63話 ピレネー会談4
すみません、数話前から自分の頭がおかしくなったのか王子さんの名前がチャールズ→ウィリアムに変わってました_| ̄|○
修正しましたのでよろしくおねがいします。
「さて……」
先程まで囲んでいたテーブルがなくなってしまったのでなんだか、少し寂しくなった客間でチャールズは仕切り直すようにそう切り出す。
「それでこの戦争を終わらせる具体的な策だが、まず、この戦争を起こした者たちの目指すものというのを理解したほうがいいと思う。それで、間諜による情報をまとめてみると、ベルデ王国国王、ロリス・ベルデはおそらく、過去、我々の祖先が追われた本当の大陸を取り戻すことを最終的な目標にしているようです。
彼は、リトリア王国を併合し、北の蛮族の技術を手に入れ、その一つになった軍事力をもって大陸を制覇するつもりでいるようです。
そして、それを支える支持層にいるのが、リトリア、ベルデにまたがって連合を組んでおり、大陸最大のハーディング商会と並ぶ力をもつ、商業組合、ロッサノ商業組合。そして、ベルデ王国の貴族の中で半数をしめる新興貴族たちという調査報告が上がっている。
で、その中でも戦争を止めるために、我々はロッサノ商業組合を潰すつもりだ」
チャールズはそう言うと、今までずっと黙っていた大商人ラザの方を向いた。
ラザは頷くと話し始める。
「まず、はじめにはっきり言わせてもらうと、私は別に正義のために協力しているわけではありません。
私は、ただ自分の商会の利益のため協力させていただきます」
ラザがそうはっきりと宣言すると、同業者であるシットはなんとも言いにくい苦笑いのような表情を浮かべた。
「それで、そんな守銭奴のあなたが一体どう協力してくれるっていうのかしら?」
ルルは軽蔑の混じった口調でそう尋ねる。
「ハハ、守銭奴とはストレートな呼び方ですね」
恐ろしいほど不快さを感じぬ笑い方でラザはそう言うと、続ける。
「私の商船を提供しますので、ロッサノ商会の本拠地、ベルデ王国西部最大の港を奇襲してしばらく再起不能なまでに破壊してください」
真意の読み取れぬ笑顔のままラザはそう言い切った。
「でも、そんなことをすればあなたの商会のベルデでの立場は最悪にならないかしら?」
「私はただこう言えばいい、リトリア王国で商船を拿捕され利用された。最低限の武装しかしていない我々はどうすることもできなかったと」
その、堂々の態度にルルたちが呆気に取られていると、ラザはさらに続ける。
「私としては、ロッサノ商業組合が目障りなのと、ちょうど国境沿いにある我々が管理している金山にも悪影響がでるもので武器を売却するよりもそちらの懸念のほうが大きいのですよ。この戦争を終わらせるためなら、そうですね、リトリアの国家予算の一年分くらいの支援はしましょう」
商人にも関わらずラザはそう手の内を明かしていく。
「そ、そう」
その態度にルルは気圧される。
「一つよろしいでしょうか?」
そこに末席のほうからフィンが手を挙げる。
「なんだい?」
場の雰囲気を完全に掌握したラザは余裕そうな表情でそう答える。
「それほどのお金を出してくださるなら、もっと確実に敵の港を奇襲する作戦があります」
ラザが優位に進めようとしたこの反戦作戦はフィンが提案する大陸史に類を見ないほどの奇策によってルル主導に導かれてゆくことになる……。




