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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第3章 ハイエデン
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1 掃討戦・・・ミット

 チューブ列車と言われる古い乗り物は、なんと馬車ごと乗ることができるものだった。パックの故郷を探すはずの平穏な旅の終わりに降り立った新天地だが、そこは巨大な虫に蹂躙されていた。

 これを始末しなければこの場所に未来はない。


      登場人物


 アリス 主人公 13歳 薄い茶色の髪、白い肌、青い目、身長150セロの女の子。


 マノさん アリスの話し相手?魔法使い?


 ミット 12歳 孤児 濃茶色の髪、やや褐色の肌、黒い目、木登りが得意、身長148セロの女の子。


 ガルツ 32歳 工房出身 元猟師 その後兵士を3年ほどやっていた。戦場で壊滅(かいめつ)した部隊から逃れて来た。日焼けした肌、赤黒い髪、青い目、身長183セロの大男。青ずくめの防具、楯と長剣が基本のスタイル。


 パック 13歳 ケルヤーク開拓団で町を出る 身長 156セロ 赤髪、灰目の男の子。


 サントス   金物屋の店主。武器にする鉄を集めに行ったら譲ってくれた。商取引の仲介役。


 ベイク-アイゼル ハイエデンの首長。


 トルケル    ハイエデンの商家の主人。


 ビクソン    交易商人。


 ローセル    ハイエデン商会長。


 ケビン   元ドルケル 2メルの大男。武器はハンマー。


 カジオ   元ドルケル。涙もろい。


 ヤング   元ドルケル


 *********************************************


       第3章 ハイエデン


       1 掃討戦・・・ミット


 (チューブ)の乗り場は真っ黒い3メル近い平べったい(大ムカデ)でいっぱいだったー。

 でー、70匹くらいやっつけて外へ出ると広場は壁に囲まれててさー。その壁をみんなで手分けして調べてきたところなんだー。


「ミット。見たものを報告してくれ」

「あい、黒壁の上の人は人形でしたー。

 あの上からすっごくおっきな街が見えたー。キレーだったよー。ここは山の途中みたいー。

 でー、街にはおっきな女の人の白い像が立っているのー。おっきな水溜りもあったよー。いっぺん見るといいー。

 んー?……人のいる感じってしないねー?」


「うん。アリス、頼む」

「はーい。あたしはチズで見たよ。おっきな街だけど人は見えるところに一人もいない。パック、この紙持って」

「あ、はい」


 アリスがチズの絵をマノさんに描いてもらう。

 あー街を上から見てるんだー。路地がたくさん、屋根がたくさん。マノさんってよくこんな細っかい絵描けるねー。お、お、おーー。見覚えのある黒いのが3つー。さっきの大ムカデー。そっかー。それでかー。煮炊きの匂いがしないんだー。話声のざわざわがないんだー。無いものって気が付きにくいよねー。


「むぅ。人の姿がないってことは全滅したのか、こいつらを恐れて閉じこもっているのか。食糧やらがどうなっているか、いつ襲われたのかにも依るが」

「今のは2日前、次は7日前の絵だよ。この街はマノさんが空から調べる境目なんで、少しだけど古いのもあるの」


 次のチズには人がたくさん見えた。朝方らしく煮炊きの煙もそこかしこに見える。家の影も長い。


「7日なら家に閉じこもって頑張っている奴がたくさんいるな。見た以上、放っては行けない。

 だがどうする?

 さっき70匹くらい潰したが街にはどれくらい居る?俺たちは何匹殺れる?」


「あたしにお昼まで時間を頂戴。大ムカデは集められる。数を潰す武器も作る」

「よし分かった。最悪は洞穴(ほらあな)に戻って逃げるが殺せるだけ殺すぞ。で?手伝えることはあるか?」

「あたしは道具を作るから、槍と矢の材料を集めて。鉄もあったらお願い」


「木はいいとして鉄となると近くの民家を2、3軒(あさ)るか。先に木を集めるぞ。

 ミット裏山の枝を落としてくれ。こっちで集めるから」


 ふうん。これは下から木の下側の太いを枝なるべく払って置かないと、上から枝を落としたときに引っ掛かるねー。下の仕事も作ってあげないとだしー。


 あたいは木に登ると、一番下の枝の上に幹に靴の爪を食い込ませて左足で立つ。右脚の膝裏へ幹を抱え込むよう回し足首に巻いたロープを腰にギュッと絞ってみる。あたいは左利きだからね、左側のものの方が斬り易いんだ。

 これで足元の枝を切り落とそうと思う。剣の素振りを3回。身体の安定を確かめる。なんか行けそう?


 一応上からも一本腰に吊っておくー?落ちたらシャレにならないしー。よーし、イックぞー、素振りを1回、やぁっ!

 むぅ、半分切れて枝が少し下がった。もうちょっと下だなー。こうやって、こう。こうやってー、やぁっ!

 おー、うまくいったー。この木はもう一本枝をもらおー。


 ロープを外し上へ登るとくるくるっと準備して、素振りを3回、やぁっ!むぅー。7分目かー。

 もっかい、やぁっ!よーし。つぎの木ー。

 もうこうなればあたいのものよー。


 調子に乗って8本の木の枝を落とすと、ちょっと疲れた。休憩ー。下まで落ちきらなかった枝をパックが下へ投げてるねー。任せたよー。


 ようし。次イックぞー。

 つぎの木ではとうとう1撃で枝が落ちた。だんだんコツがわかって来たよー。

 剣を振る速さは大事だけど無闇(むやみ)に力を入れてもダメなんだねー。少し深いくらいに刃を下ろして、当たる瞬間にちょっと引くのがいーみたい。

 本当に体が安定していないと、こんなことはできないみたいだ。回る剣舞の動きとちょっと被るよー。


 さらに調子に乗りまくったあたいは、バタバタと枝を落とす。とうとうパックが悲鳴を上げた。


「ミットー。もう十分だー」


 折角切ったんだからと、手伝って下へ枝を落とす。


「なるべくかたまってる方が、早く加工できるからねー。枝を払っちゃおうー」

「分かったよー。頑張るよー。ふぅ。ふぅ」

 パックはお疲れかー。



「よし。こっちは十分だ。少し休んだらそこの民家でも何でも開けて鉄を探すぞ」

「完全にドロボーだねー」

「まあ、そうだな」

 かっるい返事ー。



 ガルツは装備の他にオオバサミも持ったねー。

 うまくいったら帰りは重たいからと、みんなの肉と水は減らしてる。


 最初の分岐のすぐ左は倉庫っぽい。中は静かだねー。

 そーっと扉を開ける。灯りを放り込む。大丈夫そーだ。中へ入って見回すと針金を巻いた束があった。幸先がいいねー。右の方に道具置き場発見。鉄の道具も少しあるねー。あるだけもらっちゃおー。あとはあちこち見たけど鉄はないなー。パックとあたいで分けて詰めた。


「もう1軒行くぞ」

「「はーい」」


 次は集会場みたいだねー。

 台所の調理道具が少し。案外ないもんだなー。

 あたいの村だと、どーだったかなー。門番さんの武器、あとは包丁?んー。鍛冶屋(かじや)にちょっとあったはずー。やっぱりないもんだなー。

 さっきの倉庫は当たりだねー。

 次は商店。何屋さんかなー?

 ザルにカゴに桶かー。作る道具ないかなー。

 小ちゃいノミと小刀、金槌(かなずち)と包丁ー。少なー。


「もう少しほしーねー?」

「そうだな。これではちょっと心許ないな。

!どうした?」

「シッ!3匹?あと人がいるー。あっちの方」


 バキバキー。うわぁぁーっ……


「クソっ、行くぞ!」


 ガルツが駆け出した。あたいたちも続く。


 窓のひさしを食い千切ろうと暴れる大ムカデ。中から棒で突いているが、何の痛痒(つうよう)も感じていない様子だ。

 あたいもガルツも既に弓に矢を番えている。あたいは止まって構えたがガルツは走りながら射った。

 あたいの矢は手前の背中へ突き刺さり地面に縫い留めた。ガルツの矢は窓に取り付く胸を捉え、あたいと同時に止まったパックの槍が3匹目の胴を分断した。


 あたいたちは周囲を見回す。他には近くにいないようだ。


「おい。大丈夫か?」

「あんたたちは?子供じゃないか。出歩くと危険だぞ」

「大丈夫ならいい。鉄が欲しい。ないか?」

「何に使う。火事場泥棒なら他所へ行け」


「今見た通りだ。大ムカデを狩る武器を作りたい。奴らどのくらいいるのか知ってるか?」

「数は分からん。兎に角沢山だ。3軒右に金物屋がある。店主はまだ居るはずだ。俺も行くよ」


 男の案内で金物屋へ移動する。途中もかすかな気配を感じる。集まって来ているような気がする。


「おーい、サントス、いるかー。レンツだ。鉄が欲しい。大ムカデを狩る武器を作るそうだ」

「なんだと、レンツ、おまえ生きてたのか。ほんとに虫を狩れるのか?」

「俺の家に押し入ろうとしたのを3匹潰してくれた。危ないとこだったよ」

「そうか。よし好きなだけ持ってけ!」


「ほら、店はこっちだ。だが間に合うのか?武器にするには時間が掛かるぞ」

「そんな事この人らだって分かってるさ。ここに置いててもなんの役にも立たん。何人かでも助かるんなら十分だ。持っていけ」


 ガルツがリュックを下ろし、重いやつを選んで片っ端から突っ込む。


「おい、そんなに入れたら歩けないぞ。鉄は重いんだ」

「ありがとう」


 ガルツは一言礼を言うとリュックを背負い、山へ向かって走り出した。あたいたちはその背中を追って走った。


「おじさんたちも頑張ってー」


 あたいはやっとそれだけ言ってあげられた。


 戻ると黒壁と柵の内側に、一辺が5メルの四角い穴がズラッと空いていた。隣との間隔が1メル、覗いてみると深さは分からないけど1

 0メルありそう。


「アリスーこの穴、落とし穴ー?見えてたら避けるんじゃないのー?」

「おかえりミットー。中で虫を呼ぶ音を出すのー。きっと喜んで入るよー」

「鉄を集めて来たぞ。木の山は……これか?」


 なんか大きな丸太があると思ったら枝をまとめたのかー。


「上に置いて。槍から行くよー」

 アリスが鉄の塊を撫でると両側にポトリ。ポトリとガルツ用とパック用の槍が落ちる。鉄が小さくなるので上に補充すると反対の端にも鉄を置く。こちらはあたいの矢が両側へ落ちる。


「溜まると邪魔になるから退けてね」

「「お、おう」」



 槍は直ぐいっぱいになるねー。

 アリスは鉄をそれぞれ追加してと言って、落とし穴の方へ行くと四角くグルっと歩いた。角に拳より少し大きいくらいの黒い玉を置くと地面が四角く沈んでいく。同じように落とし穴の2列目を作っているようだ。次々と地面が落とし穴に変貌(へんぼう)して行くのをあたいは呆然と見ていた。


「ミット、矢を退()けてやれ」


 見ると50本くらいの矢が両側に積もっている。これで100?そんなに射てるかなー?


 アリスが戻って来て、ガルツの矢に切り替えたので、あたいの矢は手持ちを合わせて180くらいだねー。アリスの分も入ってるし。

 アリスは鉄を補充(ほじゅう)して落とし穴に戻る。


 矢も槍もよく見ると先の全部が鉄ではない。木に被さるように付いているようだ。


 いつのまにか丸太だったものが、かなり細くなっている。鉄はまだ余裕がありそうだ。

 黒壁の落とし穴の2列目が出来上がる。

 両側の木柵の方は4列になっていた。


「大体は落とし穴で死ぬよ。気まぐれで縁を渡ってくるのと、裏の斜面から回り込んで来るのを潰してね。お昼を食べて休憩してから呼ぶよ」

「よし、飯だな」


 スープと干し肉だねー。ワイワイとやっていると、呼んでもないのにお客さんが10匹ほど柵を越えて来た。アリスが手を上げ止めるので見ていると、そのままボトッと穴へ落ちて見えなくなった。

 ごく小さい音で穴の中へ呼んだらしい。


「しっかり休んでね」

アリスが言った。


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