を持たせるため亜鉛鉱石を添加致します。陽極に銀、陰極に銅を使用し導線の被覆(ひふく)に土から抽出したシリコン素材を使います。内部に木から抽出した純セルロースとアルカン制御のナノマシンを充填し酸素分子までの透過フィルターで蓋を致しますと完成でございます。

 充電時はセルロースに含まれる水分子を分解し、酸素を放出した残りで重アルカンを生成します。放電時は酸素を取り込み水分子にした後セルロースを生成します。ナノマシンの動作に発生した電力の一部を使用しますので、気温、湿度にもよりますが変換効率は80%程になります》


 (だ、か、ら、ただでさえ途切れて聞こえないとこ多いのに、早口でそんな言われてもわかんないって)


 アリスさまには新しく何か作成する場合、一通りご説明申し上げるのですが、ほぼ毎回ご機嫌(きげん)を損ねてしまいます。それでも鉱石が必要な事は伝わったようでございます。

 必要な成分を含む鉱石の映る網膜(もうまく)に赤い点を表示しますと、アリスさまにそれを選びとって頂けました。


《まずケースを作成致しましょう。

 パックさまに外から土を運び込んで頂き精製したものに、先程の鉱物より亜鉛を混ぜ整形致します。高圧縮を行った状態で組成変更を行いますと、250セッシドと言う低温で十分な強度と耐蝕性を持つケースが出来上がります。形状は直径2セロ長さ6セロの円筒形でございます。

 中は純セルロースと分子組換えマシンを入れ、電極を取り付けて蓋をします。受電側と放電側にそれぞれ被覆した導線を5メル付けます》

 小型のバッテリーは完成致しました。


 (じゃあ、他の道具にデンキーを分けてあげる仕掛けってできる?)


《放電側に給電ユニットを取付け致しますが、フィルターは上に向けてお使いいただくようお願い致します》


「あー、この色の違うとこを上にすればいーのね。そのキューデンってどうすればいいの?」


《これまで作成した道具についてはそばへ一晩置いておけばよろしいかと。

 続いて作成する密閉(みっぺい)型小型バッテリーについては端子をユニットの溝にお掛けください。

 サイズ及び原理は同じですが、容量を20分の1にし密閉式としたものを可搬(かはん)式バッテリとして作成しました。耐圧、対衝撃(しょうげき)のためケースの厚みは10倍、僅かな余剰(よじょう)空間を液体酸素の収納に充てております。円筒の片側に電極端子が付いております》


「まーたわかんないこと言って。梯子や槍はちっさいバッテリを入れた方が良いんだよね?」


《はい。これにより連続使用が可能となりますので伸縮制御ユニットを通して、どなたさまでも操作が可能でございます。作動原理につきましては内蔵するマシン群が外径を変更せず、厚さのみ変更するため円筒の長さが変わるというものです。

 梯子の方はと申しますと、踏み桟間隔の指定と伸縮長の指定で操作し、踏み桟の本数は変えずに余剰の桟木は全て足元に平に潰して集めるように致しました。伸長時は丸い断面に戻します。最長6メル30、桟木20本、収納運搬時は長さ50セロまで小さくできます》


「……長くできて、運ぶ時は小さくなるってことでいいのかな……」


 梯子の試作品は出来上がりました。


 (これも誰でも作れるようにできる?)


《マシン群作成のための材料が1番の問題でございます。この辺りですと候補は海洋資源でございます。ケースについては専用の道具をいくつか作成すれば量産可能でございます》


 (洞穴の箱紐(デンシブヒン)がもっと要るのね?)


《いえ。他に採取候補を申し上げております。海水の調査を提案いたします》


 (コーホー?カイスイー?チョーサ?テーアンー?………)

「もー。わっかんないし!

 あー、そうだ、水を使いたかったんだ。ねえ、井戸って作れる?」


《はい。地下の飲用可能な透水層まで穴を通せば出来上がります。土を周囲に押し固め組成(そせい)変更で強度を持たせればよろしいかと。水の汲み上げに関してはポンプの使用を推奨(すいしょう)いたします。飲用水の吐出(としゅつ)操作によりポンプが起動して吐出口より飲用水が出てまいります》


「場所はどこがいいかな?」


《馬車などの重量物の軌道下でなければどちらでも問題ございません》


「……あんまり踏まれたくないってことかな。バッテリの脇でいーか。ここに作ってくれる?」


《はい。では地下探査を開始します………

 地表下53メルに透水層(とうすいそう)がございます。飲用不可でございますので、探査を続行します………

 地表下136メルに飲用可能な透水層がありました。こちらから原水を採取いたします》


「もう見つけちゃったの?台所とお風呂で水を使えるようにしたいね」


《了解致しました。内径3セロの配管を行なって給水いたします。吐出位置についてはご指示ください》


「トシュツ……水を使う場所ってこと?台所へ行くね。パックー、水を台所で使えるようにするから見に行こー」

「アリス、台所って言ってるけどあそこ、なんにもないよ。流し台くらい欲しいよね。あとは調理道具としまう場所、食糧庫とか」

「うーん、そうだね。ガルツさんに相談してみるか。バケツとかに水か汲めるようにこの辺に水を出せるようにしようか?あとは相談して決めよう」


《準備が終わりました。レバーをゆっくり持ち上げてください》


 アリスさまが水栓(すいせん)のレバーを上げると水が出て参ります。カップを出して出た水の吟味(ぎんみ)を始めました。

 飲用ですので濾過(ろか)処理が標準となっておりますが、繊細(せんさい)な風味まで判定できるわけではございません。どのような評価を頂けるでしょうか。

 ひとつ頷いておられます。パックさまも納得のご様子、ご希望に沿え何よりでございました。


「次はお風呂場だね。おっきいお風呂がいいな。みんなでわいわい入らなくっちゃ」

「みんなでって言ったって女の子はアリスとミットだけじゃないか。ここは女の子のお風呂にして別にもう一つお風呂場を作ろうよ。今日からここに住むおじさんたちも増えたんだし」


「あー、確かにあのおじさんたちとは入りたくないかも。寝るところもいるんだよね?」

「それはそうだろう。ガルツさん、仕事してもらうつもりらしいから」

「じゃあ隣にもう一軒建てちゃう?ベッドと食堂と、トイレとお風呂付き。あと何か要るかな?」


「洗濯場とか?」

「あーそれはないと困るね。臭いのやだし」

「ガルツさん、木をたくさん持ってきてくれるといーな。パック、頼んでいーい?」

「ああ、分かった。行ってくるよ」



「さて、お風呂かー。お湯を沸かすのが結構大変なんだよね。あ!マノさん、温泉ってできる?」


《温泉でございますか。この惑星も地殻(ちかく)活動は活発ですので、深く掘れば熱源は必ずございます。むしろ湯温の調整と含有成分の調整が難題かと存じます。ともかく、出たものを見て判断する以外に方法はございません。探査孔の掘削を開始します………

 先ほどの水源を突破しました。さらに深部を探査中です………

 1000メルを越えました。地中温度が上昇しています………

 1260メルで温水層に遭遇(そうぐう)しました。地表までの行程で熱量損失が見込まれるため保留とします。さらに深部を探査します………

 3870メル、温水層に遭遇しました。こちらも保留します。さらに深部を探査します………

 5790メル、高温の滞水層に到達。保留分と合わせて汲み上げ設備を構築中です………

 湯温保持のため一定量を常に湧出させる必要がありますが、環境保全対策として余剰となる分を各温水層に還流します。別途還流孔(かんりゅうこう)の掘削を開始します………

 3種の湧出(ゆうしゅつ)配管を密着させ湯温の平均を図ります。湯温の1次安定まで1ハワーほど必要と思われます。湧出推定湯温は55セッシドでございますので、入浴用には水を加える必要があります。なお、配管は高断熱素材で地層に対し断熱しておりますが、長期に渡る場合には熱漏出(ねつろうしゅつ)は避けられません。因って、湯温も徐々に上昇いたします》


 (はぁ……相変わらず何言ってんのか分からないけど、お風呂に入れるのは1ハワーよりあとってことかな?)


   ・   ・   ・


 ガルツさま、ミットさまが骨のブロックと木質ブロックを大量に荷馬車に積み戻って来られました。男たちが1本ずつ木質ブロックを担いでいます。

 骨は近くにかためて降ろしています。


「こいつらの宿舎を建てるんだな?左奥に頼むよ。この辺りだな。

 そうだな2段ベッドと小テーブル椅子付きの個室を10部屋、広めのリビング、風呂、便所、食堂くらいか?台所も要るか」


 そう言いながら地面に線を引いていきます。


《引かれた線が(ゆが)んでいますが、概略(がいりゃく)は分かりました。

 アリスさまの目に完成図を投影します》


「……線の歪んでるとこは勝手に直すって。ここに5個置いて。次はここ、こっちも。あとは線の通りに置いていってね。あ、そこ3個追加。んーっと、こっちも3個追加。こんなものかな?」


《はい、建物の分はよろしいかと。家具も一緒に作りますので各部屋にもう5本置かせてください》


「……カグー?部屋に5本づつ増やせって」

「おう、おい、運べ」

「へい」



「じゃ、いっくよー!」


 アリスさまが歩き回りながら配っていただいたナノマシンに指示を送ります。まず耐蝕防腐加工の基礎部分が出来、上へ伸びると床を一面に張る間にも柱が伸びて行きます。壁となる箇所に筋交(すじか)い、さらに上に屋根が広がって行きます。板壁が次々と貼られ外観は出来上がりです。地下では給水管と給湯管、電線ケーブルが伸びて行っております。


《アリスさま、中の家具をどうするか見ていただきましょう》


「……中で家具を作るよ。付いて来て」


 部屋割は大男のケビンさまがまとめ役として一人で一部屋使い他は気の合う者で2人1部屋、3部屋は予備ということになっている様でございます。奥の予備部屋から2段ベッド、小テーブル、椅子を2脚、タンス、物入れを2組作り、皆に見ていただいてアリスさまがご希望を聞かれます。


「こんな立派な部屋を頂けるなんて本当に良いんですかい?前のとこは雑魚寝(ざこね)だったんでありがてえ」

「ふーん、そっかー、あそこに30人だもんねー。それはきついわ。あたいは6人だったけど、しんどかったよー」

「ミット嬢ちゃん、6人って?」

「あー、あたいは孤児院にいたんだー」


「そうでしたか。ご苦労なさったんですね……」

「ほらー、カジオー、しんみりしないのー。泣き虫かー。次行くよー」


 割り当てのある部屋のベッドには発泡材(はっぽー)で掛け敷き枕毛布の寝具一式とクッションを作りました。

 特に要望もないままリビングに参りました。

 5人掛けのソファを向かい合わせに置き間に低い小テーブルを2台、2人掛けのソファを2台起きました。壁に掲示板と飾り棚を付けました。


 次は食堂でございます。大きな10人掛けテーブル2台と積み重ね出来る座面、背もたれにクッション材付きの椅子20脚、食器棚、大きな掲示板、飾り戸棚を作りました。

 台所は調理台と流し食器棚、食糧庫、調理器具棚を配置致しました。

 アリスさまのご実家では台所は土間でございまして、土を焼き固めた(かまど)に鍋を載せ、下で薪を燃やして煮炊きをしておりました。先に作りました母屋の台所も床を張ってしまったため、未だ手付かずであることにわたくし、ここで気が付いたのでした。

 アリスさまもお悩みのご様子です。


「マノさん、かまど、どうしよーか?」


《ありがとうございます。わたくしから申し上げられず申し訳ありません。火を使わない加熱器具がございます。材料がこちらにありませんので後ほど作成致しましょう》


「なんかね、鍋の煮炊き用にカネツキー?作れるって。あとで作るねー。お風呂に行くよー」


《まず床と壁、天井まで防水しなければなりません。強化済みとはいえ長期には腐ってしまいます。耐水性に優れたキチン質を利用させていただきます》


 お願いするとパックさまが大ムカデの殻を運んでくださいました。裏面に2セロ厚の硬質発泡断熱材(ハッポー)を付けた複合防水材を全面に張りました。

 色の希望を頂き床を芝生の様に壁の西面にこの場所から見える山を、東面に同じく女神像と海を、天井に青空に浮かぶ雲を少々描かせていただきました。湯船は木の一体成形で3セロ厚、長さ5メル幅3メル。洗い場は7人掛けでございます。桶と椅子を7組置きました。


「お風呂はお湯がこの赤い輪っか、水がこの青い輪っかを回すと出てくるからいい温度に調節してね。洗い場も一緒だよ。桶にお湯を作ってそれで洗ってね。石鹸は後で持ってくるから使ってね。

 洗濯はこのお湯で洗濯すると生地がどんどん黄色くなるから水で洗うこと。冬はお湯を別の桶に汲んで置いて、手をあっためながらやるといーよ」


 脱衣所にはカゴとカゴ棚を作りました。タオルも2本ずつ渡す約束をアリスさまがしていました。


「こんなとこか?何か不自由があったら言ってこい。出来るだけのことはしてやる。今日はこれで終いにするから、部屋とかこっちのことをやってくれ。晩飯の支度に手伝いがいると助かるぞ」

「ミットー、石鹸(せっけん)とタオル出してあげて。あたし向こうの台所をやっちゃわないと」

「アリス。俺も手伝うぞ」



 母屋の台所も彼方(あちら)と同じ様に戸棚、食器棚、調理台、流しを作りました。電子部品の分解品から必要な物を選び設計図137R番に基づき3口の加熱プレートを2台作ります。筐体(きょうたい)をセラミックで形成しケーブルをつけて試運転いたしましょう。


《アリスさま、そういえば鍋が鉄鍋一つしかございません》


「ガルツさん、鍋を作らなきゃ」

「あー、これ一つっ切りだもんな。あっちはでかいのが要るな」

「僕が武器の鉄を持ってくるよ」


 パックさまに持ってきていただいた金属でこちらで使う大鍋を作ります。流しに合わせて給水管を延長し、鍋に7分目の水を入れました。調理台の端に準備したプレートの上へガルツさまに移動していただき加熱を始めます。温度調節はきちんとできていますね。程なく沸騰(ふっとう)しましたので刻んであった肉や野菜を投入して蓋をします。もう何種類か鍋を作っておきましょう。

 わたくしの設計図集からランダムに抽出して5種類。寸胴鍋、フライパン、天ぷら鍋、中華鍋、蒸し器付き大鍋を作成してみました。


「ここはミットに任せるよー。あたしお風呂やってくるね」

「あ、ボースイだね、僕、殻を持ってくるよ」


 (あっちのお風呂は床が一緒だったから湯船の縁が高いんだよねー。マノさん、床下げちゃダメ?)


《大丈夫です。お掃除がしにくくなりますがナノマシンでおこなう分には何の問題もありません。では床下の構造から作り直します》


 浴槽部分の床を一旦取り除き地面の硬化を行います。一面に発泡断熱材(ハッポー)を貼り付け、パックさまが運んでくださった殻からキチン質を抽出し、床から壁天井まで複合材で張ってしまいます。


《お色の方はどうしましょうか》


「パック、色はどうする?」

「あっちのお風呂の絵は良かったね!こっちは夕暮れで行くのはどうだろう。同じ景色でも茜に染まった感じで。空は東側の半分は星が見えるくらいにしてみてよ」

「うん。やってみよー」


 この時間ですと山は背後から西日を浴びて木々が(かす)かに見え、左下に色とりどりに屋根を赤く偏位(へんい)させた街並みがぼんやりと見えています。その代わりに朱に燃え上がる様な空と覆う様に輝く山の輪郭(りんかく)線でございます。そのまま空は朱に染まる中、濃い朱の斑(しゅのまだら)となった雲。その東側は黒っぽい影を持って、中天を過ぎた辺りからどんどんと黒くなり(うっす)らと星が見えております。


 目を東へと移せば、右手から視界の1/3を覆う半島の斜面が夕陽を浴び薄く茜に光るその裾に、白っぽい茜色の女神像が若干赤の混じる青い海を背景に輝くようにどんと立っている。左を見れば一面の畑と海岸線がせめぎ合って左上へなだらかに霞んで行く、と言ったところでしょうか。


 屋根に置いたカメラのライブ映像に絵画風の効果を掛けて投影しただけでございます。さて湯船の設置でしたね。


「ふーん。マノさん器用だね」


 ギク、画像の効果処理がバレたのでしょうか。


「すごいな。僕がさっき外で見た風景だよ」


《ゆ、床は明るいクリーム色にいたしましょう。アリスさま、湯船は木製でよろしいですか?》


「そうだね。今はあまり時間をかけられないね。晩御飯がまってるしー」


 ハイハイ、そういう方でございました。では幅1メル半長さ3メルの浴槽を設置いたします。

 こちらも先程と同じ様に赤青のバルブによる温度調整になります。排水には肥料変換マシン、使用していない時はそのまま湧出(ゆうしゅつ)層へ戻す機構を付け、洗い場は4人掛け。

 こちらはシャワー鏡付きでございます。あとは桶と椅子を4組置いておきます。


 (後で気に入らなければいくらでも手を入れられる。今は夕飯よー)


《アリスさま、聞こえておりますよ》



 ケビンさまたちがやって来て向こうへ鍋を運んで行きました。こちらはいつも通り夕飯の後は作戦会議です。


「俺の方はもう1日かかかりそうだ。木質は今日運んだ分でやっと半分か。思ったよりも骨が多いしあちこちに散乱してるからなかなか集まらない。集まった木質を退けた上でもう一度集める必要がある。他にも何種類か分離している様だし、とにかくいっぺんきれいにした方がいいだろう」


「あたしは小さいバッテリの試作と槍と梯子が使えそうってことになった。カネツキーが2台できた。あと、お、ん、せ、んー!」


「そうか。ずいぶん頑張ったな。明日は昨日の商人が打ち合わせに来るぞ。注文数をまとめてくるから、それに合わせた量産態勢を作らなきゃならん。要るのは銀と銅だったな」

「そうだよ」


「人数が増えたからな。食糧も商人に頼まないと間に合わない。しばらくは商品量産しないと身動きが取れん。俺たちもやれることはやるがお前にばかり負担がいくことになる。頼むぞ、アリス」

「うーん、そっかー。頑張るよー」


「よし。せっかく掘ってくれた温泉だ。みんなで入ってゆっくり寝るとしよう」

「「「はーい」」」


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