30話 今度こそ本当の彼女!
『……私を降臨させたのは……あなたたち?』
俺たちの目の前に、一人の少女が佇んでいる。
それは赤い髪をした女の子で、この前、初めてスキルを使った時に応えてくれた子だった。
彼女も俺たちの姿を見ると、「あっ」という顔をして……。
『ご主人様。この前ぶりです。また会えましたね』
そう言って顔を綻ばせてくれると、優しげに微笑んでくれた。
『こうして会えることを、私は心待ちにしておりました。そしてようやく会えました』
彼女は俺に身を寄せてくると、そのまま俺の首の後ろに手を回すような感じで、甘えるように抱きついてきた。
……のだが。
『……でも、おかしいわ』
「「……おかしい……?」」
『ええ、おかしいの。私の髪はどうして赤いのかしら……?』
自分の髪の色を見た彼女が、不思議そうに首を傾げる。
……確かこの子はこの前もそうだった。
これは私の体ではない、私はまだ順番が違ったみたい、……と言って、自分の髪の色は赤色ではないと言っていた。だからこそ、彼女はあの時、眷属になるのを先送りにしたんだ。
だけど……今こうして俺たちの目の前にいるのは、あの時と同じ赤い髪の女の子の姿で……。
「「『変わってない……』」」
……だとすると、今回もまたスキルに何か不備でもあったのだろうか……。
『ご主人様のスキルは、あらかじめ出てくる順番が決まっているの。まだ私の番ではないし、これは私の体ではないわ。この前と同じことになっているのだけど、どうしてかしら……?』
「「……どうしてだろう……」」
俺もテトラも彼女も、同じく首を傾げた。
だとしたら、本来、降臨してくれるはずの眷属はどこにいるのだろう……。
そして彼女は『少しだけ時間をもらいます』と言うと、俺の腕輪に手を伸ばし、その後、目を閉じて何やら探るかのように腕輪に触れ続けていた。
『……この子でもない……。この子でもない……。この体の本来の子は…………見つけたわ。この子ね……』
ほどなくして、静かに目を開ける彼女。
『ご主人様。これはこちら側の不備です。本来のこの体の持ち主が、意図的に私をこの体に押し込めようとしたみたいです』
「意図的に……」
『ええ、だから少し強引に引き出そうと思います。そのためにも、ご主人様の魔力を分けて頂いてもよろしいでしょうか……?』
「うん。もちろん」
『やはり素敵なご主人様です。私も早く本当の体でご主人様のお側にいられるようになったらいいのに……』
彼女はポツリと寂しそうに呟いた。
その表情にはどこか切なさが混じっているかのようだった。
そして彼女は「魔力をいただきます」と言うと、再び俺の首の後ろに手をまわして、そのまま口づけをしてきた。
『ご主人様。……ちゅっ』
「ああぁ……っ」
爪先立ちになる彼女。彼女は胸を俺にぴったりとくっつけてきて、自分の唇を触れさせていた。
唇に熱を感じた。隣からはテトラの声が聞こえた。それでも彼女は止めることなく口づけをし続けていた。
『またいつ会えるか分からないから、今だけ、もう少しだけ……ご主人様を感じたい』
そう囁いた彼女は、やはり寂しそうで……。
そして、しばらくして頬を赤らめた彼女が俺の耳元でこんなお願いをしてきた。
『……多分、少し困った子が出てくると思うけど、悪い子ではないからどうか見捨てないであげて』
その次の瞬間、
「「う……!」」
バチバチと、真っ赤な魔力が場を支配する。
先ほど彼女を呼び出した際よりも、何倍も強い雷撃のような魔力。
俺と至近距離にいた彼女の体がひときわ強い雷が弾けた瞬間遠ざかり、その刹那、最後に大きな赤い電流がバチィッ、と弾けた。
そして、彼女がその雷を纏いながら、俺たちの目の前にいて……、
「私を召喚したのは、あんたたち……? 特別に出てきてあげたんだから、感謝しなさいよね。ふんっ」
「「こ、これが本来のこの子……」」
彼女は紅色の髪の先を指でいじりながら、まるでつまらなそうにそう言い放つのだった。
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