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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第2章 チューブ列車
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9 大ムカデ・・・ミット

 これまで:パックのリハビリがてら行う道の修復と植林は大詰めを迎えた。食料補給で鹿狩りをする事になりアリスが投げ槍を作った。

 あれから5日かけて植林が終わった。長かったよー。無事に育っておくれよー。

 今日は朝からあの部屋のガイコツさんを埋葬して出発だ。馬車で洞穴の中へ乗り付けたのは初めてだねー。


 ガルツが隠し部屋の重いドアを押し開けた。みんなで中のガイコツさんを袋に移す。外に出てアリスが四角い箱を地面に作ってそこへ納めた。上まん丸の大きな石を作り『テレーズさんのお墓』と彫り込んだ。

 みんなで姿勢を正し胸に右手を当てて首を垂れる。わずかばかりのお祈りだ。お疲れ様。


 部屋へ戻るとアリスが嬉々()として紐のついた箱を全て馬車に積み込んだ。机の鍵も開けてみたけど、そこにも同じようなものが詰め込んであった。それと一緒に机の前の黒い板も外して積んでしまった。

 あんなのどーするんだろー?ピピンも呆れて見てるよー?


「ロセンズー。左へ3つ行ってみるねー」

「おう、それで頼む」

「はーい。10メニだって」

「おう、そうか」


 アリスが馬車へ戻って、さっき積んだものをどんどん分解し始める。


「それどうするの?」

 パックが聞くと

「このままじゃ場所をとって邪魔だし、使いやすいように分けるよ」

「外は見なくていいのー?」

「ガルツさんがちゃんと乗せてくれるから大丈夫。2ハワーくらいって言ってたでしょ。それだけあったら、これ片付くよ」


 コオォォーーー

 お、来たなー。あたいは見てこよー。なんだ、パックも見たいんだねー。


 ヴヴヴゥーーー。

 筒が止まって両方の壁が開いた。

 ガルツさんがちょっと戸惑うピピンを(なだ)めて乗り込む。あたい達も続いて乗り込むけど何も起きない。どうしたのかなーと思った頃、壁がニュウっと閉まった。

 動いてる感じも音もしないのに、流れていく壁が見えて走り出したとわかる。すっごく静かだ。


 こ、これは退屈だ。端から端まで3人で見て来たが10メニとかからない。やることがないので椅子を出して干し肉を(かじ)る。馬車を覗くとアリスがたくさん仕切りの付いた箱を前に、ニッコニコで分解をしていた。これは触ってはいかん奴だわー。

 仕方がないので弓引きを始めると、みんなやっと落ち着いた顔でそれぞれの鍛錬(たんれん)を始めた。


 いつもの素振りを終えて、この頃考えている回転する剣舞をやってみる。

 剣を大きく振る反動で体を回し、剣を引き込み脚を狭めることで回る速度を上げる。回っている間の刃筋の高低と速度を姿勢と手足の動きで変化させる。一度の回転は5回から8回。

 足を開き体の回転が止まると一気に剣先の速度が上がる、そのタイミングで更に引き斬りをかけ、頭の上で剣を回すと唐竹割(からたけわり)に振り下ろす。

「やあっ!」


 思わず声が出て周りを見回すとガルツとパックがあんぐりと口を開けている。


「虫が飛び込むよー」

「「ここに虫なんかいない」」


 お約束のツッコミをもらって(ほお)が緩む。あたい、こーゆーの好きー。

 ガルツ達とツッコミ合戦をやっているとアリスが馬車から降りて来た。


「そろそろ着くよー。出したものしまってー」


 言われて椅子やら装備やらをしまう。ピピンの桶もだー。これで全部しまったのかなーと見ていると窓から見える壁の流れが緩くなった。ほんと中からだと分かんないなー。

 内壁と間仕切りがニュウっと開いて、ガルツがピピンを引いて降車したので、あたいらが続く。ん?!


「なんか居るー!」


 あたいが叫びながら弓を引き出す後ろで壁が閉じた。アリスとガルツが灯りを点け前へ投げると、おっきな黒い虫!足はいっぱいあるねー。あたいの弓は近い虫の口辺りを射った。


「前に5匹かなー。パックしっかりしなよー!」


 あたいの矢はちゃんと刺さったね!

 アリスの針が別の頭に突き立つ。半分くらいか。ガルツがそいつの首を斬り飛ばす。


「固いよ!もっと太いのがいーね」


 声を掛けながら奥のやつの頭を射抜く。

 闇からヌッと現れた頭にアリスの針が穴を穿って突き抜いた。効いたねー。


「こいつは大ムカデか?聞いた事はあったが見るのは初めてだ」


 ガルツが灯りを拾い更に奥へ投げるともう2匹。パックの槍が飛び奥の大ムカデの頭が飛び散った。


「数が合わんぞ?」

「増えたのー」

「ああそうかい!」

 ガルツが長剣を振り上げようとした目の前の頭に穴が開く。的がなくなったガルツがもう一つの灯りを拾って前へ投げた。


「で、今何匹だ?」

 見えた大ムカデの1番奥が吹き飛んだ。パックはあと一本かー。あたいは右の2匹を立て続けに仕留める。アリスは今日は左担当だねー。2匹穴開けたねー。ガルツが正面を一匹斬り伏せる。


「めんどくさいくらい居るよー」

「うぇっ!」

 ガルツが呻く間にもあたいとアリスの連射は止まらない。ガルツは軽々と大ムカデを蹴り飛ばし前進していたが、これだけ死骸が積もってくるとそうもいかず退がり出した。

 パックが最後の槍を投げた。


「パック、筒を呼んでー!」


 パックが右の角へ走る間も大ムカデを潰し続ける。あたいの矢は30本。もう半分使った。

 アリスのをもらっても60本だ。アリスの鉄はどれくらいあるのか?

 ん?!


「なんかー、大ムカデが減って来たよー。品切れー?」

「本当かー?さっき増えたからなー」

「ガルツー、今日は疑り深いねー」


 あたいの矢はたぶんあと5本。アリスも弓を抜いた。ガルツが正面の首を斬り飛ばし、そこで動きを止めた。


「ミット、疑って悪かったな」

「それはいーけど、どーするのこれ?すっごい邪魔ー」

「あー、ガルツさん。届かないから持ち上げて」

「あ?おう」


 アリスがガルツの肩に乗って大ムカデの山になんか撒いた。これはシューカクだねー。


「パックー。たぶん終わったー。筒が来ても乗らないー」

「うん。分かった。何匹いたの?」

「多分70くらいー?あたいの矢が25本だから」


 大ムカデの山が一つ消えたがキレイにはならなかった。一面に土のようなものが薄く積もる中、白い骨がそこここに見える。


「ねえみんなー、これって人の骨じゃなーいー?」

「んー?そうかも知れん。この大ムカデに襲われたのか?」

「これ、短剣じゃないかな?」

「ああ、錆びてボロボロになってるが短剣だな」

「パック、骨拾うよ。袋だしなー」

「うん」


 あたいとパックが拾い続ける中、アリスのシューカクは40メニ掛かった。

 一山分の殻は太さ30セロ長さ1メルの円筒形になって転がった。他に50セロの円筒が2本、この中は要らないやつだそうだ、中身の分からない小さな容器が幾つか出来ている。


 そのあとも何人分かも分からない人骨を、みんなで丁寧(ていねい)に拾った。錆びた剣は8本あったので、それ以上の人がここで大ムカデに襲われたと言うことか?

 出入り口の方まで進めたものはいないようで、12メル辺りから先には落ちていなかった。


 回収した鉄、槍、矢の修復はかためて置けばアリスの手の一振りですぐ終わる。矢と槍を除けたあとアリスが鉄と一緒にマノさんを回収した。


 埋葬のため一旦外へ出ることになったが、出口は(まぶ)しい上に風の音が反響(はんきょう)して気配が読みにくい。


「この音が混じってたからー、遠い気配、読み損なったのかなー?」

「そうかもな。時折大きく響くな、なんだろう?」


 一歩ずつ様子を見ながらゆっくりと進む。目を直射するお日様の境目が一番きついが、あたいの耳や他の感覚は外の気配を捉えているので、慣れるまで動かずに待つ。


 外に出ると正面に大きな黒い壁があった。出口から50メル離れ、幅100メル高さが8メル、その上に3人ほど人影が見える。壁の両側は高さ3メルの木柵で、ここが四角い広場のように仕切られていた。他に人は見えないなー。右は緑ー、左は灰色ー。前が黒ー。変なのー。


「上の3人。さっきから動く様子がないな。俺たちを見たなら何か動くはずだ」

「えーっ、ビックリして固まってるのー?おーい!」

「「おーい」」

「反応がないねー」

「うーん、先に埋葬を済ませよう」


 アリスがお墓を作る。やることはテレーズさんのと一緒だねー。

 簡単なお祈りを済ませてとりあえず右の木柵へピピンを引いて行ってみる。上の3人、これでも動かないねー、人形かなー。


 そばへ寄ると木柵なんてものではない。尖った丸太が2段にこちらの上に向けて突き出ている。

 あの大ムカデを警戒して作ったのかなー?これがあの固い殻に刺さるとは思えないけど、登りにくいだろうねー。


 木柵の向こうに人の姿は見えない。牧草地のように背の低い草が壁で見えなくなるところまで一面に茂っているだけだ。1000メルくらい先には山が迫っている。上を見ると(ほうき)で引っ張ったような細い模様を雲が描いている。


「むーー。あっちも見てみよー」


 向きを変えてみんなで左を見に行く。

 向こうは柵の奥にも少し低い灰色の壁が立っている。


「中の虫材料どーするのー?ここも隠しドアあるかもだしー」

「まあ、外が一旦落ち着いてからでもいいだろう」


 こっちもおんなじだー。出口作ってないのかなー?まさかの黒壁ドアー?

 灰色の壁は高さ5メル左はそのまま山の斜面にぶつかっている。右の方は黒壁の線から20メルくらい続いている。その奥に黄土色の屋根が何軒か見える。ずっと先に右から稜線(りょうせん)が降りて来ていて水面があるようだ。

 あの先は低いんだねー。街かなー?


「出口、ないねー。黒壁も調べるー?」

「そうだな。やたら壊すのは本意じゃないから見てみようか。パック、ここで留守番な。3人で黒壁を一回りしてくる。いくぞ」


 ガルツがアリスの手を引いて柵を登るので、あたいもそれに続く。

 こういう時アリスは鈍臭いから見てあげないとねー。裏から見る黒壁、ショッボー。壁の厚さは50セロ、土っぽいねー。その裏は木で組んだ5メル幅の足場が支えている。もっとこうお城の壁みたいのだと思ってたら壁一枚かー。


「あたいは上を見てくるねー」

「おう、俺たちは下にドアがあるか見てくる。気を付けろよ」


 裏から見ればドアなんてすぐわかるねー。さて屋上ですよー。あー、やっぱりお人形だねー。少なくともこの壁のせいで風が複雑に巻いて、通路に音が響くらしいことはわかった。


 後ろを振り向くと大きな街があった。右側から山の斜面が降っていき、途中から少しなだらかになると、その辺りから色とりどりの小さな家が建ち始め、あとはもうぎっしりだ。

 さらに左へ目をやると一直線に建物の切れ目が見える。あれは多分道。その先には白い女の人が立っている。


 この距離で見えるってことはかなりおっきな像だねー。


 灰色の壁に隠れるところまで建物の群れは続いている。一番低い所は大きな建物が多いようで、中央に見える水溜り近くに小山のように大きな建物の群れがあって、左に行くほどまばらになっている。さまざまな屋根の色が混沌(こんとん)としてさながらモザイク画のようだ。

 奥の方の街並みは右から水面、左からの畑に挟まれるように細く左上に伸びていって消えた。

 水面は遠くなると雲と区別がつかないけど、右から被さる稜線の向こうにも広がっているようだ。


「うっわーっ!」


「どうした、ミット。何があった?」

「………大丈夫だよー、ガルツー。ここから街が見えるー。おっきくてキレーな街だよー」

「おう、そうか。後で見に行くよ。ドアがあったが馬車は通れないな。だいたいがこの足場の下は馬車は通れない。もう少し見てみるよ」


 ふーん?遠くばっかり見てたねー。あー、少し下に右の牧草地へ行く坂道があるねー。灰色壁の右端を回り込んで裏へ行く道が、多分その下の分岐辺りに繋がってそう。これは柵を壊さないと馬車は出られそうにないかー。

 あ。アリスなら外して戻せるかなー?

 しっかし、あの分岐から下の道ってって石が敷き詰めてあるみたいだよー。そっから上はアリスが作った水路の道に似てるねー。


「ガルツー、馬車出すなら柵を外さないと道がないー」

「そうか。馬車へ戻るぞ!」

「はーい」







 ミットの用語解説ー


 単位ねー


 お金 シル


 長さ セロ=センチメートル メル=メートル ケラル=キロメートル

    

 重さ キル=キログラム トン=トン


 時間 メニ=分 ハワー=時間


 温度 セッシド=°C



 アリスの目 見たものに赤い線を付けてくれるー 寸法や形がわかるって言ってたー 

 毒が赤い点々になって見えるらしいー

 温度が目で見えちゃう。サーモ?だってー

 あとねー誰も気がついてないけど、暗くても見えるみたいだよー


 チズ   上から見た周りの絵が見えるー。大きさも変えられるってー


 死んだマノさん 飾りボタンだけどお返事がないらしいー。マノさん材料が採れるってー


 (チューブ) 馬車ごと乗れる乗り物。ロセンズーで呼べるー


 箱紐    箱に長い弾力のある紐が付いてるのー。マノさんが欲しいって。


 トラル   槍投げのなっがいお玉ー


 ケッカイ  キャンプ地を囲うように黒いひもを結んでおくと15メル以内を何かが通るのを察知してうるさくビービー鳴く道具


 ハッポー  ふわふわのタマゴ 皮素材から作るー


 メッポー  ハッポーをちっちゃくする袋 出すとまたおっきなハッポーに戻るよー


 デンキ   浴びると軽いのは人や動物の動きが止まる。強いと気絶したり、死んだりする 滅多に使わないよー


 灯り    4セロの猫耳付きの白い円盤 厚さは半セロ 真ん中を押すと3段階で光るよ 明るいので連続3日くらい光るらしい


 フィルタ  木の中の糸を固めて入れ物のような形にしたもの 水を()して飲めるようにしてくれるー


やっほー。ミットだよー。

ここまで見てくれて、ありがとーねー。

あたいの活躍を見たいと思った人はブックマークっての、よろしくねー。星もうれしいからいっぱいつけて欲しーなー。


次からは新章 『ハイエデン』がはっじまっるよー。


そーそー。こっちはネタバレだけど見たい人はどーぞ。

https://ncode.syosetu.com/n9688gp/1/

これにトーコーが追いつくのは年が変わるかなー?なんて思ってるんだー。


じゃあねー。バイバーイ。

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