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38話 あつくなっちゃった (2)

 

「ごしゅじんさま、二人の時間を邪魔してごめんなさい……。でも、あつくなっちゃって、我慢できなかったの……」


「コーネリス……」


 夜の部屋の中で、腕輪の宝石に宿っていたコーネリスが姿を現した。

 コーネリスは街にいる間は腕輪に宿るようにするとのことで、宿の中でも「腕輪に宿るわ!」と言っていた。

 だから今まで腕輪に宿っていたけど、どうやら暑くなったから腕輪の中にいられなくなってしまったとのことだった。


 そんなコーネリスは息を荒くしていて、顔なんて真っ赤になっていた。

 薄手の白い生地の服がはだけていて、そこから鎖骨がのぞいている。彼女の額から汗が溢れて、それが彼女の白い肌の上を滑るように、頬に、首に、そして鎖骨へと、つつーっと落ちていた。

 その姿を見る限り、本当に暑そうだ。


 そして時より、ビクンと体を震わせていて、何かに耐えているようでもある。


 体は火照っていて、全身が赤く色づいている。


 湿っている唇からは暑い息が漏れていて、瞳は溶けそうだった。


「あ、あの、んふ……っ。ごしゅじんさま……っ。ごっ、ごめんなさい。少し、私の眷属の腕輪を外してもいい?」


 時より体をビクビクと跳ねさせながら、切なそうに聞いてくるコーネリス。


「い、いいよ?」


「あっ、ありがとっ」


 そんなコーネリスは内股で俺の元まで歩いてきて、俺の腕に嵌められている眷属の腕輪をゆっくりと外した。


 その瞬間、


「ん、はぁ……はぁ……はぁ……。やっと……くすぐったいのがなくなった……」


 まるで解き放たれたように、深呼吸をするコーネリス。

 床にぺたりとへたり込み、ろれつの回っていない声でそう紡ぐ。

 余韻に浸るように小さくビクビクと体を跳ねさせながら太ももを擦り合わせていて、その赤い瞳はとろけていた。


「ごしゅじんさま、お母様、本当にごめんなさい。お楽しみの時間を邪魔してしまったわね」


「「あ、ううんううん、全然全然」」


 俺とテトラはぶんぶんと首を振って、何事もなかったように装った。


 ……そうだった。

 腕輪で通じてるから、コーネリスはベッドの上で俺たちが抱き合っていたのも見えていたのか……。


「「〜〜〜〜」」


 俺とテトラは乱れていた服装を、そっと整えた。


 しまった……。頭から抜け落ちていた……。

 コーネリスが見ている中で、テトラに甘えてしまった……。

 気をつけないといけなかったのに……。疲れが出てしまって、注意力が散漫になっていた……。


「ごしゅじんさま、本当にごめんなさい。せっかくお母様の胸に顔を埋めて甘えていたのに、邪魔してしまってごめんなさい……」


「わ、分かった。分かったから、もう本当に大丈夫だから……」


 ……そんなに何度も謝らないでほしい。

 逆に恥ずかしくなってくる……。


「テオ、せっかく私の胸に顔を埋めてバブバブしてたのに、ごめんね」


「わ、分かった。分かったから、もう本当に……」


 俺は慌ててテトラの口を抑える。


 もう忘れてほしい……。


「「ご主人様、本当にごめんなさい……」」


「も、もう、本当に分かったから……」


「「ふふっ」」


 可笑しそうに微笑む二人。


 ……それよりも気になることがある。


「それで、コーネリスはさっきは何があったのかな? 苦しそうだったけど」


「あ、あれはくすぐったくて暑くなったから、腕輪から出たの」


 汗で張り付いた前髪をいじりながら答えてくれる。


「ほら、私はご主人様と腕輪で繋がってるでしょ? だから、ご主人様とお母様がこそばゆいことをしていると、こっちまでこそばゆくなっちゃうの……」


「「〜〜〜〜」」


 ああ……そういうことか……。


 つまり腕輪でつながっている限り、そういう感情も伝わってしまうんだ……。


「眷属の腕輪の中はね、ずっとごしゅじんさまに包まれているみたいな気持ちなの。だから、ご主人様がお母様と仲良くしてると、私の中にもそういう気持ちが入ってきて、あのままだと二人のそういう感情に飲み込まれそうになったの……」


 そのせいで、息が荒くなっていて、汗ばんでいたということらしい。


「…………」


 ……俺は絶句した。


 そして、改めてコーネリスの眷属の腕輪をはめてみた。

 色は赤。宝石の部分も赤。


「あ……っ、またくすぐったいのが……っ」


 俺が腕輪をはめた途端に、コーネリスがビクッとして、くすぐったそうに体を跳ねさせる。

 その顔も赤かった。


「実はそれ……私もずっと感じててね……。腕輪をはめていると、テオのそういう気持ちがいっぱい分かってすごいんだよ?」


「…………」


 隣を見てみると、テトラがくすぐったそうに身をよじらせていた。

 その顔も赤くて、二人とも真っ赤っかだった……。


「…………」


 俺はそんな二人を見ながら、絶句して……。


 ……自分の至らなさに、胸をかきむしりたくなるのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ということは、二人があんなことやこんなことをすると、コーネリアにもその感情や起伏を感じることになるということか・・。 なんなのかは各々のご想像に任せましょう・・。
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