71話 作戦会議
スグルたちを送り出したルルとギルは戦争を泥沼化させる恐れのある新型爆弾を破棄するために動き始めた。しかし、難しい状況である。ネイサンが入手してきた情報をもとにこれが偽装工作であることを悟られぬように敵のスパイの侵入を装い、やむを得なかったという状況を作り出し、爆弾を破棄しなくてはならない。
「これはフィンを残したほうが良かったかもね」
ルルはネイサンがコツコツと工場を訪問して作り上げたところどころに穴のある図面をみてそう唸った。
「でも、船一隻での奇襲作戦も頭が必要ですからね」
ギルはそう答える。
「いない人のことを考えても仕方ないわね。私達で考えましょう」
そうしてフィンの出すような妙案は出ないまま次の日の朝を迎えることになった。
「今、暫定の作戦としては私が弓で敵のスパイに当てたと思わせる内容の手紙を外から飛ばす、その手紙の内容は、リトリア王国は強力な爆弾を開発したようなのでそれを盗み出し、沿岸に現れる手はずになっている商船に詰め込めといった内容にする。それを飛ばすタイミングは実際に沿岸にベルデ王国よりの商船が通るタイミングを図ると」
ギルが昨夜から話し合って出た意見を総合した作戦を述べる。
「そうそう妙案ってでないものね。巨人ハリボテ船やら、巨人ブリッジやら考えるフィンが異常なんだわ」
「そうですね。兵法でも奇策はそうそう成功するものではないから大事なのは基本を守ることと言われていますが、それでもフィンの奇策は天才としか言えない閃きがありますからね」
ルルとギルがそう話していると、二人が話していた部屋が2回、そして3回とリズムよく叩かれた。防音が施されたこの部屋は外から盗み聞きすることは不可能であり、使用人がやって来れば2回ノックするのでこの独特のリズムをもったノックはこの部屋を貸し出している主の来訪を告げるものである。
ギルが部屋の鍵を開けると、外套を脱ぎながらネイサンが体を滑り込ませるように入ってきた。
「どうだい、作戦は決まったかい?」
ギルはルルが頷くのを確認すると先程の作戦を再び話し始めた。
「うん、つい最近、フィン君の奇策を聞いたばかりだから拍子抜けするほど正攻法だけど、失敗の可能性は少ないし、いい作戦だと思うよ。私は工場の運営には関わらせてもらえないけど、一応工場の立つ領地の領主だからね、緊急時の爆弾の破棄の権限は持っている。その手紙が発見され、私に報告が来たらすぐに破棄の命令を出そう。もし、文句を言われても、もうすでに爆弾は一つ王都にあるんだ。盗まれるくらいなら破棄したほうがいいと判断したと言えるしね」
ネイサンがそう言うと、ルルは頷く。
「で、いつその作戦を実行するんだい?」
「入手した商船の出港予定を見るに今日の夜です」
「お、おう。早いね」
ネイサンは予想外に早いその予定に流石に額に冷や汗をかきながら頷いた。
遅くなりました……。




