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43話 ギルの乗馬

 スグルが演目を終え退場していくと、フィンが次の演目を告げる。


「続いて、我が国が誇る王国騎士団団長であり、王族にも名を連ねるヴィルヘルム殿下に名捧げをされたギルが馬術を披露します」


 そう言うと、会場にはすらっと長い足をしたひと目でいい馬だと分かる、馬に乗ったギルが現れた。

 ギルはまだ10代も後半といった風の風体であったが不思議と立派な馬に乗っていても見劣りしない、なにか凄いことをやってくれそうという期待というようなものを感じさせた。


「紹介にいただきました。王国騎士団所属、ギルでございます。今回は、アルデンヌ領主ルル様、そして元同僚であるスグルの計らいで乗馬を披露することとなりました。ぜひ御覧ください」


 そう言ってギルがペコリとお辞儀すると会場からは女性から黄色い声援が響いた。

 もともと、高位の貴族ではないギルはなんというか、平民の女性には貴族の高貴さと親しみやすい雰囲気がどうしようもなく魅力に感じるようであった。


「さすが、イケメン。もう女性のハートを掴んでる」


 最近は少しずつ女性人気も出始めたとはいえそれは諸々の活躍に対するもので別に異性として好かれているわけではないスグルは会場を覗き込みながら敗北感を味わっていた。


 そんな感じで会場の視線を一度に集めたギルは早速馬を走らせると一気に加速して1つ目のバーを軽々と越えた。


「ワーッ!!」

 

 会場の歓声からもその当たり前のように超えた障害物のレベルが相当高いということがわかったが、なによりもリトリアの中でも最高峰の武術や馬術、弓術に学術をもったウィリアム第一王子の護衛が唸るようにギルの乗馬を見ていたのがそのレベルの高さを証明していた。


 息を付く間も無く、歓声がまだ止まぬままにギルは馬を走らせると次は大穴を掘ってある場所を飛び越えた。

 まさに馬と人とが信頼しあってなければできない芸当であった。


 そんな風にギルは高難易度の技を次々決めていくと、ギルはスグルがフィンから意見をもらい半ば冗談のつもりで仕掛けた鬼畜難易度の障害物の前に向かった。


 それは今までで一番の大ジャンプをこなしたあとその小さな足場でそのまま再び大ジャンプを決めるという騎手にとっても馬にとっても最高難易度といっても良さそうなものであった。

 もちろん作ったスグルも提案したフィンにも到底できるものではなかった。


 国最高峰の馬術をもっているであろう王子の護衛たちも怪訝な顔つきで万に一つも成功はないと思っている顔つきなところからもその無謀さが伝わってきた。


 しかし、その顔が驚愕に染まることになる。


 ギルは馬で翔るとそのまま飛んで着地と同時に再び大ジャンプを決めた。

 それはまるで飛んでいるようでスグルは思わず「ペガサスッ!!」と叫んだ。

 

 この世界にペガサスという存在はないのではじめは周りの観客も不思議そうにスグルを見たが、その言葉の響きが馬で空を飛ぶ感じにぴったりな風であったので次第に会場中で「ペガサスッ」と叫ばれ始めた。


「ペガサスッ!!」


「ペガサスッ!!」


「ペガサスッ!!」


 その後、ギルは「ペガサスの騎士」と呼ばれ、「巨人騎士」と比較してスグルがとても羨ましがる事となったとさ。

 そうして、歓声の中、ギルがお辞儀をして場を去るとフィンが閉会の挨拶を述べ、初回の公演は無事終了した。



 そして、一日二回、午前の部と午後の部、それを3日続けてアルデンヌ領はその名を広める事になった。公演の評判を見た王都民たちが話を広めているようであるのでそれは全国に及ぶものになると思われた。


 そんな感じで大成功のサーカスであったが、はじめは一日の滞在予定であったウィリアム王子が結果的に3日も滞在したので流石に3日ともサーカスを見せるわけにもいかずルルは領地を案内しながら王子のアプローチを受け続ける事となっていた。

 サーカスで場を離れられないスグルに加え、ギルがルルにアプローチをかけている情報を掴んでいたウィリアムによって本来護衛としてやってきたギルもまた初日の評判を口実にサーカスに釘付けにされることになった。

 二人は公演中もルルとウィリアムが気になって気が気じゃなかった。




 そんなこんなでチャールズ王子が王都に戻る日。

 

「また会える日を楽しみにしています。ミス、アルデンヌ」


 王子は普通の令嬢であったら飛んで喜ぶような笑みをルルに浮かべるとそう挨拶した。


「ええ、また次の領主会議には会いましょう」


 ずっと二人が気が気じゃなかったスグルとギルはライバル同士にも関わらず笑みを浮かべあった。

 次の領主会議ということはその前にある新年の舞踏会では暗に踊らないと宣言したようなものでいわばアプローチを受けるつもりがないということだった。

 それは王子にもわかったようで固い笑みを浮かべて言った。


「また、招待状を送るのでぜひ王都へ遊びに来てください」


「ええ、また用があったら」


 商人との交流のあるルルのほうが上手だったようだ。舞踏会の誘いをルルにうまくかわされると王子はギルも加わっている護衛の騎士団とともに肩を落として王都へ帰って行った。


 そうして、ルルは無事に金儲けを行い、領地の名声を上げ、王子の求婚を回避して大勝利を収めたのであった。


待っていた人いたらごめんなさい。遅くなりました。

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