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42話 色々なお知らせ

 

 コーネリスという眷属がいてくれるおかげで、できることがうんと増えたと思う。

 移動に、戦闘。あと賑やかになったのも、楽しいかもしれない。


 街に来てからやろうと思っていたことは、これである程度達成することができた。

 身分証も作ったし、ローブも買った。


 あと、やることといえば……。


「必要なものの買い出しに行こうか」


『「買い出し……!」』


 まだ、やってなかったもんな。




 そういうわけで俺たちは街に戻ることにして、門をくぐり、人混みに溢れる街の中を歩き始める。

 隣にはテトラがいて、銀色のローブのフードを深く被っている。そしてはぐれないように俺の手をしっかりと握ってくれていて、俺もその手を握り返した。


 立ち並んでいる露店や、屋台。いろんなものが街の中には溢れかえっていて、香ってくるのは甘辛いタレのかかった串焼きの匂いや、クリームがたっぷりと乗せられているお菓子の甘い匂い。美味しそうなものばかりが売ってあるのが目に入ってくる。


「テトラ。どれがいいかな……?」


「う〜ん、迷うけど……。じゃあまずは、あれ食べたい……!」


 あれは、ホットケーキか。


 俺はそのホットケーキがある屋台に行き、二つ購入する。

 片方を渡すと、フードの下から覗くテトラの琥珀色の瞳が輝いていて、テトラは早速一口食べた。


「んー! 美味しい……! 甘いは正義だよ……! それに懐かしいね……。アイリスさんのお家で食べたホットケーキに似てるね」


 美味しそうに、懐かしそうに、そう言って笑顔を見せてくれるテトラ。

 村にいた頃は、アイリスさんが作ってくれていたから、俺も懐かしくなる。


「はい、コーネリスも」


『……いただきます。……あっ、甘いっ』


 ペロペロとクリームを舐めるコーネリス。


 ちなみに今のコーネリスは、動物の姿でフードを被っているテトラの肩に乗っている。

 あれは、レッドマルクルスといって、コーネリスの元々の姿とのことだった。


 せっかくだから、そんなコーネリスとも街の中を巡っている。

 人の姿で歩いてもいいと思うけど、コーネリスはそっちの姿の方が落ち着くかもしれないとのことだった。


『ええ、やっぱり私の本来の姿だからかもしれないわ』


 ……らしい。


『でも、ご主人様。……いいの? お母様とご主人様のデートなんだから、私は腕輪に入っておいてもいいのに……』


 そんな気まで使ってくれる。


 でもそれに関しては別に気にしなくてもいい。

 むしろ、レッドマルクルス姿のコーネリスのことをテトラは気に入ってるから、そうやってテトラの肩に乗っているとテトラも楽しそうに笑ってくれている。


 それならいてくれた方が俺も嬉しい。一人だけ腕輪の中に入ってるは、寂しいもんな。


「テオ、ありがとね。コーネリスちゃんもありがとね」


 クレープを食べ終わったテトラがそう紡ぎながら、コーネリスの頭を撫でて、俺の腕を抱いた。


「私ね……今とっても楽しいよ」


「うん」


 俺はフードの上からテトラの頭をそっと撫でた。


 ただ、純粋に楽しかった。


 そして、思った。

 テトラのこの笑顔を守りたい、と。


 そのためなら、俺はなんだってできると思う。


 しかし……そんなことを思いながら街の中で買い物を続けていると、気になる噂話が耳に入ってきた。


 ……それはこんな話だ。



「まだ、詳しい情報は入ってないみたいだけどね、オークが繁殖していたあの森のオーク達が、一日でいなくなったみたいよ」


「私も聞いたわ。あの森は長い間オークが繁殖しすぎていて、周りにも被害とか出てたみたいだけど、ほぼ全滅してたのよね。それはいいことだけど、誰がやったか分からないから、怖いわ」


「また別の恐ろしい魔物が住み着いたんじゃないかだって」


「「「不安ね……」」」



「……こ、これは」


 その話が耳に入った瞬間、俺は冷や汗を垂らした。


 ……ひやりとした。


 オークが繁殖していた森……。そこは覚えがある気がする。

 多分……あの森だ。コーネリスの件があった時の、あの森……。


『ええ、そうね……。ご主人様が私を助けてくれた時に、オークを倒してくれた森ね……』


 コーネリスが声を潜めてそう言う。


 そんな話が今は街の中のいたるところから聞こえてくる。

 オークの群れが倒されたこと自体は問題ないとのことだが、なぜそうなったのか分からないから不安とのことだった。


 だから、原因不明のその状況に恐ろしく思っている人もいるとのことで……少し問題になっているみたいだ。


『「……ご主人様……」』


 テトラとコーネリスが不安そうな瞳で恐る恐るこっちを見た。


「……こうなったら、周りの記憶を打ち消すか……」


『「……ご主人様!?」』


 ……できなくはないと思う。

 この前、聖女のソフィアさんもさりげなくそんなことをやってたから……それを使えば、周りの記憶を打ち消すこともできるかもしれない。


「……と、とりあえず、ギルドに行ってみよう」


 一応、コーネリスとテトラを腕輪に戻し、俺はギルドへと足を向ける。


 そしてギルドにたどり着くと、人だかりができているのが分かった。

 掲示板のところには、こんな紙が貼ってある。



【緊急の知らせ】


 ・街の北西にある森【ルースの森】の森にて、近年問題視されていたオークが多数死滅しているのを確認された。

 ・原因は不明。現場には、オークの残骸を確認。

 ・新たな魔物が発見された可能性もある。


 ・近々調査隊を出すため、森には近寄らないようにしてください。

 ・この件に関する情報を持っている者はギルドへの報告のご協力をお願いします。



 やっぱりあの森だ……。


「…………」


 ……俺は額を押さえた。

 心臓がばくばくと音を立てている。


 そしてその知らせが貼られている隣には、こんな知らせも貼られているのを見つけた。



【ローカ村、壊滅危機のお知らせ】


 現在、ローカ村が魔物の襲撃を受けており、苦しい状況にあるとのことです。

 詳細は不明。



「ローカ村……」


 それは……俺とテトラがいた村の名前だった。


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