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31話 ご主人様とお母様

 

「それで私を呼び出した理由はなあに? 何かをさせたかったから、ご主人様は私を降臨させたんでしょ?」


 自分の髪の先をいじりながら、「ふんっ」とつまらなそうに聞いてくる彼女。


 その雰囲気は先ほどまでとは違い、ガラリと性格も変わっている。


 さっきまではどこか静かな印象を受ける感じだったのだが、今の彼女は見た目から受ける印象と同じだ。

 赤をベースにしたスカートタイプの服装。銀色の服が合わせられていて、その銀色はちょうどテトラが今着ているローブと同じような色合いだった。

 細かなところには琥珀色があしらわれており、その部分は今俺が着ているローブと同じ色合いに見える。


 赤色の彼女の髪は、毛先だけ銀色になっている。

 テトラの髪の色も毛先だけ色が違っているから、それと似ているように思えた。

 彼女の瞳は赤色だけど、やっぱり全体的にテトラに似た雰囲気を感じる気がする。


「ええ、そうよ。私はご主人様とお母様の特徴を半分ずつ受け継いで降臨したんだもの。その影響が出るのは当然よ」


「あ! 今、私のこと、お母様って呼んでくれた……! テオ! この子、いい子だよ……!」


 パァっと明るい顔になったテトラが、彼女をぎゅっと抱きしめた。


「あ……っ、ちょ、ちょっとぉ……、いきなりそういうことしないで……っ」


 顔を真っ赤にした彼女が、慌てながら戸惑っている。


「と、とにかく! 私は二人の魔力で降臨した眷属よ。で、そんな私はなにをすればいいのかしら? 命令してくれれば、なんだってするわよ?」


 命令……。


「ええ、そうよ。なんでもいいのよ。だって私はご主人様に降臨させていただいた眷属なんだもの。ご主人様の命令を聞くのは、当たり前のことよ」


「……そっか。でも、今すぐにしてほしいことは……ないかな」


「あら、そうなのね」


 彼女が意外そうな顔をする。


 だけど、彼女もまだ出てきてくれたばかりだ。

 俺が眷属を降臨させた理由は、もし何かあった時にテトラを守れるようにするためだ。

 だから、その時には力になってもらいたいけど、今すぐにしてほしいことはこれといって思いつかない。


 今は出てきてくれただけで十分だった。


「ふぅん、分かってるじゃない。うちのご主人様は謙虚なのね」


「そうなのぉ〜、テオは優しくて、かっこいい男の子なの〜」


「そうみたいね。まあ……そこだけは評価してあげてもいいわ」


 髪の先をいじりながら、彼女がつまらなそうに呟く。


「……でも、せっかくだから私の力を見せておいた方がいいわよね。ちょうどこの辺なら安全そうだし、見てなさい」


 彼女はそう言うと、赤い髪をなびかせながら浮かび上がった。


 そして、


「燃えて、痺れなさい……! サンダーフレイム……!」


 次の瞬間、空の中にいる彼女を中心に、赤い魔力が集い始める。


 右手には炎のような魔力。左手には雷のような魔力。


 ゴオォという灼熱と、バチバチと弾ける赤色の電撃。


 それを片方の手ずつに発動された結果、大気を震わせる魔力が巻き起こる。


「「お、おお……!」」


 俺もテトラも見入ってしまった。


 そして彼女はそれを真下に向かって、一気に放った。


「サンダーフレイム……!」


「「……!」」


 爆音。空気が弾ける。地面が揺れる。

 土煙が巻き起こり、それが晴れた後には赤い魔力がバチバチと振りまかれていた。


「ふんっ。試し打ちとしてはこれぐらいというところね」


「テオ……! あの子、すごいよ……!」


「うん」


 本当にすごかった……。

 魔力の質も、使い方も、なにより魔力が丁寧だ。

 その証拠に地面には傷一つついていない。さっきの威力なら地面をえぐることもできそうだけど、彼女がそうなるように調整していたんだ。


「ふんっ。でも、この私の魔力は二人のおかげなんだけどね。ご主人様の魔力とお母様の魔力を受け継いだおかげで、私、ものすごい魔力を持ってるんだもの。……って、あ、そうだったわ。まだ、あれを作り出してなかったわね」


 何かを思い出したようにそう言った彼女は、こっちに戻ってくると俺のそばに立った。


 そして、


「ご主人様、こっちに顔を向けて?」


 その言葉に俺が顔を向けると、彼女は俺の首の後ろに両手を回して、そのまま口づけをしてきた。


「ちゅ」


 つま先立ちで、俺の首筋に。


「あ、出てきたわね」


 そうすると、出現したのは二つの腕輪。


「『眷属の腕輪』。確か眷属はこれを嵌めるんだったわよね。じゃあはい、ご主人様。私に嵌めてくれるかしら?」


「もちろん」


 腕輪の一つを俺に持たせて、自分の手を向けてくる彼女。


 俺は頷き腕輪を握ると、綺麗に整えられた彼女の指先からゆっくりと腕輪をくぐらせていく。


「ふぅん……。なかなかいいかも……」


 腕輪の色は赤色。

 ふちの部分が銀色になっており、宝石の色は赤色だった。


「ふふっ」


 それを空にかざした彼女はどこか嬉しそうな表情で、少しだけ子供っぽく見えたその彼女の姿に、俺とテトラはなんだか和んだのだった。


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