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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第3章 ハイエデン
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4 不法居住区 2・・・アリス

 これまで:ハイエデンの街に土地を手に入れたガルツは商品の作成をアリスに依頼した。お試しで色々作ってみたのだが。


 虫の殻で試作したけど直しが出ちゃった。言われたところを直していると、サントスさんが何人か連れて訪ねて来た。


「おはようございます。この建物はどうしたんですか?こんなに早く建つなんて」

「やあ、おはようございます。まあその辺のことは追い追い説明しますよ。そちらの方々は?」


「昨日の品を扱ってもいいと言う商人仲間です。

 おや、これは昨日見なかったものですね。

 どうです?変わったものばかりなんですよ」


「あ、私はこのハイエデンで代々商家を営む、トルケスと申します。どうぞよしなに」

「私はこの辺りの交易をやっているビクソンです。よろしく」

「ワシはハイエデンの商家を束ねる商会長のローセルじゃ。話を聞いて覗きに来た。取引には口を出さんのでそのおつもりで」


「俺はガルツ。元は猟師だ。今はこの子達の保護者だな。こっちからアリス、ミット、パックだ。アリスとパックが13歳、ミットが12歳だったな。

 これから見てもらう品は店へ持ち込んで売り込むつもりだったんで、今はここにあるだけなんだ。注文があれば用意するので言って欲しい。

 あと、見ての通り俺たちは商人ではないので相場が分からない。お手柔らかにお願いする」


「用意するといわれるが、どちらかへ取りに行かれるのですか?

 ならば私どもの交易ルートでお運びしますよ」

「材料が不足するようならお願いします。当面はここで作ります。

 こちらに並べるので、まず見てやってください」


 何しろ種類が多いので一つ一つの説明やら感想やら要望の取りまとめが大変だった。紙とペン、紙挟みを出したらそれにも食いつかれ大騒ぎになったが、何とか注文を取りまとめた。

 金額はサントスさんが目を光らせて交渉してくれた。

 商談がまとまり二人が帰っていった。

 このおじいさんは何の御用だろう?


「いや、面白かったのう。これほどのものはワシも初めてじゃ。冥土(めいど)の土産にいい物を見せてもらったよ。

 何かあったらワシのところへおいで。力になるよ。ではまたな」


 ふーん?


「さて中立ちのお礼なんだが3割で良いか?」

「なんだって?ただ間に入っただけだぞ?街の恩人からそんなに受け取れるか!只ってわけにもいかんが、5分でたくさんだよ」


 ミットが割って入った。

「まーまー。お金のことでもめちゃダメよー。ここは中を取って4割でー」

「「増えてるじゃないか!」」


「あははー。2割にしとくー?

 それでねー、サントスさんー。ガルツがここに住んでた人たちを助けたいってー。家はあたいたちで用意できるけど、仕事がねー。

 片付けの仕事ってあるー?この手押し車と背負いカゴがあると、すっごく助けになると思うー」


「ここに住んでいた人たちを引き取りたい、ってことかね?で、仕事を作りたい。街中の瓦礫(がれき)の片付けはどうか?と。

 大ムカデが家の中で暴れて、つぶれかけているのが何軒もあるから、首長に話を通せばできるだろう。代金は街がどれくらい出せるか交渉次第だな。

 壊したものは捨ててくれってことになると思う。全く手が足りていないから喜ばれるよ。

 ここの他にも千人以上が死んだ。およそ人口の1割が大ムカデに殺されたんだよ。

 その仕事は膨大(ぼうだい)だ」


「そうですか。アイゼルさんと話し合ってみます。

 ところで野菜が切れてしまったんですが、どうしたら良いでしょう?」

「明日になれば市が立つよ。奴らは肉食だから野菜には見向きもしなかったらしい。

 女神像の前の広場に露店が出るんだ。いつもなら足の踏み場もないほど出ていたんだが、どうなるかな。

 さて長居した。また来るよ」


「ミット。俺たちはガレキ片付けの続きをやってしまおう」

「いいけどー、もうじきお昼だよー」

「あれっ、もうそんな時間か?じゃあ昼の準備をするか」

「あーい」

 お昼はガルツさんとミットで作ってくれるみたい。



 パックはやり方を色々考えてくれてたみたいで、

「アリス、僕はよく分からないんだけど、分けてできないかな。アリスのマノさんはまず撒いてやらなきゃいけないんだよね。

 で、次に材料を分けて粒々に固める。それはまた集めてやれば棒にしてくれる。

 最後に棒や粒から回収する」

「うーん………もうひとつあるの。撒いたマノさんに仕事開始って言ってあげるのがあるよ。困るのはおしまいって言う方かなー。あたしが撒くときはここまでって決めて撒くから。

 ねえパック。それって仕事を分けるってこと?」

「そうだよ。あの灯りがどうやって光ってるか分からないけど、光るのと押したら光れって二つ入ってると思う。そんなふうに仕事を分けて、それしかしなくていいってのを組み合わせるときっとできると思うんだ」


「灯りはねー。光りのもと、デンキーってゆーのを溜めるのも入ってるの。ずっとは光らないんだよ。あたしがデンキーを入れてあげないとそれで終わり」

「へー、そうなんだ………

 じゃあ、まず押したら命令をするやつはできそうかな?

 1回は集める。2回は分解を止める。3回は分解を始める。4回は撒くって感じでさ?」


「どーだろ?マノさんそんなことできるのー?

……あ、なんか言ってる……ちょっと待ってねー。だからそんな早口で難しいこと言ったって……それじゃ分かんないってー。

むうぅー……。そーじゃなくって……なんだ、できるじゃないのー」

「大丈夫なのか?次は撒くやつ。これって集めるのもできるの?」

「撒くのはね、飛ばすからいーの。集めるのはすぐそばじゃないとダメ。あたしの時は分けて固めた棒とか粒にくっついてるから、そこで集めてるよ」


(ほうき)とかブラシみたいな形にして、軽く(こす)ってもらうのはどうだろう?」

「ブラシで集めるんなら命令は要らないかな?分解マノさんが何をしてても集めちゃう。戻ったらもう悪さはしないと思う」


「それもやってみてから決めよう。あとは分解も始めろとやめろの命令だけどどのくらい離れて届くの?」

「デンキの強さで違うよ」

「うーん、やってみないと分からない感じだね。ブラシを作ってみようか」

「んーとね、…………これでどーお?上にボタン付けた」


「ここに字を書ける?

 1 集める 2 分解やめ 3 分解始め 4 撒く って」


「………どーお?」

「うん。試しに分解させるものがないね。出せるかな?」

「うん。これとこれ混ぜちゃうよ」

「あー、分けるだけだから、それで分かるのか。飛び出すのはブラシから?」


「ボタンの方の端っこだよー」

「こうか。よーし行くぞー。4回」

 ポチポチポチポチ


「ちゃんと出たのかな?全然見えないね。分解始め。3回…………あ、動き出した。途中だけど半分集めてみるよ」


 パサパサー


「こっち側が止まったね。ブラシに戻ったのは分解やめになってるか分かる?」


「ちゃんと止まってるよー」


「じゃあ分解やめ。2回……止まったね。動かしても、もうくっついたりしない。分解始め。4回……

 細い棒が3本出来た。くっ付けると………

 2本になったね。集まれは要らなかったね。

 もう出来ちゃったのかな。早すぎるよー」


 パックがこぼすので、ミットが笑って言った。

「アリスとマノさんはいっつもそんな感じだよー」

「パックに仕事を分けるって言われないと、できなかったよ?」

「よしこっちも出来たぞ。食うぞー」


   ・   ・   ・


「パック。その調子で木から透明な板を作らせてみてくれ。俺とミットは材料集めして来る。行くぞー、ミット」

「あーい」


「ガルツさん、変なこと言ってたね。木が透明な板になる訳ないのに」

「そーお?これは皮から作った水差し。パックが寝てる時に使ったんだよ?覚えてない?」

「あっ、これ見たような気がする。ほんとに透き通ってるね。きれいだ」


「ただねー、あたしもこれよく分かんないんだ。マノさんがやってるのは、木を違うものに作り直してるの。形は最後に作ってるんだよね」

「きっとその何か分からないってのは、いくつもの仕事を一度にやってるからじゃないのかな?一個ずつ順番にやらせるってできるかな?」


「えーっと………あ、ここがすっごい時間がかかるんだ。

 あのね、1回バラバラにするみたい。でもバラバラのまんまだと、どっかに飛んで行っちゃうんだよ。だから飛ばないように本当にちょっとずつ壊して、直ぐに繋いでるんだね。

 時間がかかるけど1回で木が粒々にできるね」


「そこから板にするのは出来そうかい?」

「うん、大きさを決めてあげないといけないけど、板って決まってればそんなにかからないよ」


「じゃあ、木を粒々にするのを作ってみよう。

 さっきと同じでブラシで良いかな?ボタン3回で

 1 粒やめ 2 粒始め 3 撒く って書いてね」


「えーっと………あとはさっきとおんなじに、んー。どうかな?」

「やってみるね。あっ粒だと散らからないように袋が要るか。これ借りるよ。………撒いたけど動きがないね?」


「この大きさだと夕方までに終わるかなー?もう少ししたら下に粒がちょっとずつ溜まるよ」

「ふうん。じゃあ分解ブラシを少し作っておこうよ」

「いいけど、デンキ詰めるとこ、どーしよーか?」


「あ、そうか。デンキはアリスがつくっているの?」

「違うよ。マノさんの帽子をお日様に当てるとできるみたい」

「そのデンキって貯められないのかな?アリスがしなくても使えたら良いんだけど」


「聞いてみるね………マノさんが増えたからできるみたい。家の屋根にソシ?を貼ってバッテ?ってので貯めるみたいだね。材料は木と鉱物、ガルツさんのリュックにあるはず。

 上にどーやって上がる?」


「あれっ。そう言えば梯子がないね?作らなかったの?」

「あたし、ハシゴって見たこと無いよ」

「ふうん、梯子はこんなふうに太い木2本を平行に並べて、桟木を同じ間隔で付けたものだよ。建物なんかに立て掛けて、桟木(さんぎ)を伝って登り降りするんだ」


「へー。これを円筒で作れないかって、ガルツさんが言ってたのね。

 うーん、パック、色はー?」

「別に何色でもいいけど?両端の色を黄色くしようか。60セロくらい。あとは白で黒でも透明で無ければ良いよ」

「うちの屋根なら長さは3メルかな?幅はどのくらい?」


「傾けて立てるから3メル半は要るよ。長くても問題無いから4メルにしようか。幅は大人が使うなら50セロだね、桟木の間隔は30セロくらいだけど僕らが登れるかな?」

「直せばいーよ。作ってみるね………

 どーお?」


「薄い青にしたのか。継ぎ目がないしカッコイイ!色を付けるのもイイね!

 へー。

 これを屋根に寄りかかるように立てて、わっ!すごく軽いね、これ!

 梯子、内側で押さえてて。僕が登ってみるから………

 あー、やっぱり登りにくいよ。桟木の間隔、25セロにしようか。大人用ならあれで良いんだけどね」


「うん、ちょっと待ってね。桟木を上からずらして来るから、立ててある方が早いよ………

 よーし、一回倒すよ。足りなくなっちゃった分付けるから」

「ほんとに不思議だよね。なんでも出来ちゃう」

「はい、出来たよ。なんでもじゃないよ?

 苦手な事もあるし、できない事もあるよ?」


「じゃあ、屋根に使う材料を用意しようか。木はどれくらい要るの?」

「その太いの2本かな。ガルツさんのリュックから鉱物を取って来るね」

「こんな太いの、ロープじゃ上がらないよ?3つくらいに分けようよ」

「そっかー。そーだねー………」


「アリス、先に登るから押さえてて」

「はーい」

「ロープを下すから木を結わえて」

「んと……いーよー」

「よいしょ、よいしょ」

「あたしも登るね。ちゃんと押さえててよー。わー、屋根の上だー」



 あたしはマノさんの黒い膜を作るため、1本にまとめた木質の上に鉱物を載せて、両手の平から分解マノさんを送り出す。

 鉱物の石が木に(もぐ)り込んで一塊になった。

 あたしはマノさんに言われるまま屋根じゅうにシタショリ?をしてくれるマシン?を撒く。

 あー、あたしはマノさんって呼んでるけど、仕事を実際にやってくれるちっちゃいのはマシンってゆーんだ。えっ?マノマシン?………

 ナノマシンですか。すみません。

 なんか怒られた………


 その間にも分解は進み黒い色が屋根の上に拡がり始めた。パックが足元が黒くなっていくのを不思議そうに見ている。

 膜はある程度厚くないとダメらしいので、持って来た鉱物を全部使ったみたい。


 下へ降りるとバッテリ?を作るとマノさんが言うので、中へ入りピピンの寝床の方へ行く。

 上から3本の黒い紐が降りている。……キューデンセン?変な名前ー。


「ここにパックが言ってたデンキーを貯めるバッテリ?を作るって。上の黒。ハツデンキー?黒でいーじゃない、めんどくさいし。

 (お日様ハツデン)が作ったデンキがこの紐、ん?かったい!

 固い紐を伝って降りて来るんだって。

 材料にするから昨日集めた矢と槍をここに置いてくれる?あたしは洞穴の箱紐(デンシブヒン)を持って来る」


 馬車から手押し車に箱紐(デンシブヒン)を積めるだけ積んで引いて行くと、パックが矢の束を両手に下げて付いて来た。

 そこへ置いてもう一度取りに戻る。あたしは虫の殻(キチン)を半分程分離して持って行き、箱を3つつくる。

 高さ1メルと20。幅1メル、厚さ30セロでひっくり返らないように柱に固定した。

 少し余った殻で踏み台も作った。


「パック。分解ブラシで矢と槍、分解しちゃって」

「はいよ」


 あたしは箱紐(デンシブヒン)の分解を始める。槍を一本取って、仕切りのたくさんある箱を作って材料ごとに仕分けして行く。

 仕分けと言ってもあたしは上で箱紐(デンシブヒン)()でて持っているだけだ。無くなったら次のを拾って撫でて箱の上にかざす。



 これで材料は揃ったかな?

 あ、水が要るね。木質(セルロース)からも取れるけど少し余分にあったほうがいいらしい。

 パックに桶一つ分の水を頼んだ。


 箱の半分まで木質をゴロリゴロリと入れて行って、あたしは箱紐(デンシブヒン)から分けた銀と銅を手に取ると、地面にしゃがんで土と混ぜて20セロ角の黒っぽい小さな箱を作り始める。

 中がどうなっているか、マノさんが絵を目に出してくれたけどまるきり分からない。とにかくこれをキチンの箱に詰めて、銅のヒモで繋いで行く。このバッテリの心臓だそうだ。


 箱の上の隅っこに固定して細い方の(チューブ)を木質の下に潜り込ませる。太い方は箱の上に出して先にフィルタを付ける。風をキチンの箱に入れるためだって言うけど、水に浸かっているのに風なんて入るのかな?


 パックに水を入れてもらうと蓋をした。上に出ているのは太い筒と硬いヒモが4本。

 そのうちの2本を(お日様ハツデン)から降りて来ていた紐に繋ぐ。

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