33話 ギル
王都ではギルがルルへの求婚の噂を聞いて真偽を確かめるべくヴィルヘルムのもとへ訪れていた。
「ヴィルヘルム様、質問なのですがルル様に王子からの求婚があったというのは本当ですか?」
ヴィルヘルムはすっと目を細めるとギルの方をみて言った。
「それが、なにか問題でもあるのか?」
「そ、それは」
「王族からの求婚などふつう喜ぶものではないか、それともそなた自身に不都合な点でもあると言うか」
ヴィルヘルムがそう聞くと、ギルは言葉に詰まった。
「私はそなたが勇気をだすならば協力してもよいぞ」
ヴィルヘルムは覚悟を見定めるように聞いた。
すると、先ほどから、少し離れたところで盗み聞きしていたルルの兄であるギーシュが茶々を入れるように口をはさんだ。
「ふーん、ギル君はルルのことをそういう目で見れるの? 騎士なのに」
騎士がその護衛対象をそういった目で見てしまうことは往々にしてあることだが、それでも直接的に気持ちを伝える騎士はほとんどいなかった。
「私は、ルル様に嫁いでほしくはない」
ギルはやっとその本心を言った。
「ギルよ、私はこれでも王族だぞ、そんな覚悟のない奴のために力は貸さぬ」
ギルは深く息をすると言った。
「ヴィルヘルム様、私に名を授けてください」
「それってルルを裏切ることになるけどいいのかな?」
ギーシュが口をはさむとヴィルヘルムは黙れというようにギーシュの方を見た。
「ギル、なぜ貴族の位がほしい?」
ヴィルヘルムがそう聞くとギルは言った。
「ルル様を他の男に渡したくない」
ヴィルヘルムはそれを聞くと笑った。
「よかろう、私は若者の恋愛話が大好きなんだ。そう、結婚を政治の道具としか見てない連中の邪魔をしたくなるくらいにな」
そう言うと、ヴィルヘルムは言った。
「ギル、そなたにギルという名前を与える」
ヴィルヘルムがそう言うと、ギーシュが抗議するように言った。
「同じ名前を付けられるなら私のときもそうしてくださいよ!」
「お前は性格が好かんからな」
そう言うと、ヴィルヘルムは言った。
「さてさて、これからどうなるかな」
もちろん、ギルがルルの騎士を離脱してヴィルヘルムから名を授けられたことはルルの耳にも届くことになる。
スグルVSギルVS王子様
果たしてどうなるか……。




