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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第2章 チューブ列車
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7 雨・・・ミット

 これまで:不思議な洞穴で男の子はパックという名だった。歩けるまでに回復したので洞穴の探検に向かう。

 うーん、今朝は雨かー。

「アリスー、雨降ってるー」

「あらー、しばらく晴れが続いてたからね。

 禿山の道、きっとズルズルだよ。狭いけど馬車の脇に屋根をかけておいて良かったね」

「まあ、あの洞穴まで行けばあとは雨に当たらないから。パック、調子はどうだ?」


「うん、大丈夫」

「じゃあ、雨具作るね」

「あたいは脇で火を起こすよー。あったかいのがいいもんねー」



 4人も居るとテントの下はただでさえ狭いのに何をするのも大変だ。なんとか朝ご飯を済ませ出かける支度をした。


「ピピンー、お留守番、お願いねー」

「ブヒヒン!」

「いー返事だねー。じゃ、行って来まーす」


   ・   ・   ・


 あたいが先頭で、ガルツがパックの手を引き続く。アリスはしんがりだ。雨の音、煙る視界、気配も読みにくい。こんな中出歩くような奴はそうそういないと思うが、油断はできない。

 少し勾配の強い坂道を登っていく。山の斜面を見ながら左に大きく曲がったら、突き当たりは右が洞穴(ほらあな)、左がハゲ山だ。


 行ってみると水が山から道伝いに右へ流れていた。1メル幅くらいの流れだけど結構速い。ところどころ道が(えぐ)れてしまった所もある。

 あたいたちの馬車が出るときは苦労しそうだ。溝に落ちないように端へ寄ったり、身体を低くして転ばないように(こら)えたりしながら降りて行く。

 後ろでパックが2回転びそうになってガルツに引き上げられていた。


 足腰にまだ力が入らないみたいねー。帰るときまで持つのかなー?と思ってみるとアリスは見ないフリをしてる。

 パックが気にするといけないからかなー?


 洞穴の分かれ道が見えて来た。右が洞穴、真っ直ぐが山を降りる道。水は真っ直ぐ流れていく。ずっと下の方で地面に水と泥が広がっているのが見える。

 あそこも乾かないと歩けないなー。


 泥濘(ぬかるみ)を想像して背筋にゾワッとするものを感じながらあたいは右へ行く。

 パック、また転びそうになったー。


 ここまで来ればもうやっかいなとこはないねー。すぐに入り口が見えて来た。

 穴に入ると雨具を脱いでやれやれだよー。

 タオルを出して濡れたところを()くとさっぱりした。


 灯りを点けて奥へ進む。アリスは時々止まって壁に手を当てブツブツ言ってる。

 間仕切り壁が見えて来た。


「うーん、壁にね……ちょっと上のとこにずーっと帯が見えるんだけど、中に埋まってるのか……」


 そのまま壁伝いに左へ曲がると、角から1メル辺りをじっと見ている。


「アリスー、なんかあるのー?」


 あたいが聞いたけど、一つ(うなず)くだけだ。

 しばらくしてガルツを振り向くと

「ガルツさん、持ち上げてくれる?」

「あん、なんだ?どれ」


 壁に向かってアリスを持ち上げると何をしたのか、2メル程上の高さの壁をパカッと開けた。50セロ角の蓋にガルツが一歩下がる。

 開き切った中をアリスが灯りをかざして覗き込むので、ガルツが一歩前へ出ると


「これかな?えっ?………センズー?なんかここのチズが読めるかも。ちょっと待ってね」


 エリ裏からマノさんボタンを取り出し、壁の四角い穴に差し込んだ。すぐに手を戻し降りると言う。


「こうだよー」

 と言って四角い穴の下の壁に右手を付けると大きな丸がボーっと現れた。

 丸の線の上に数えると同じような四角が13個、それぞれそばに読めない記号が浮かんでいる。

「ここは一番下のこの赤い四角だね」

ここの四角は小さくて左隣と3つ右に大きいのがある。あとは大きな丸い絵の反対側に一つ大きい四角がある。


「アリス、この大きな丸いのはなんだ?」

(チューブ)のロセンだって。通り道?

 呼び方は行きたい四角を押すんだよ」


 左の大きい四角を人差し指でチョンとするとその四角がホワっと光った。


「5メニくらいで来るみたい。乗ってみる?」

「移動するなら馬車を持っていきたいな。万が一戻れなかったらピピンが可哀想だし、せっかく作った馬車だから」


「そうだね。戻れないかもはないと思うけど、置いてくのは嫌だね」

「ないって言えるのか?」

「だってパック達が何度も使ってるもの」


 コォーーーー

 右手から音が近づいて来る。


 光が接近して来るのが見えた。どんどん近付く。

 ヴヴヴゥーーー。

 速度がグッと落ちたな、と思ったら目の前に長い筒が滑り込んで来て止まった。


 あたい達の前の間仕切りと筒の壁が、左右に引き込まれるように3メル幅で開いた。

 アリスが両手を広げてとうせんぼをしている。乗ると連れていかれるのかな?


 筒の中は明るく広い。高さも3メル近くあって馬車も余裕で入れるねー。

 おっとあたいの口が開けっぱだ。見るとガルツも、あれパックもだ。


「口に虫が飛び込むよー」

「「虫なんかいないだろ」」


 いいツッコミが返ってきたーっと頬が緩むころ、(あきら)めたのか壁がニューっと閉じた。なんでかどこにも継ぎ目が見えない。


 ヴヴゥーーーーー

 筒が左へ動き出しあっという間に見えなくなった。遠ざかる音もすぐに消え、かすかな風の音が残った。


 さっきアリスが触った壁を照らしてみるが周りと区別がつかない。上に四角い蓋が開いてるからここかなーって感じだ。あたいが壁を触ると同じようにボーッと丸い絵が出て来る。

 これ、ポチッとやったらまたすぐ来るのかなー?

 しないけどー。


 1メル右へ行って同じように壁に触ってみるがここには出ないねー。何箇所かやってみたけどやっぱりあそこだけだー。曲がり角から1メル。曲がり角は向こうにもあるねー。やってみよー。

 こっちはダメだったー。ふーん?

 戻ると上の蓋は閉まってたけど、ここも継ぎ目が見えないねー。

 とっても変なとこだってのはよく分かったよー。


「アリスー、どうやってあの蓋見つけたのー」

「マノさんの目だよ。デンジーバー?を見て、スイソクガゾ?を目に描いてくれるみたい」

「「「なんだそりゃ?」」」


「あたしも分かんなーい」

「アリスが見えるんならいいだろう。さて、呼び方は分かったな。あとはこの絵の11個のどこへ行こうか、だな。なんかヒントみたいなのはないのか?パックは何か知らないか?」

「僕が来た時は、どこにも止まらずに2ハワーかかったと思う」


「どこから乗ったのかは?」

「全然分からない。この記号も見たことがないし」

「アリスはどうだ?」

「2ハワーだと3つか4つだって。パック、どっちから来たか覚えてる?」

「確か………左かな……こう走って来て、右の方が開いたと思う」


「ふーん。ぐるっと一周出来るとして、6から8ハワーかかるってか。退屈で死ぬな。広いったって100メルしかないんじゃ見るとこもない」

「「ソレハソーカモー」」


「アリス、他に何か分かることがあるか、もう少し調べてくれ」

「分かった」


 それから2ハワーもの間、アリスはあちこちうろついた。結果薄暗い灯りが洞穴全体に点けられることが分かった。それともう一つ。


 入るときに調べていた通路の壁の反対側に、何かの扉を見つけたようだ。


「ここにね、ドアがあるみたい。むーー、マノさん、開けられる?………ケンゲン?無いって?………ダメなんだ。このあいだみたいに穴、開くかな?………むーー、こっちの壁は?………!」


 アリスがしゃがんで離れた壁を撫で始める。撫でたところが少しずつへこんでいく。30メニかけて肘まである厚みを貫通した。


「開いたー。………中は真っ暗だね、灯りを入れるよ」

「穴が小さくてろくに見えんな」


「………カガミー?作れるのー?鉄にメッキー?

 ふーん、やってみよう………ガルツさん、これで見てみて」

「お、おう?鉄で鏡作ったのか?これはこれは。ようし。

 お、中は結構広いな。危ないものはいないようだ。奥に棚と机かな、何かごちゃごちゃ載ってるな。このドアは見たことないが中からなら開くのか?

 いやおまえ達ならちょっと広げれば入れるのか。アリス、自分が通れるだけ穴を広げてみろ」

「分かった」


 アリスは穴の下側を念入りに撫で始めた。あたいが近寄って覗き込むとアリスが身体を右に寄せて見せてくれる。

 あれー。正面は横の壁の中かー。左が部屋だねー。


「ここ、部屋の間仕切りー?」

「そうだよ。こっち側の壁を壊すとケッカイみたいのが騒ぐみたいだよ」

「アリスが頑張っている間に干し肉でも(かじ)るか」


 ガルツがリュックからクマの干し肉を出し、ナイフで薄く削いで行く。


「ほれ、取って食え。アリスにもやれよ」

「あいあいー」「どうも」「アリス、あーん」


「クマは薄くしないと硬くてな。うん、美味いな」


 その間もアリスは穴を横にも広げようと撫で続ける。下はさっき塗りつけたのが頑張ってくれるんだねー。あたいもリュックから水入れを出してカップに注ぐ。脇に置いてあるアリスのリュックからもカップを取った。


「水あげるからー、あんた達もカップだしなー」


 パックがベルトから下げたカップを取って出したので注いであげる。


「もっと体力が着いたらパックもリュックが要るねー」



「通れそうかなー?行ってみるね」


 アリスが手を先に頭から、穴の曲がりに合わせて左向きで潜り込んだ。


「ガルツさん、足押してくれる?」

「おう、ちょっと待て。どうだ?」


「よいしょ、もうちょっと。出たー。ドア、中から開くかやってみるね」

「あたいも行って手伝うよー」


 潜り込むとガルツが押してくれる。

 入って部屋の中を見回すと、奥に何かごちゃっとものが載った机と棚、右に木製のドアがある。5メル角くらいの薄い黄色の壁に囲まれた部屋だ。

 天井まで2メル、ちょっと低いねー。後ろを見ると、壁に掛かった白い板に字が書き込んであるけど全く読めないなー。

 アリスはどーかな。



「どーお?開きそー?」

「まだ分かんない」

「あたいは奥を見て来るねー」

「うん、壊さないよーにね」


 まず棚ー。見て分かるものが一個もないねー。棚には箱の片面から何本も紐が出ていて、その箱の上でグリグリっと巻いてあるのが、大小さまざまぎっしり詰め込んである。

 紐というには固くて曲げ(にく)いけど弾力がある。

 下の箱を引き出して見ると、うんと小さいのに同じような箱と紐が入っている。

 うん、これは無理だー。


 机ー。上に平べったい箱、後ろから紐が何本か壁の穴に繋がっている。正面の壁におっきな黒い板が掛かっているが、こっちに書き込みはない。丸い板からピョンと立っているものが、あたいを指差しているみたいに見える。


 拳くらいの四角い紙をぎっしり、指一本の厚みまで束ねた物がある。一番上の紙に字が書いてあるがやっぱり読めない。


 机の下の変なものは椅子だった。座ってみるとちょっとふわふわだ。持たれると背中の板が動いてユラユラするのが楽しい。これ、いーねー。


 机の下の箱は引き出しみたいで、引っ張ると動きそう。何か引っかかって開かないけど。


 次は右のドアー。

 温泉で見たような曲がった棒が左側の真ん中に突き出ているので、下へ回して引いて見る。

 中も暗いねー。あたいの灯りをかざすとベッドがある。上に服を着たガイコツが寝ていた。


「わわわっ!びっくりしたー、アリスー、ガイコツさんだー」

「ええっ!

 ちょっと待って。もう少しで開きそうなの…………開いたー」


 アリスがドアを思い切り押しているが動かないねー。


「これ、引くやつだったりしないー?」

「えっ、そうなの?」


 引くとちょっと動いたけど、そっからもうどっちへも動かない。

 あたいは穴から

「ガルツー、ちょっと動いたー。そっちから押してみてー」


 アリスが(あわ)ててドアの前から逃げる。


「おう、分かった。どいてろよー」


 ギッギッと鳴ったかと思うとドカンとドアが開いた。アリス、逃げてて良かったねー。


「ガルツー、奥の部屋のベッドにガイコツが寝てるー」

「えっ?こんなとこにか?」


 ガルツと二人で奥の部屋へ行く。ベッドしか置かれていない狭い部屋を灯りで照らして調べて見るが、床に(ほこり)が積もっているだけだ。

 着ている服の襟元(えりもと)にどこかでみたような……!


「アリスー、ちょっとおいでよー」


「なーに?わっ、ガイコツさんだね」

「この人のエリ。これ生きてるー?」

「マノさんによく似てるね。外しますよー………生きてるね。ニーだって。あれっ、……ちょっとポッケ見せてねー」


 アリスがガイコツの上着のポケットを探って、飾りボタンを一つ取り出した。


「こっちは返事がないね。死んでるみたい。このガイコツさん、仕立てのいい服を着てるね。

 ちょっと見せてねー。

 わっ、ガルツさん、この服すっごい。あたしが全力で縫ってもここまで綺麗にできないよ。どーやって縫ったんだろ?」


 アリスよりキレイな縫い目って、それはすごいなー。そー言えばパックの奴、えらく静かだなー。ちょっと見てやるかー。


「晴れたら馬車を持って来るからそのときに埋葬してやろう。服はそのときにな」

「うん、ちゃんとしてあげないとね」


 あれ?あいつまだ入って来てないのか?

 ドアから通路へ出ると壁にもたれてパックが座ってる。


「パックー、どーしたー?大丈夫かなー?」

「うん、ちょっと疲れちゃったみたい」

「そっかー。道がズルズルで歩きにくかったよなー。帰りもあるからゆっくりしてなー」


 後ろではアリスが紐のついた箱を見て大コーフンのようだ。なんでもマノさん素材がたっぷりらしい。箱の底の方に返事しないマノさんもいくつか見つけたみたい。


 ガルツが説得してる。

「だから、馬車を持って来たときにしような。

 その飾りボタンと小さいの二つくらいにしておけ。今回は我慢してくれ」


「むぅー………分かった」


「じゃあ閉めてみるか。穴はどうやって隠すかな」

「ハッポーで塞ぐよ」

「ミット、ドアが重いから手伝ってやってくれ」


 おっと、あたいにも声が掛かった。

「あーい」


 ガルツは引っ張るとこがないんで動かしてみただけで外へ出た。アリスと二人で押してドアを閉める。穴を抜けたら外からハッポーを壁に馴染ませると、見ただけじゃ分からなくなった。


 ドアの継ぎ目がうっすら見えるが、大丈夫そうだ。パックを連れて出口へ向かうと、雨が小降りになっていた。


 一応雨具を着こんで帰路に就いた。



 パックがこけそうになった最初の分岐が見えて来た。水の流れが見えない。

 そばまで行ってみると道路の向こう側が深い溝になり底を水が流れていた。1メル以上も掘り下げられている。坂の上の方を見ると溝は曲がりくねって道を横断、その上で大きく陥没して崩れた土を乗り越え、水が流れ下っているのが分かった。


 周囲の斜面はどこも土がむき出しで勾配がきつい。このグズグズになった土の斜面はとても登れそうにない。


「これは無理だな。この道はもう通れない。戻って向こうがどうなっているか見てみよう」


   ・   ・   ・


 洞穴の前を通って進んでみるとこちらは緩い下りだが、山の奥へ向かう道があった。

 途中、水で深く(えぐ)れた場所もあったが、なだらかな場所なので迂回することで渡ることができた。


「ガルツさん、池からずいぶん離れたよー。池はあっち」


 アリスが指差す先は谷の向こうに山が見える。さすがにこの辺りまで来ると木は切り倒されておらず、山越えもできそうだ。

 谷を渡る場所を探しさらに降って行くと、ここならと思える場所があった。それでもこちら側とは1メルに近い落差があり、ロープを向こう側の木に巻いて張らないと、川底の流れが早いので子供は流される危険が大きかった。


「水が引くまで待つわけにもいかん。俺が渡ってロープを張る。それから一人ずつ運ぶからこっちで待っていろ」

 ガルツが川をなんとか渡り、こちら側の木との間にロープを張った。


 谷を渡ると、アリスのチズを頼りに山の中を池に向かって歩いた。途中鹿を見たが馬車まで相当な距離があって、とても運べそうにないのと、パックの体力も限界が近いので(あきら)めた。

 山の木の間から池がチラチラ見える頃、雨は止んだがパックの体力が尽きた。


「担架を作るか。幸いここからはほとんど下りだし」


 太めの木の枝を切り落とし、地面に梯子(はしご)のようなものを書いて

「アリス、細い方の端を俺が握って引っ張る感じだな。

 この横木の間に皮を張って、ああ、寝床ツリーみたいにな、パックを載せる。どうだ?」

「分かった……」


 出来上がったのでさっそく頭を前にしてパックを載せる。紐で胸と足を固定して、ガルツが歩き出す。


「いいみたいだねー。狩の獲物を運ぶのに良さそうー」

「いや、実際、猟師はこれで獲物やけが人を運ぶんだ。細ロープだけ有れば現地で簡単に作れるからな。張るのは皮じゃなくて細ロープだから乗り心地は最悪だぞ」

「「それは痛そー」」



 1ハワーほどで馬車へ戻る事ができた。雨は降っていないのでアリスが急いでお風呂を準備する。あたいはスープを作る。ガルツはパックの体をタオルで拭き、寝かせようと馬車へ運んで行った。


 ピピンー、ご飯が後回しになっているけど、勘弁してねー。

 鍋を火にかけたのであたいがまずピピンの水を入れてあげる。アリスがお風呂の準備を終えて、濡れた飼い葉の取り替えに回った。

 曇っているので分かりにくいけど、夕方は近そうだ。



 できたスープを飲んで、あたいたちがお風呂を出る頃、パックが起き出して来てスープに取り掛かった。

 大丈夫そうで良かったよー。


 あたいは着替えて火の番に回る。アリスは着替えてからガイコツさんの部屋から持って来た箱紐とマノさんボタン達をずっと見ている。


 あたいはパックがスープとトラ串の夕食を終えたので、片付けを始めた。パックはお風呂のガルツと合流した。


「パックー、湯加減はどーお?」

「ああ、大丈夫だよ」


 下の炉を覗くと最後の燃え残りの薪が周りに散っていたので、棒を入れて集めてあげる。


「もういくらも火が続かないねー。少し足しておくねー」

「ああ、ありがとう」

 こっちはこれでよしっと。


「アリスー、なんか分かったー?」

「マノニイとは直接話せないや。マノさんが通訳ってヒドいと思わない?」

「あー、そうだねー。でも話ができるだけでもいいと思わなきゃー」


「うーーー、そうかな?」

「そうだよー。アリスがわかんないなりに話をしてくれなかったらこの馬車どころか、あたいだって生きてたかわかんないんだよー。ここに居るみんな、アリスがマノさんとお話してくれたおかげなんだよー」

「そうだぞ、アリス。焦ることはない。できることを一つずつだ。それで十分だよ」


 見るとガルツが部屋着を羽織(はお)ってこちらへ歩いて来た。


「で、マノニイって言うのか、ガイコツのボタンは?」

「あのガイコツさん、女のひとだよ。テレーズさんだって」

「そうか。なんであそこにいたのか分かるか?」

「それは分かんない。あのロセンズーの丸は3番目だって。おっきい四角で他と行き来ができたみたい」


「そうか。だがまずパックの町へ行かないとな。あー、その前にどうやって洞穴に戻ればいいのか」

「ちょっと聞いてみたんだ。マノニイが来たからできることが少し増えたみたいなの。見ててねー」


 そう言って少し離れた地面を()でるように手を動かす。

 地面が四角くスーッと下がって行く。3メニほどでできたと言うので、中を覗くと深さ1メルの四角い箱がそこに出来ている。四方に5セロの壁、たぶん下まで、底もちゃんとあるんだろう。ほえー。


「すごいな。材料は土なのか?形は自由にできるんだな?」

「さっすが、ガルツさん。

 そう、あの坂道に箱型の水路をつくっちゃうの。水の行き場所がないから下から作らないとだけど道がキレイになるよ。

 あとねー、木の苗を作れるって。

 枝を10セロくらいに切って、マノさんに根を付けてもらうの。それを頭がちょっと見えるくらいに埋めておくと、上手くいけば来年には若木になるって」


「ほう。それはすごいな。パックが元気になるまで頑張ってみるか」

「あたし先に苗を作ってから、坂を直しに行って来るから、その間にみんなで苗を埋めてほしいかな」


「別の場所で作業するのはまずいぞ。何が寄って来るか分からんからな。馬車はここに置いてピピンに苗木を載せてもらって、山裾(やますそ)から一緒に作業しながら登って来るか」

「あたいもみんな一緒がいいー」


「じゃあピピンのリュックが要るね」

「僕のリュックもお願いします」

 あ、着替えも済ませて顔色が良くなってる。


「作ってもいいけどパックは今日と同じ恰好だからねー。まだ荷物はダメだよ」

「うん。分かった」

「明日も忙しいから早く寝るよー」

「「「おーー」」」


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