(間話) 各地にいる聖女様は、彼の活躍をちゃんと見ていた。
各地にいる聖女様たちの話です。
第1章のエピローグになります。
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「どうやらテオ様は、無事に村のことを納めてくださったみたいですね」
聖女ソフィアは遠くにいるテオたちの活躍を感じ取ると、優しい眼差しで微笑んだ。
「テトラさんも白龍の加護を受けることができたみたいですね」
テトラのことにも、ほっと胸を撫で下ろした。
自分たちが育った村の危機を救ったテオたち。
ちゃんと見ている人はここにもいる。
村での暮らしは決して良いものではなかった。それでもテオは村の危機を救ってみせた。
それは誰かが褒めてくれるわけでもない。現に村人たちは、ありもしない空想に感謝をしている。
それでもソフィアはちゃんと見ていた。
テオが頑張ったところを。
「テオ様、お疲れ様でした」
遠くから、テオのことを思い浮かべるソフィア。
それだけで彼女は自然と穏やかな気持ちになれた。
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そしてテオが村の危機を救ったことを知っているのは、各地にも少なからずいた。
そう、それは各地にいる聖女たちだ。
「「「テオくん、また頑張ったんだね……!」」」
彼女たちはテオが村に帰って来た瞬間、瞬時に気づいた。
あの村には未だに神父が滞在している。聖女は、教会に所属しているその神父たちを通じて、その周辺のことを視ることができるのだ。
だからこそ、テオが魔物の脅威にさらされていた村を救ったこともちゃんと知っていた。
人知れずまたしても村のことを支えたテオの行動を、各地の聖女たちはばっちり見守っていたのだ。
「テオくん……この前よりも強くなってます……! 赤黒い魔力を弾けさせるなんて、やっぱりテオくんは素敵です……!」
うっとりとした表情で、自室のベッドの上にぺたりと女の子座りをしている聖女が、テオに対する思いをまた積み上げた。
テオと実際に会ったことはない。だけど、彼女はテオにメロメロだった。彼女にとって、テオはすでにかけがえのない存在になっていた。
「いろんな人を救うなんて……テオくんはすごい。聖女じゃなくても、ここまでやれるんだもん……。いいな……」
そう言ったのは、また別のところにいる聖女。
彼女は眩しいものを見る瞳でテオのことを見つめていた。
「やっぱりテオくんは計り知れない……。あの赤黒い魔力は、絶対に普通じゃないもん。ああ……私もテオくんに会いたい」
また別の場所にいる聖女は、どうしようもないほどにテオに会いたがっていた。
ついこないだまでは、神父に苦戦していたテオなのに、今では白龍、それも月光龍と渡り合うまでになっている。
テオの力は想像がつかない。きっとテオはすぐにまたそれすらも超えると思う。
「テオくんはやっぱりいけない子でした。白龍と戦闘を行うなんていけない子です。あれは戦うものではなく、逃げるか、攻撃を防ぐかなのに」
そして別の場所にいるその聖女は、わなわなと怒りを込めた拳を握り、テオのことを感じ取っていた。
「あれだとテオくんが怪我をしてしまう危険があります。白龍も、私のテオくんにあんな危ないことをするなんて、私がこの手で粛清しないといけません」
『ふふっ。今、テオくんのことを『私のテオくん』って言ったから、もう認めたんだね。ただテオくんに会いたいだけって』
「ち、違います。わ、私はただ、テオくんが心配だっただけです」
顔を赤くして、慌てて弁解するその聖女。
彼女は、そう思わずにはいられなかった。
……分かっている。白龍のあれは、自分も聖女としての儀式で受けた洗礼だ。
あれがあるからこそ、自分は聖女として、今もこうして何者よりも上の立場にいるんだ。
「だけど、ああいう乱暴なのはいけないと思います。そうですよね、黒龍さん」
彼女はそう言って、自分のそばにいる存在をじとっとした目で見た。
見られたその存在は、気まずけに顔を逸らした。
その他にも、各地の聖女たちは今回のテオの善き行いを見ていた。
世界を救う聖女様。彼女たちがテオを見る瞳には、憧れと、親しみと、そして救いを求めるような羨ましげな気持ちが、宿っているのだった。
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第2章からは聖女ソフィア編になると思います。
開始から眷属を二連続で作ったりするので、読んでいただけると嬉しいです。
続きが気になる。
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