61話 ピレネー会談2
「久しぶりだね、スグル。どうだい、ルルとの仲は進展したりしたのかい?」
チャールズはそう言って、スグルに探りを入れた。
「まあ、それなりに仲良くしてますよ」
「ふーん、そうか。では、早速、今日来た理由を説明したいと思う」
スグルは、ふーんだけで済まされて内心、なにかヤラカシタ!? と慌てていたが、それは王子の策略であった。 スグルは基本アホの子なので考えが顔に出るのである。 チャールズは表情を見て、まんまと現在のスグルとルルの仲を見破ったのである。
「まず、そこにいるモルガン・ポワチエ殿を紹介しましょう、ベルデ王国の公爵家の当主で、見ての通り、非常に活発なお方です。今日は、我々がこの馬鹿げた戦争をやめさせるために行う作戦に参加してもらうために参加してもらいました」
「でも、ポワチエじい様はベルデ王国出身でしょ、その……私は信じてるけど、情報が向こうへながれたりとか、謀反の疑いをかけられたりっていうのは大丈夫なのかしら?」
ルルが、確認するように尋ねる。
「私の母上は、リトリアの貴族家出身ではなく、ベルデの貴族家出身なんです。そしてその貴族家というのが、」
「ポワチエ家ということじゃな!」
最後に割り込む形でポワチエが答える。
「ですから、ポワチエ殿が裏切る心配はほとんどないでしょう。リトリア王家とつながりのあるポワチエ殿はベルデ王国でも怪しまれやすい、つまり、万が一にでもこの会談の情報が漏れれば、」
チャールズは首がチャー/ルズするジェスチャーをすると、場は凍りついたように静かになった。
「ですから、もし、この会合に参加したくないという御仁がいらしたら責めはしません、ご領地にお戻りください」
チャールズは尋ねるが、ここにいる貴族は誰一人としてこの場を動かなかった。
ルルは家族を、リリーは父を、みんなこの戦争で大小はあれど、さまざまなものを失っていた。
「わかりました。では、まずはリトリア、ベルデ、両国の王国史から消された真実を話さなければいけないでしょう」
チャールズはそこで一度切ると再び話し始めた。
「そもそもこの大陸は、この国の人は大陸と呼んでいますが、大陸ではないのです。東の海を超えれば本当の巨大大陸があり、我々の祖先はそこから追い出されるようにこの島にやってきました。王国史には我々二大王国の祖先が国民を率いてこの大陸を手に入れたといっていますが、これが真実です
そして、この島には先住民がいました。それも我々とは技術力において圧倒的な差のある先住民です。 我々の祖先ではなく、先住民の方が圧倒的な技術を持っていました。
我々の祖先は先住民からの攻撃にあいました。しかし、我々の祖先は先住民の数倍の人数がいました。いくら技術力があろうとも人数の力には勝てず、先住民たちはこの大陸の北へと追いやられることになりました。 それが、北の蛮族と呼ばれる存在なのです」
小さい頃から、北には蛮族がいると教えられてきたルルやリリーはその事実に自分の歴史観に重大な亀裂が入るように感じた。
「そして、後に、大陸でひとつだった王国は、南北へと分かれる事になりました。 その分裂に大きな影響を与えていたのが北の蛮族なのです。 当時の王国は我々よりも技術力の高い北の蛮族に対抗するべく王国を2つに分け、リトリアはそのために建国されたのです。そして、色々歪曲されていますが、現在の両国に伝わる王国史につながっていくことになります」
チャールズがそう言い終わると、ルルが尋ねる。
「本当の歴史についてはわかったのだけれど、北の蛮族が今回の作戦にどう関わってくるの?」
チャールズは「これからが本当にこの国の汚れ、消された歴史になります」
そう言ってチャールズは静かに語り始めた……。




