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30話 妹と女装少年

久しぶりに出てきたので……。一応。

マルクの子供がベンとフェリスで、ベンは兄でフェリスは妹です。

 スグルとルルは屋敷のホールでベンとフェリスと一緒に遊んでいた。と言ってもベンも日本でいったらそろそろ中学生くらいの年なので実質的にはスグルとルルとベンでもってひたすらフェリスを愛でるのが主なこの集まりの目的であった。


「フェリスゥ、高い高い!」


 スグルは日本で発言したら確実に不審者情報が地域一帯に流れるくらいの気持ち悪さでもってフェリスを抱き上げると顔の前まで持ち上げた。


「たかーい!」


 はじめは怖がられていたスグルであったが、日々の地道な努力のかいもあって、頭をなでるところからついに高い高いをする関係まで発展したのであった。


「フェリスゥ! 今度は私が新しいお洋服を着せてあげるわ!」


 そして、この日本であれば通報必須の人物はスグル以外にも存在した。ルルはその貴族の財力とやけに子供に気に入られる体質を持ってフェリスを溺愛していた。


「おねえちゃん!」


 それは果たして魔法の言葉であった。ルルはハァハァとちょっとヤバ気な感じに息を荒げながらスグルに降ろしてもらったフェリスを抱きしめた。


「ああー! 抱いて眠りたいわ!」


 しかし、フェリスは汚れをしらない子供であった。


「今日はおねえちゃんと寝る」


 ルルはもう、顔に血流が集中しているのか、顔を真っ赤にして息を荒げた。

 しかし、それを好ましくない目で見ている者がいた。

 ベンである。


「フェリス! 俺が添い寝してやるよ!」


 しかし、兄というのはなぜか妹に煙たがられることがおおいこと。

 フェリスはプイッと顔を背けると言った。


「にいにはいや。おねえちゃんと寝る!」


 ベンはこの世の終わりのような顔をすると懇願するように言った。


「フェリスゥ!!」


 しかし、当のフェリスはすでに視界から兄を消していた。

 ルルは大人気もなく? (まだ17だけど)勝ち誇った笑みをベンとスグルに向けた。


「じゃあ、女の子同士でお着替えとお昼寝するからスグルたちは出て言ってね」


 天使を独り占めする口実を得たルルはそのままシッシと手を振った。


「「クソッ」」


 スグルとベンのそれはもはや主人に対する言動ではなかった。



 

 数時間後、本当にフェリスを愛でる権利を独り占めされたスグルとベンは文句たらたらで領地を二人で散歩していた。


「俺、フェリスの兄なのに……」


 もっともである。ルルはその権力をもって天使のように可愛いフェリスを妹にしていた。


「もしかしたら、家族が寂しいのかもしれないね」


 ルルは政変で家族を亡くしているし、フェリスは母の顔をしらない。

 もしかしたら、二人のその境遇が姉妹としての絆を生み出したのかもしれなかった。


「でも、妹は譲れねえ」


 ベンは力強く言った。


「僕もそう思ってたよ、ベン」


 そうしてお互い見つめあっているとスグルはあることに気付いた。

 

 あれ……? ベンって割と中性的な顔つきをしてるよな……。



 この後、ベンに悲劇が訪れる。




「おい! 離せ!」


 手の中で暴れるベンを押さえながらスグルはプレハブ建設で仲良くなったおばちゃんの元へ向かっていった。


「おばちゃん、いるー?」


 スグルは悪い笑みでおばちゃんを呼んだ。


「なんだい? おや、スグルじゃないかい」


「ちょっとお願いしたいことがあって」


 巨人であるスグルを前にして呼び捨てにするこの恰幅のいいおばちゃんは町で被服関係の仕事をしている。


「なんだい? 急に」


 スグルは伏せるとおばさんに小声で言った。


「うん、うん、おお! それは面白いわね」


「え? おい! おい! やめろ!」


 スグルはベンに聞こえないように言ったつもりであったが、巨人である。ベンの耳にもそのお願いはしっかりと届き、ベンの悲鳴があたりに響いた。



 1時間ほどたつとそこには精気を失ったような顔をするベンがいた。

 そんなベンの恰好はすごかった。


 最近、少し男らしくなってきたその顔には男の子の面影は欠片もなく、そこにいたのは天使のようなフェリスが大きくなったらこんな感じになるのかなと思うほどの美少女であった。(男だが)

 全体的に筋肉質になってきた体つきを隠すようにゆったりとしたワンピースに、ちょっとした胸の詰め物はルルよりも大きな胸を形作っていた。

 そして顔、もともと中性的だった顔つきもあって、ウィッグでロングヘアになったベンはそこらの女子たちの嫉妬を買うほどの美少女となっていた。


「俺、男……だよな?」


 ベン自身ももはや鏡を見て自分の性別に自信をなくすほどであった。


「こりゃあ、ピレネーで一番の美少女じゃないか」


 おばちゃんも自分で変身させておきながら太鼓判を押していた。


「いや、一番はルル様だよ」


 この惚気やろうのスグルはそう言うと、ベンを連行して屋敷へと向かっていった。



「なに? この美少女?」


 ルルは美少女ベンを指さしながら言った。


「可愛いでしょ」


「可愛いわね」


 そこで、スグルはやめればいいのに先ほどルルにフェリスを独り占めされた恨みを晴らしてみたくなってしまった。


「この娘はまだ12だけど、もうこんなにお胸が大きいね。どこかの誰かさんとは大違い!」


 スグル、こいつは学習しない奴だった。何回もそれで逆鱗に触れてるのにまあたこんなことを言ってしまった。


「……」


 女の子の無言は怖い。


 次の瞬間には特大のジャンプをしたルルがスグルの股間めがけて飛び上がった。

 ルルの身長は25センチ程度、彼女がどれだけのジャンプをかましたのか、恐ろしいほどであった。


「あふ」


 スグルは間抜けな声でもって男の子の切ないところを押さえ、悶絶した。


 ルルは理不尽にも次には美少女であるベンの方を見て殺気のこもった目を向けた。


「ひゃ、ひゃめて」


 腰を抜かしたベンはピンチに陥ったヒロイン顔負けの反応で座り込んだ。


 そこにベンにとって救いの天使が現れた。

 昼寝から目覚めたフェリスが目をこすりながらやって来たのであった。

 ルルは一瞬で殺気を引っ込めるとやさしい顔つきでフェリスの方を向いた。


「ちょっと待っててね」


 ルルが言うが、フェリスはベンちゃんを見ると目を輝かせた。


「新しいねえね!」


 ルルは一瞬でベンを連れて行ったほうがフェリスにとって益があると見るや、ベンに怖いほどの笑みを浮かべると問答無用でベンを引っ張って行った。


 ひとり残されたスグルは切ない痛みに耐えながらその手があったかと涙を浮かべながら感動した。




 その後、ウィッグのつもりなのか、藁を頭にかぶってショートヘアー風にし、唇に赤い果実の液を塗りたくった。妖怪としか言えないような巨人が現れ。


「スグリンにゃん」


 とつぶやく光景が目撃されたようである。


 彼女? のその後を知るものはいない。



 ちなみに、ベンの女装をしったルルは怒らずにおばちゃんのところに行き、胸サイズ偽装の方法と、お化粧のコツを教わりにいったらしい。

 そのとき、スグルがルルの方が可愛いって言った事実を知ったルルは、女装スグルをやめさせはしたもののお咎めはなかったらしい。

 女の子を褒めるのは大切だと学んだスグルであった。


ちょっと思ったんですけど、割とよく出るキャラ。

スグル ギル シット フィン マルク ベン マッド ”男”

ルル フェリス ”女”

ベン ”女装”

7対2とおまけで男女比率がなろうっぽくない!

ということで、もう少し先に、例のハルトマン伯爵の娘さん出ます!

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