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地方のマスクの行き先知ってますか?〜マスクの現状を知って欲しい〜

作者: 刹那玻璃

 今日も何軒回っても、マスクがなかった。

 消毒液もない。

 アルコールウェットティッシュもない。


 今も売り場に空きが時々出来るティッシュ業界は、県内に製紙会社があるので全く心配していなかったが、売り切れの時には焦った。

 何で買い占めるの?

 しかも、私は知らないけれど1973年のオイルショックのティッシュ買い占め騒動並みだと親は呆れていた。

 私もティッシュはほぼ国産で、十分賄えると聞いていたので、焦らなかったが最近ティッシュを街で配ってくれないので、ポケットティッシュを買いに行ったら売り切れていて、ここまでするかと呆れた。




 溜め息をつくと咳が一つ、コホンと出た。

 風邪をひいたのだと思う。

 今日の朝37度を超えていた為、解熱剤を飲んでいる。

 自分がかかるか怖い。

 眠れない……何度も目が覚める。

 精神的にも参ってきているのだと、気にしないで休みなさいと主治医に言われた。

 今の時期、花粉症アレルギーで鼻水が出て、それに胃腸がうずく。

 病院に行って薬を貰いたくても、病院に行き調子の悪い人を見ると、その人がコロナに感染しているのではないかと思って身構えてしまう。

 多分、向こうからも私のように青黒い顔をしたオバさん、ヤバイんじゃないかと思っているはずである。




 ところで先日、郵便局に行って荷物を発送した。

 一応、泡ソープだ。

 お願いしますと差し出すと、局員さんに真剣に聞かれた。


「これは……アルコール消毒剤じゃありませんか?」

「いえ、子供さんでも大丈夫なベビーソープになります。アルコールは入っていません」


 すると、ホッとしたように、


「実は、最近こちらから首都圏などのお子さんにマスクなどと一緒に、アルコール消毒剤を送られるお客様が多いんです。ご存知でしょうが、アルコールは何かあった時に火がつき燃えますので、禁止とお伝えしているのですが、入れてしめた段ボールを渡されるので……」

「そうなんですね。あ、本当にベビーソープです。出しましょうか?」

「いえ、大丈夫ですよ」


と対応してもらった。

 その時に、愚痴なのか、最近一気に増えたのか、ぼそっと、


「実は、お荷物の欄にその他と書かれると、受け付けないこともあるんですよ……最近、そう書かれた荷物が多くて、詳しく書いてくださいと言うと嫌だ、何で細かく説明しなくちゃならないんだと拒否されて……その場合、受取拒否することもあるんですよね……こちらも危険は困りますし」


と洩らした。

 まぁちゃんと書いて欲しいよなぁ……と、脇に積み上げられた荷物をチラッと見た。

 私の前の方が預けた荷物で、そこには『マスク、食品』とあった。

 マスクかぁ……あんなに探してもないのに、ここにあるんだ、この大きな段ボールの荷物の中にあるんだ……と思った。


「本当にすみませんでした。こちらはちゃんとお届けさせていただきます」

「いえ、どうぞよろしくお願いします」


と、頭を下げて帰った。




 帰りながらガックリとする。

 あ〜あ、どこに行ってもないマスクは、郵便局や宅急便の段ボールの中にあって、この町からから首都圏に送られてるのか……地元にはないのに。

 何軒まわってもないのに、この段ボールの中にはあるのか……。

 悔しい!あんなに探してるのに、見つからないのに、どうして地元で販売したものが全部段ボールに詰められて、別の地域に行くんだろう。


 それに、病院で会うおばあちゃんが言っていた。


「息子夫婦がないって言うからね?何軒か回るんよ。で、薬局に曜日を聞いて並ぶんよね。今度は娘のところの分を集めなきゃ、あぁ忙しい、大変よ」

「そうそう。孫が送ってくれって言うんよ。今度は〜町の薬局に行こうかしら」


 気軽に話すおばあちゃんたちに、今、何故かものすごく怒りが湧いた。

 普段は良い人だ。

 普段は優しくて、よく話す親切な方だ。

 でも、でも……何が大変なんだ。

 ものすごくずるいじゃないか。


 私のように身体が弱い人や、父のように心臓に爆弾を抱えた人、妹や甥のように気管支の弱い人……その人の為のマスクすら、この人達は手にとらせずごっそり県外に送り出すんじゃないか!

 それに、マスクを作ると言っても、布、マスク用ゴムもない。

 誰が、ほとんど意味のないペーパータオルのマスクをして、外出しなくちゃいけないんだ。

 恥ずかしい!

 それでも我慢しろと言うのか?

 何故、私たちが我慢するんだ。




 地方の親からマスクを送られた方に、言う。

 あなた達が当たり前のように受け取り、使っているマスクは、本来地方の人の為のもので、こちらの人の命を縮める可能性があることを理解して欲しい。

 田舎から届くからと、田舎ならある、買ってくれると、安易に要求はやめて欲しい。

 田舎の他の人の分を、ぶんどってるってことを理解して欲しい。

 地方の人に死ねと言うのか?

 それに、ないなら自分でマスクを作ればいい。

 材料を探して、ゴムは髪ゴムでいい、ハンカチを折り畳んででも出来る。

 あ、普通のガーゼはマスクの内側に最適だが、滅菌ガーゼは治療用のガーゼで、怪我をした人の為に使うので、使ってはダメである。

 ガーゼを探すなら可愛い柄物のガーゼ布が普通に手芸店、百均にある。


 それに、実家に家族を避難させたい、させるつもりと言うのもやめてほしい。

 ご両親だけでなくその地域の人に迷惑だ。

 田舎にあるのは地域の人を収容する為の医療品や病院のベッドで、余剰はない。

 何かあったら何でも田舎を頼るのは図々しい。

 はっきり言って迷惑だ。帰って来るな。




 うろうろ歩いて、何とかマスクのゴムと、糸、布を購入した。

 汗をかいて、フラフラしながら帰り、寝込んだ。

 明日こそ、マスクを作るぞ……。

 咳き込みながら『チコちゃんぬいぐるみ』を抱きしめ誓ったのだった。

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