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(間話) 各地にいる聖女様は彼に会いたい。


*聖女の話です。


 * * * * * * *


「はぁ……ロマンチックです……」


 修道服に身を包んでいる一人の少女が、夢から解き放たれたように大きく息をはいた。


「新しい聖女のテトラちゃん……。まさか教会の役目を放棄して逃げるなんて……」


 その頬は赤く染まっており、両手で胸に触れた彼女の瞳は、どこまでもキラキラと輝いていた。



 聖女という存在がいる。

 その聖女は教会に席を置いている。


 聖女は世界各地に複数人いて、その聖女たちは、全て繋がっている。

 それによって離れた位置にいても任意で意思疎通ができるようになっており、様々なことを知ることができる。


 そんな聖女たちは現在、とあることに対し意識を奪われていた。


 それは新たに発見された聖女が、教会の者の手から逃げたという大きな出来事のことだった。


 通称ーー『聖女殺しの禁断の夜』

 テオという少年と、テトラという新しい聖女が、神の意に反して愛のために行動した、たいへん罰当たりな行為だ。



「普通、そんなことやろうと思っても、やらないと思います……。だって逃げるのなんて無理ですのに……」


 そう呟いたのは、とある教会の自室にいる聖女。

 その聖女は、ベッドの上でぺたりと女の子座りをしている。

 感想を呟きながらも、その出来事に対する熱が覚めることはなく、心臓はどくどくと高鳴っている。表情はうっとりと、熱っぽくなっていた。


「結局、聖女のテトラちゃんは死んでしまいました……。でも当たり前です。あの男の子は聖女のテトラちゃんを守れなかったことを悔いていましたけど、それも当たり前です。だってあの男の子、テオくんのスキルはまだまだの状態だと思いますもん。それなのに、あそこまで神父とやりあったのは、本当にすごいです……」


 彼女は少年、テオのことを褒めた。ベタ褒めだ。


 彼女たちがその出来事のことを知っているのは、神父の意識があったところまで。

 教会に所属しており、自分より下の神父の動向を監視することができたため、そこまでは知っている。


 だから、それ以来の、二人がどうなったのかは知りようがない。

 テトラは聖女としては異端な存在だ。まだ教会で契りも結んでいなかったから、意識の共有をすることができないのだ。


 故に、想像するしかない。

 後の二人がどうなったのかーー、を。


 テトラは死んだ。そしてテオは一人になった。そのテオのことに、彼女は目を奪われた。


 テトラが死んでしまって、テオくんは悲しくないだろうか。

 テオくんは、一人ぼっちで泣いていないだろうか。


 もし、そうなら私が代わりにテオくんを幸せにしてあげたい。テオくんを守ってあげたい。


「だって聖女のために、あそこまでしてくれる男の子ですもん。……いいなぁ……。テオくん……。テオくん……っ。だめ、テオくんっ、好きっ。大好き……っ」


 会ったこともないテオに、一目惚れをしてしまったその聖女様。

 彼女はテオのことを頭に思い浮かべながら、もぞもぞとその気持ちを募らせていくのだった。



 * * * * * *



 そしてまた、別の聖女も、同じようにその夜のことに目を奪われていた。


「『聖女殺しの禁断の夜』……か。ほんと、羨ましい……」


 テオという少年が、聖女のために命をかけてまで守ろうとした。

 そこまでやってくれる人なんて、世界中どこにもいない。

 誰かを守ることは聖女の使命で、その逆はない。


 だからこそ、こう思う。


 自分だったらよかったのに。


「私もテオくんに守ってもらいたい……」


 思わずそう思ってしまうほどに、それは羨ましいことだった。



 * * * * * * *



 そして、別の聖女は疑問に思っていた。


「でも、結局テトラちゃんの方はなんなんだろ……。聖女として、力が強すぎるのを抜きにしても、もう一個の力の方もありえないほどだもん。私でもよく判別できないし……モヤモヤする」


 新たに聖女になったテトラは、異常な存在だ。

 聖女の他に、もう一つ別のものを持っている。


 強いていうなら、それは真逆の力。

 つまり魔の力。

 もし本当にテトラがそれを持っているのなら、教会から逃げて正解だった。


 なぜなら、それは誰のためにもならない。

 教会に行ってしまえば、殺されてしまうか、悪用されてしまうかの、どちらかなのだから。


 彼女、テトラが他の聖女と同じように力を使ってしまえば、それは全てを飲み込んでしまう力となる。

 彼女も無意識のうちでは、それが分かっているはずだ。だから、今回のテオとテトラの行動は知らず知らずのうちに、多くのものを救う方へと働いていた。


 なにより……。


「テオくん……! テトラちゃんも気になるけど、テオくんの方もそれ以上に気になる……! だってテオくん、計り知れない……! あのスキルも、普通の『召喚術師』のスキルじゃない……! すごい!」


 だから、テオくん……!

 会いたい……! 会って直接確かめたい……!


 だけど……会えない!


「あの二人の位置からだと……ああ、ソフィアが一番近いか……。だったらソフィアは、もうすぐテオくんと会えるのかな……。いいな……、私もテオくんに会いたいなぁ……」


 彼女はため息をつき、テオのことを思い浮かべる。



 * * * * * * *



 そして、また別の聖女は、こんなことも思っていた。


「神の意に反するなど、不敬です。私がいずれこの手で始末してあげます……」


 わなわなと震える手は、これほどにないまでの力が込められており、その瞳には静かな怒りが宿っていた。

 聖女の役目を放棄する。それは許されざることだ。

 だからこそ、彼女の怒りはテオとテトラ……特にテオの方に向けられている。


『教会に報告しなくてもいいの? だって多分、彼女、テトラちゃんの方は生きてるよ……?』


 そんな彼女に、とある存在が語りかける。


「構いません。教会に報告しても、どうせロクなことにならないのだから。それなら、私が直接、あの少年……テオくんに裁きを下します」


『ふぅん、つまり、本心ではただテオくんに会いたいんだ』


「べ、べべ、別にそういうわけじゃありません。……これは聖女としての、まっとうな勤めです」


 だから、テオのことは許さない。

 いつか必ず、直接裁きを下してあげます。


 そんな彼女は確かに神に仕えている。しかし教会に信頼を置いているわけではなかった。


 だとしても、テオは許されない存在で。


「テオくんはいけない子ですから……私の庇護下に置いて、たっぷりと二人っきりで教育してあげます……」


『あ、やっぱりただテオくんに会いたいだけだった!』


「ち、違います……。私はただ、テオくんをいい子にして、正しい道に導いてあげたいだけです」


 焦りながらも慌てて弁解する彼女の顔は、耳まで赤みを帯びていた。




 その他にも世界中の聖女が、テオのことに注目していた。


 彼女たちとテオが出会う日は、そう遠くないのかもしれない。



ここまで読んでくださりありがとうございました。


ここまでが、序盤の話で、次回から冒険に出たいと思います。


面白かった、続きが気になる。


そう思われた方は、ぜひ、ブックマークや、★★★★★での評価をいただけると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここから、色々とストーリーが始まるみたいだなあ。
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