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77話 ランクアップしました。

 

「ひとまず今日のところはここまでにしておきましょうか」


 ソフィアさんがそう言って、乱れた着衣を整えながらベッドの上で座り直した。


「テオ、お疲れ様でした」


 テトラが俺の頭を撫でながら、熱っぽい表情で頬を赤く染めていた。


 ソフィアさんにしてもらった魔力の矯正。

 それは多分、上手くいったと思う。

 自分の体を巡っている魔力の流れが、変わったのが分かる。


 落ち着いているのだ。

 高揚感を感じてはいるのに、心は静かさで満ちている。


「今ので、大体三分の一ほどが矯正されたと思います」


「三分の一……」


「各地にいる聖女の子たちにも協力してもらえましたので、様々な加護が作用していると思います」


 そう、今回の魔力矯正に当たって、ソフィアさんが他の聖女に呼びかけてくれたとのことだった。


 聖女たちは繋がっているから、そういうこともできるらしい。

 最初に会った時に、ソフィアさんはそれを教えてくれていたもんな。他の聖女様たちと会ったことはないけど、それでも今回の矯正を手伝ってくれたとのことだった。


「あの、ソフィアさん、ありがとうございました。それと、他の方達にもお礼をお伝えしていただきたくて……」


「ふふっ。どういたしまして。彼女たちも『どういたしまして』と言っております」


 ソフィアさんが柔らかい笑みを浮かべながら教えてくれる。


「とりあえず、今日のところは彼女たちとのリンクはもう遮断しましょうか」


 バチィ!


『『『ああ……!』』』


 どこかから、名残惜しそうな声が聞こえた気がした。


 そして、俺たちが改めて向かい合った時だった。




 ランクが上がりました




「あ! テオのランクが上がったよ!」



 俺の降臨の腕輪が光った。

 コーネリスたちも感じ取ったのだろう。腕輪の中にいた三人が出てきて、みんなの体が淡い光を帯びていた。

 テトラの体も光っている。あと、指輪の中にいた従魔のシムルグの体も同様に光っている。


「とりあえず、今のテオの状態を調べてみるね」



 名前 メテオノール 

 スキル 降臨術師★★


 ・契約者(1) テトラ 


 ・眷属 コーネリス 

 メモリーネ 

 ジブリール


 ・従魔 シムルグ(幼体)



「おお! スキルの星が増えてる!」


 確かに以前確認した時よりも、星の数が一個多くなっている。前までは一個だったもんな。

 テトラの力を使えば、こんな風に自分の状態を確認することができるのだ。


「あと、加護も確認できるよ」



 《加護》


 ・月光竜の加護


 ・蒼龍の加護(中)


 ・黒龍の加護(微)


 ・白桃鳥の加護(微)


 ・深緑鳥の加護(微)


 ・銀多頭龍の加護(微)


 ・氷の加護(微)・虫の加護(微)・草の加護(微)・空の加護(微)・炎の加護(微)・水の加護(微)・地の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)・光の加護(微)……。


 *魔の加護(大)



「おお! 知らない加護がたくさんついてる!」


「ほんとだ」


 俺が知っているのは、月光龍の加護だけだ。

 テトラの加護が月光龍の加護。


 蒼龍の加護は……ソフィアさんのかな。

 あとは、初めて聞く加護だ。特に光の加護がたくさんついてるみたいだ。


「恐らく他の聖女たちの加護が一時的に付与されているのでしょう」


 ソフィアさんが教えてくれる。


「光の加護は聖女そのものが持っている加護になります」


「じゃあ魔の加護は……」


「あっ」


 魔の加護(大)。


 他は(微)が多いのに、魔の加護だけ(大)になっている。


「これは恐らく……テトラ様の……」


「わ、わぁぁぁぁああああああああ」


 テトラが『魔の加護(大)』を慌てて隠す。ソフィアさんの目の届かないように。


 テトラは一応、魔族でもある。魔族といったら教会の敵。そしてソフィアさんは教会側の人だ。


「……み、見た?」


「すみません。少し、目にゴミが入ってしまって、よく見えなかったような……見えたようで、見間違えたような……」


「ギリギリセーフ……ですか?」


「……セーフです」


 ソフィアさんが顔を逸らしながら、自分の目を両手で覆っていた。


「……しかしテトラさん。もしテトラ様が魔の者であるのなら、流石にその時は……アウトになるかもしれません」


「……ありがとうございます」


 深々と頭を下げるテトラ。

 ソフィアさんはコクコクと頷いた。彼女は見逃してくれるみたいだった。


「それと、あ! テオ、何か取り出せるようになったみたいだよ! 『お守りのペンダント』だって!」



 ・『お守りのペンダント』


 スキルのランクが上がったことで、解放されるアイテム。

『降臨の腕輪』や『眷属の腕輪』と同系統の装備。

 スキルによって取り出すことが可能。

 眷属、従魔に限らず、任意の対象に譲渡可能。


 所持者に、主人の加護を付与し、リンクを可能にする。

(現在、使用可能個数 × 2)




 紅紫色のペンダントだ。

 形は薄く、ペンダント部分には六角形の宝石。紐の部分も頑丈で、全体的に重さを感じられない作りになっている。


「お守りのペンダントは、テオのスキルだからこそ使えるアイテムだよ。ペンダントを持っている人に、テオの加護を与えるの。だから、離れたところにいる人とかに持ってもらうといいの。それがその人のお守りになるの」


「なるほど」


 眷属の腕輪で、俺がテトラやコーネリスたちとリンクしているように。

『お守りのペンダント』を渡せば、眷属ではない人とそうやってリンクできる。


 数は今のところ二つ作れるらしい。

 ランクが上がればもっと作れるようになるみたいだ。


 そうなると……一つはアイリスさんに渡したいと思った。

 アイリスさんはあれから月光龍の巣に泊まるようにすると言っていたから、あそこは安全な場所だ。それでも、何かあった時のためにも、アイリスさんには持っておいて欲しい。


「うんっ。私もいいと思う!」


「なら決まりだ」


 残りは、もう一つ。


「あの……ソフィアさん。もしよろしければこれを受け取って頂きたくて……」


「……わ、私に……。あ、ありがとうございます」


 俺が恐る恐る差し出したペンダントを、恐る恐る受け取ってくれるソフィアさん。


「……殿方からプレゼントを頂くなんて初めてです……。なんだか、とても、ドキドキしました」


 顔を赤くして、もじもじとしながら、ソフィアさんが恥ずかしそうにしている。


 もしかしたら、必要ないかもしれない。

 それでも、持っていることで彼女の役に立てる可能性があるのなら、持っておいてほしかった。


 とにかく。

 これがランクアップでできるようになったこと。

 今回、俺のスキルがランクアップしたのは、ソフィアさんが魔力の矯正をしてくれたからだと思う。

 あと、ランクアップしたことで、眷属の能力も上がったとのことだった。こっちは各自の感覚的なものみたいだから、また今度街の外に行った時に調べてみるのもいいかもしれない。


「っと……もうこんな時間か」


 窓の外を見てみれば、夕日が沈み始めている。

 あまり長居をするのも悪いし、そろそろ帰り支度を初めようと、俺とテトラは動き出そうとする。


「あ、あの……」


 ちょこんと、俺とテトラの服が握られる感覚があった。

 見てみると、ソフィアさんが小さく俺たちの服を握っていた。


「テオ様、テトラさん。もしよろしければ、しばらくこの屋敷に泊まって行きませんか……?」


「え、いいの!」


 恐る恐る聞くソフィアさんに、顔を輝かせるテトラ。


「はい……。せっかくですので、私ももっとテオ様やテトラさんと色々お話をしたいと思いまして……。それに、私は今まで、お友達と家で遊んだことがないので、誰かを家に泊めて、お泊まり会をするのに憧れていまして……」


 頬を赤く染めたソフィアさんが、もじもじとしながら恥ずかしそうに教えてくれる。


「もちろん、ここは教会に関する場所でもあります。聖女の屋敷ですので、お二人の事情を考えると難しいのも分かっています……。その上でご迷惑でなければですけど……」


 そんな気遣いをしてくれるソフィアさん。

 彼女は最初に会った時も、そういうことを気にしていてくれた。


「テオ、どうしよう」


「……せっかくだし、お言葉に甘えるのもいいかもしれない……」


「「本当!?」」


「うん」


 二人の顔が同時に明るいものになる。


 もちろん、考えなかったわけじゃない。

 ソフィアさんも言った通り、ここは教会に関する建物でもある。

 だけど、常に警戒はするようにしている。

 ソフィアさんもそれは分かってくれていて、それを踏まえた上で誘ってくれていて、それでも大丈夫だと思った。


「テオ様……ありがとうございます」


「あの、こちらこそ、お世話になります」


「ソフィアちゃん、お邪魔しますね」


 テトラも嬉しそうだ。ソフィアさんも、少し照れくさそうにはにかんでいる。


「では、準備をしませんと。この屋敷にいる間は、自由に屋敷の物を是非お使いください。あと、人数分のお布団も用意して……そうだっ。テオ様は汗をおかきになっていますし、このままでは風邪を引いてしまいます。お風呂の準備を致しますね」


「お風呂!」


 テトラの瞳がキラッと光った。


 そうして数日の間、ソフィアさんの屋敷での日々が過ぎていった。


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