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フロウラの末裔  作者: みっつっつ
第2章 チューブ列車
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6 池のキャンプ地・・・ミット

 これまで:西の山の斜面に草木の異様に少ない斜面があった。その只中、チズ上にポツンと見える不思議な洞穴で男の子を拾った。

 洞穴(ほらあな)で拾った男の子はパックっていう名前だった。

 ケルヤークの街から夏の村に畑をしにやって来たそうだ。着いたその日にお父さんが殺され、お母さんとは帰りに(はぐ)れてしまったらしい。


 あの洞穴の奥は(チューブ)っていう乗り物の通り道で馬車を15台も一度に運べたんだって。

 この3日の間になんとかそこまで聞き出したけど、まだ一人で歩けなさそう。


「ガルツー、アリスー、今日はあたいが留守番だねー。山を見に行くのー?実が成ってたら採ってきてねー」


 あたいとアリスが交代でこの子の面倒を見てるけど、今日、やっと一人で用がたせるようになった。良かったねー。


 夏の村のことはほとんど覚えていないらしい。去年も来たらしいことは聞き出したけど、そこまでだった。

 町では食料は配られるものを食べていたそうだ。あたいの村より人がずっと多いようだけど、生活はそんなに変わらないみたい。


「ねー、パックー。あの洞穴の奥って筒だっけー、乗り場なんでしょー?どうやって呼ぶのー?」


「死んだ添乗のテモンドさんか、護衛の人でないと呼び方なんて分からないよ。村の人たちで知ってる人はいないと思う」


 ガルツたちが帰って来たら、アリスのマノさん全開であの乗り場を調べてもらうかー。


 この頃みんなに好評なトカゲ肉の細切れスープを作って待ってることにした。パックもそろそろ、干しトラの串焼きがいけると思うんだ。

 ここの林にはおっきな木の実があんまりない。食べ物の種類が増えないのは寂しいよねー。


「ミット、この大きな箱って何が入っているの?」

「あー、それねー。いつか街に行ったらー、売ってお金儲けしよーと思ってー、あたいたちで作ったものが入ってるよー」


「中を見てもいいかい?」

「開けてあげるよー。あー、カップだねー。いろんな色があってかわいーよー」


「へえー。本当にいろんな色だあるんだね。あ、すごく軽いんだ!」

「この辺が子ども向けのかわいーの。こっちがちょっと渋めの大人向け」


「全部違うんだね。色と形で揃えて並べてるんだ」

「うん、これ見本だからー。注文があったら要るだけ作るよー。あたいのカップはこれだよー。欲しいの有ったら一つ取っていーよー」


「じゃあ、この緑の貰っていいかな」

「どうぞー。で次は……(くし)とブローチだねー」

「うわー、すごい数だ。びっしりだね。次は」

「髪飾りー」

「ふーん。次は?」

「飾り系はまるで興味ないのねー。それじゃ女の子にモテないぞー。次はベルトの金具ー」

「ふーん。あ、この辺、かっこいい」


「気に入ったのがあったら取っていーよー。ベルトはアリスが帰って来てからー」

「うーん、そう言われると迷うなあ」


「別に急がないから後でゆっくり選べばー?次はブンボーグー。ペンやハサミ、定規、石筆、紙挟みなんかだねー」

「変わったペンだけど、インクがないんじゃ?あれ?ペン先はどこ?」


「この色のインクが中から出るんだよー。黒をずらすと、ほらねー」

 あたいは自分の手に黒い丸を描いて見せた。

 青も赤も描いてみせる。

「えーっ、なんで?」

「さあー?アリスが帰って来たら聞いてみなー」


「こんなに色んなものどうやって作ったの?」

「あたいはそれもよく分かんないんだー。次はナイフだねー。パックも一本持ってないとー」

「色んな形があるね。あれ、こっちは柄だけ?」

「それ、刃がしまってあるのー。ここを押して刃を引っ張り出すんだよー。カチンって音がしたら使えるのー。しまう時もおんなじだよー」


「すごい。めちゃくちゃカッコいい!この黒い柄のナイフ、貰っていい?」

「いいけど、これ、とっても危ないから遊んじゃダメだよー。出す時もしまう時もちゃんとカチンってしないとー、ケガするからねー」

「うん。分かった」


「パックはー、武器とか使えるのー?」

「えっ、武器って?」

「今のナイフだって武器だよー。あたいは短剣とー少し長い反りのついた剣を使うよー。あと、弓ー。

 アリスは弓と針ー。細身の直剣ー。

 ガルツは長剣と盾が基本スタイルだねー。弓もすごいよー」


「僕、なんにもできないや」


「ガルツに教わったらいーよ。あたいたちもガルツに教わったんだよー。

 あ、もう一段あったねー。灯りー。このネコ耳、かっわいーでしょー。馬車にも幾つかぶら下がってるけど、真ん中へんを押すと光るのー、ほら」


「わっ!すごいね。どうなってるの?」

「分かんないってー。これも一つ持ってなー」

「こんな高そうなものもらっていいの?」

「えっ、これ高いのー?」


「いや、見たことないし、聞いたこともないもの、きっとすごい値段が付くよ」

「ふーん、それよりお茶にしよーよ。いま淹れるねー」


   ・   ・   ・


 午後も遅くガルツたちが帰って来た。

 夕飯もお風呂の準備も万端だよー。薪木も枝を切って何本か運んであるしー。洗濯ものは干したしー。


「おかえりー。どうだったー?」

「どうも薪が欲しくて根こそぎ切っているみたいだ。枝を何本かにして置けばいいものを」

「それでどーするのー?」

「どうにもならんよ。俺たちにできることはないな」


「ふーん。あのねー、パックに聞いたんだけどー、あの洞穴の突き当たりってー、(チューブ)ってゆー馬車がいっぱい乗れちゃう乗り物が来るらしーよ。呼び方はエライ人しか知らないってゆーんだけど、アリスー、マノさん全開で調べて見ないー?」


「ガルツさん、どうしようかー?やってみる?」

「いいんじゃないか?この辺りに大きな街は見えないし。その乗り物ってのも見たいよな」

「わーっ、良かったよー。あたいも見たいものー」


「で、パックの様子は?」

「今日一人で用がたせたよー。少しづつ動かないとだねー。カップとー、ナイフとー、灯りを持たせたよー。ベルトの金具も気に入ったのがあったみたいー。

 あ、武器はまるっきりだってー」

「ベルトって言っても、あの服じゃしょーがないだろう。布地、まだあったか?」

「あると思う。あたし見てくるね」


「あたいは夕飯の煮炊きを始めるよー」

「俺も……水汲みも薪もやっちゃったのか。ミット、少しは残しとけよ」

「えーっ、狩にでも行って来なー」

「今からどうしろと。晩飯食いそびれるだろ」

「あはははは。パックとアリスのよーすでも見て来たらー」


 ガルツが肩を落として馬車へ行ったので、あたいは沸き始めた鍋に具材投入ー。干しトラ肉も火の周りに刺して焼け具合を見る。


 そろそろ呼んでいーかな?


「もう出来るよー。ご飯だよー」


 バタバタと3人が降りて来る。今日もワイワイと楽しい夕食だー。


「アリスー、お風呂点火ねー」

「はーい」

「鍋はもうちょっとかなー。トラ肉はいーんじゃないー?」


   ・   ・   ・


 夕飯の後はオッフロー。あたいたちが先に入ることになった。

 上がると、ガルツー、パック組だー。


 火加減を見に行った時に声をかける。

「パックー、下着作ってあるから、上がったら着てみてねー」


 昨日まであまり動けなかったので、巻き付けるようなものしか(まと)ってなかったからねー。


「普段着はクマさんの皮で作ろーか。ヘビさんあるだけ混ぜちゃうけど、あんなに固くはならないよ。ガルツさん、またどっかでヘビさんに会えるといーね」

 白ヘビの皮はガルツの長剣でさえ弾くからねー。


「俺はあんまりやりたくないぞ?」

「カイマンでもいーよ。丈夫な皮が欲しいよね」

「やれやれ」

 火加減はこんなものかなー。あたいは馬車に戻ってお裁縫がしたい。


「パック、のぼせるからもう上がれ。そこのタオルで体拭いて。できそうか?」

「うん。できると思う」

「アリスー、パックが上がるぞー」

 後ろからガルツの声が追いかけてきた。


「はーい。下着を着たら馬車に乗ってー。どーお?きついとかない?」


「うん。大丈夫。あのタオルって気持ちいいね」

「そーでしょー。あたいの要望ーなんだからー」

「下着は3枚づつでいーかな?シャツ作ってみるねー。………クマさんこんな感じか。灰色っぽいな。どーお?もっと白くもできるよー?」


 どうもパックは黒い色が好きらしい。汚れるのなんのと言って黒ずくめにしようとするのをあたいとアリスが(なだ)(おだ)てて明るい色をできるだけ入れさせた。


「どーだろー?ズボンは濃いめが良いよねー?

「上着は薄めの灰色?青ちょっと混ぜようか。

 ………んー。ガルツのよそ行きじゃあわないなー。シャツっぽい形でいーか。

 ………ちょっとガボッとした感じで、袖をボタンで詰めてー。エリはちょっと立ててみよう」「なんか良いかもー」


「あっ。なんかカッコいい。あ、ベルト!」

「あー、そうだったねー。じゃ金具を選ぼー」

「あ、これがいい!」

「弓のだね。ガルツさんとお揃い。皮はどうする?あたしはこんな感じのウサギー」

「あたいはネコ柄ー」


「うえっ。模様はなくていい……色は真っ黒がいいけど?」


「あとは靴か。いまの見ていーい?」

「あ、脱ぐよ」

「ふーん。スポンと入るだけなんだね。

 あたしのはガルツさんの真似っこだけど、ヒモで締めるから動きやすいよ。どーする?」


「えっ、これじゃだめ?」

「傷んでるとこ直すのは出来るけど、足場の悪い所でこの靴だと捻ったりしそう」

「うーん、でもお金ないし、靴屋だって無いのに……」

「それゆーなら服屋だってないよー。アリスが作ってくれるから安心しなー」

「やってみるねー………どーかな?履いてみて」

「うん、良さそう」

「明日、調子が良かったら筒の乗り場、見に行くから、歩いてみて痛くなるようなら直すよ」


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