47話 別働隊
バイガルド要塞に籠もってベルデ王国の侵攻に備えたリトリア軍に総司令官ヴィルヘルムから作戦の概要が発表された。基本的には籠城で敵の戦力を削り、機を見て本軍がベルガルド要塞から出て攻撃、それに呼応して別働隊が後方から敵を攻撃して敵の混乱を誘う。
敵はこちらの軍と比べ、2倍の兵力差、それに練度の差が大きいため籠城戦はその実力差を埋めるためには有効な作戦であった。
ヴィルヘルムは、3000人ほどの別働隊を組織した。
スグルを擁するアルデンヌ軍を主体とした3000の別働隊は敵に察知されないよう大回りして敵の後方、横方向から急襲を仕掛ける。別働隊の移動には数日かかるのでそれまでベルガルド要塞を守りきらねばならない上、敵に察知されるリスクも大きかったが、成功すれば多大な戦果の見込める作戦であった。
そしてそんな重大な任務を任されたリトリア軍、別働隊は、アルデンヌ軍1000人、ハルトマン軍800人、そして傭兵が主体の兵が1200人という陣容で裏門から出兵しようと集まっていた。
「アルデンヌ殿、先の戦場では私は命を救われ、そしてアルデンヌ殿には娘と仲良くしてもらっておる。弱兵ばかりじゃが、一緒に戦わせてもらうぞ」
ルルは、ハルトマン伯爵と会話しながら軍勢がまとまるのを待っていた。
「ええ、私もリリーとは仲良くしていきたいと思っております。女性領主は私以外いませんので、リリーとはこれからも長い付き合いになると思いますわ」
「戦争中だけは娘に家督を譲りたくありませんな、だから私は死ぬことができるのです。私は弱いが、それでも娘を守りたいのでね。ですから負けるわけにはいきませぬ、アルデンヌ殿、絶対に勝ちましょうぞ」
「ええ」
戦場をともにし、リリーとの付き合いができたことで二人には信頼関係が生まれ始めていた。
裏門から出発したリトリア軍別働隊は、ベルガルド要塞の周囲にそびえ立つ山々の合間を迂回するような形で敵の後方へと向かうため、移動していた。
この山々は、敵が進軍する道をベルガルド要塞に固定するようにそびえ立っているため、あちこちに崖があり、3000人という軍勢はこの険しい道を通行するのにギリギリの人数だと言えた。
リトリア軍別働隊は、この道をできる限りの進軍速度でもって進んでいった。
ベルガルド要塞を出発して、二日目、ベルガルド要塞方向から、狼煙が上がっているのが見られた。
これは敵がベルガルド要塞への攻撃を始めたという合図であった。
そして、3日すぎ、4日め、リトリア軍別働隊は、ベルデ軍後方の山中に隠れるように陣を構えると、リトリア軍本隊と呼応するような形で攻撃できるよう、待機した。
「スグル、準備は大丈夫?」
「うん、今回はちゃんとした盾もあるし、まともな作戦だし、ギルもいるしね」
「そう、今回は、前よりも大変な戦いになると思うわ。奇襲とはいえ、3万の軍隊にたった3000で突撃しなければいけないもの」
スグルはその人数差を感じて改めて恐怖を感じた。でも目の前にいるルルが自分よりも怖そうな表情をしてるもんだから自分がもっと落ち着いてなきゃ男じゃないやと思った。スグルは男の子だった。
「あくまで混乱されるのが目的だから退却許可が出ているのがまだ救いだね」
ギルはそう言って、苦笑いした。
「でも、この人数差だと突撃と一言で言っても、いろいろ考えてしないといけないね」
フィンはそう言うと、考えがあるんだ。と言って作戦を伝えた。
明朝、山頂で本軍に動きありとの情報を得て、リトリア軍別働隊は山を駆け下り、ベルデ軍本陣に奇襲を仕掛けた。
大変遅くなりました。
エタりません。完結するまでは。




