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75話 軍議

軍議の招集を知らせる鐘の音が鳴り響くと、ルルとネイサンはギルに現場を任せるとそのまま本陣のある中央まで向かっていった。


「やはり、王都から例のモノが運ばれてきたんでしょうか」


「状況的には限りなく黒でしょうね」


「本当にそうだった場合、私達はどうするべきしょうか? ここにはチャールズ殿下もいませんし、この戦争を止めようと考える人は私達くらい……でも、爆弾を使うのを止めずに使ってしまったらこの戦争はもう絶対に後戻りできなくなるわ。局地的な勝利とは違って戦死者の数が膨大かつ一方的だもの」


 ルルがそう言うとネイサンは頷きながら言った。


「ええ、戦争は不可逆的なものになるでしょうね。そしてそれを止められるのは私達だけだ。それに、止められる算段はそう多くない」


 ネイサンがそう言い終えると、本陣に近くどんな聞き耳が立てられているのか定かではないのでルルたちは口を閉ざし本陣の真ん中、軍議の開かれるテントの中に入っていった。



「ふむ、ヴィルヘルム殿が王都からこの状況を打破することのできる素晴らしいものを持ってきてくれたとのことなので説明をお願いできますかな」


 イェーツは諸侯が揃ってそうそうそう切り出した。

 ヴィルヘルムは小さくうなずくと任せるというように傍らの人物に促す。


「はい、私が王都より派遣されました国王補佐官のホーキンスです。王よりこの新型の兵器のすべての権利を任されてきております」


 諸侯たちが油断ならない目つきでホーキンスを見やっているのはホーキンスが貴族ではなく官僚であり、貴族の不正などに普段は目を光らせているのもあるだろう。しかし、ホーキンスの冷たい眼差しもそれに一役買っているとルルは思った。


「我々の誇る王国アカデミーは、そちらのピレネー領主ルル様の技術供与を受けまして新型の兵器を開発いたしました。一発を有効範囲すべて活用して使えば、敵の半分を一気に殲滅できる能力があります」


 ルルは技術供与の言葉に何を言うと思いはしたが、ぐっと堪えると軽くうなずくにとどめた。そんなホーキンスの抑揚の無い声にも関わらず諸侯は油断ならない目つきで目を細めていたのを一気に見開くと口々に騒ぎ始めた。


「本当にそんな兵器を開発したのか、戦争は勝ったも同然だ!」

 

 血気盛んな諸侯に至ってはそう叫ぶと机にある水を飲み干すと控えている兵士に酒を持ってこさせようとまでしている。


「皆さん、一度落ち着いてください」


 しかし、ホーキンスのその一声が場を再び静まり返らせる。


「残念ながらその新型兵器は一発しかありません。本当は3発ありましたが事故で2つは失われました。ですから()()()()それは使わなければなりません」


 その冷たく冷静に虐殺を宣言する様に先程まで祝杯をあげようとしていた諸侯までが黙り込む。


「我らが祖国に土足で踏み入れた彼らには痛みが必要です。戦争の集結と2()()()()()()()()()()()


 そのホーキンスの言葉には一同なにも異論を発することのできる雰囲気ではなく、そのまま承認ということで軍議は閉じられることとなった。




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