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34話 ギルの告白

「ギルこれはどういうこと?」


 王城に着いたルル一行にもギルがヴィルヘルムから名を授けられたことが伝えられていた。

 それを聞いたルルはパーティーの前に王城近くの王国騎士団宿舎に向かうとそのままギルを呼び出して、問いただした。


「ルル様、私はあなたに求婚するためにヴィルヘルム様に名を授けていただき、貴族の称号を得ました」


 ギルが真剣な目でそう言うとルルは予想外だという風に目を見開いた。


「それは本気?」


「ええ、本気です」


 ギルがそう言うと、物陰から覗いていたらしきルルの兄であるギーシュ満面の笑みで出てきた。


「ルル、彼は本気だよ。なにしろルルの結婚話を聞きつけるや、ルル様を他の男に渡したくないってヴィルヘルム様に言うんだもの、王族の求婚に対抗して王族に協力を取り付けるなんて聞いたことないよ!」


 そう、ギーシュが大げさな身振りで言うと、ルルは耳まで真っ赤にして言った。


「でも、私はギルのことをそういう目で見たことないわ」


 ルルが今の本心を言うと、ギルはそれが分かってたというようにやさしく微笑むと言った。


「ルル様、別に今すぐじゃなくてもいいんです。これから私を男の一人としてみてください」


 そう、ギルが言って跪くとルルは深呼吸をして落ち着きを取り戻すと。


「ギル、あなたが私を裏切った事実は変わりません。ですが、私を思ってくれる気持ちもよくわかりました。まだ、返事をすることはできないけどいつか必ず返事をするわ。だからそれまでにより上を目指して研鑽なさい」


「必ず」


 ギルはそう言うと、スグルの方を見て言った。


「スグル、負けないよ」


 ルルは怪訝な顔でスグルを見たが、ああ、騎士の力量の話ねと自分で納得すると、そのままなにやら好戦的な笑みをギルに向けているスグルに乗ると王城へ向かった。



 

 スグルは先ほどのギルの告白と自分への挑戦を聞いて内心でヤバイと思っていた。

 なにしろ自分のライバルが王子さまにギルである。


 王子さまが王様に似てドブスだったとしてもやっぱり地位の力は大きいだろうし。

 ギルはとんだ美青年でルルの信頼厚き小さいころからの側近である。


 対してのスグルは異世界人で、この世界の西欧人のようなきれいな顔立ちとは程遠い、顔が平たい族である。

 もう、モグラと白鳥くらい違う。いや、ミジンコとフェニックスかもしれない。


 スグルは自分の巨大なだけの体を見てため息をついた。


「なに、スグル。ため息なんてついちゃって」


「わッ!」


 いきなり声がかけられたのでスグルがびっくりするとルルはクスリと笑った。

 そうして、ぽつりと言った。


「ギル、私のこと好きだったんだね……。ぜんぜん気付かなかった」


「それだけ、昔から守ろうとしてたんじゃないかな。だって、王族に逆らうような求婚をするくらいだもの。それで今の今まで気づかないなんて相当前から変わらず必死に守っていたんじゃないかな」


 スグルはそう言ってから、ああ。ギルのこと持ち上げちゃったなあと思った。


「そうかもしれないわね」


「ずっと先もギルと昔みたいに過ごせるかな」


「過ごせるわ。きっと」


 スグルとルルはお互い見つめあうと笑いあった。



 

 勝負のパーティーはこのあとすぐである。


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