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24話 決意と

 ベルデ王国がリトリア王国に向けて出兵したのは秋も入ってすぐの頃であった。

 リトリア王国側もルルからの情報ですでに国境付近の防御を固め始めていたが、それでもこの時期の出兵は予想外であった。

 なぜならあと一月か二月もすれば雪で道が使えなる時期である。ベルデ王国は完全にリトリア王国が油断している時期に攻撃を仕掛けてきた。


 派閥交流でリッチモンド領まで来ていたルルも予想外の時期の出兵に慌てるリトリア貴族の一人であった。

 ルルはひとまずシットとベンをリッチモンド領に置いていく決断をすると、フィンを伴うとスグルの肩に乗ってピレネーまでの道を急いだ。


「リッチモンド様からの馬を借りなくても良かったの?」


「馬よりスグルの方が早いわ!」


 街道を走りながらスグルが尋ねるとルルは答えた。


「少し王都の方へ寄ってギルを回収して領地に行くわ、きっと国境付近ではもう戦闘が始まっているから早く合流しないと」


「わざとゆっくり行ったほうが安全なんじゃない?」


 スグルがそう言うとルルが怒鳴るように言った。


「だめだわ! リトリアの地理的に考えると国境を突破されればすぐに王都まで攻め込まれるし、それに国境を突破されればすぐそこにはピレネーがあるわ!」


 スグルはピレネーという言葉にハッとした。もし、国境を侵されれば絶対に領民に被害が出るだろう。

 スグルの脳裏には巨人であるスグルにも関わらずやさしく迎え入れてくれたみんなの姿が思い出された。


 家の資材を運ぶのを手伝ったときには、もうすぐ子供が生まれるんすよと笑いながら話しかけてくれた若い農民。

 屋敷を建てたときに、ルルの良さについて熱く語り合った老人。

 肥料を運んでったらありがとうと()()()大の肉をくれた気前のいいおじちゃん。

 王都や領地で一緒に遊んだ子供たち。

 

 少し考えただけでも名前は知らなくともスグルに好意を向けてくれた多くの人たちの顔が思い出された。


「たしかに、あの人たちの笑顔を守らないといけないね」


 スグルが決意するようにそう言うとルルは自嘲するように言った。


「まあ、国を守るためとはいえ、私はこれから徴兵をしてその守るべき領民を戦いに駆り出さないといけないわけだけどね」

 

「それは……」


 スグルが何も言えなくなると、ルルは決心した声で言った。


「それが、貴族よ。特権がある代わりに責任がある。私はできるだけ多くを守る義務があるわ」


「それがルル様の義務なら、僕の義務はルル様とルル様の大事なものを守ることだよ」


 スグルがそう言うとルルは笑みを浮かべ言った。


「私の大事なものを守るならスグルも入っているわ。絶対に生きて」


 ルルの言葉にスグルは思わず目頭が熱くなるのを感じた。


「もちろん、僕の役目はルル様を守ることなんだから死んだらその役目も果たせないじゃないか」


 スグルはそう言うと、王都までの道を急いだ。


 

 それにスグルたちが気付いたのは王都とリッチモンド領のちょうど間ほどに差し掛かったころであった。1000人ほどの集団がこちらに向けて歩いてくるのが見えた。

 向かうからもスグルたち見えたのだろうか、馬に乗った人が二人が集団から離れるとこちらに向けて走ってきた。


「もしかして……」


 スグルもその人物に気付くとルルも気付いたようでその者の名前を叫んだ。スグルの耳元で。


「ギル! スミス!」


 スグルがその切ないところをキュンキュンさせているとギルが足元まで来て言った。


「ルル様、王都でスミスが率いてきたピレネー軍と合流しました」


「ギルよく合流してくれたわ! それと、スミス、どうしてここが分かったの?」


 予想外の合流にルルが喜びを感じながらも疑問の声を発するとスミスがそれが……。といい答えた。


「ルル様が不在時に王国から出兵命令の手紙がとどきやして、さてどうしようかってなった時にマッドさんが1000人ほど率いて、王都を経由してギル殿を加えた後、歩いてけばきっとこのあたりでルル様合流できるだろうって言いまして……」


「確かに1000人が妥当な人数だしちゃんと合流できたわね、マッド優秀じゃないの」


「俺も半信半疑だったんだが、ルル様に合流できて驚きやしたよ」


「でも、よく1000人も集められたわね。この時期は男手が欲しいでしょうに」


 ルルがそう言うと合流してきた民兵たちが口々に言った。


「おらたちに土地を与えてくれたルル様のピンチだったら真っ先に駆け付けなきゃだめじゃねえかと思ったんだ」


「聖女様が領地を守ってくれるなら、俺たちも聖女様を守らなければ罰があたるってもんよ」


 何人かがそう言うとあちらこちらでそうだという声があがった。


「みんな……」


 ルルが思わず声を震わせるとギルが言った。


「ルル様、ここは威厳のある声で感謝と激励を示す場面ですよ」


「そうね」


 ルルが思いなおすように答えると次には、ルルは小さなそのおなかからは想像できないほど響く声で言った。


「みんな、国を守るために立ち上がってくれてありがとう。これから命を失うことがあるかもしれない、けがをするかもしれない。だけどそれは国を守る名誉あるものよ。先人たちが築き上げてきたこの国を、人を、そしてあなたたちの大事な人を守るために力を貸して!」


 ルルの言葉は不思議と勇気が溢れてくるものだった。それは民兵たちも同じだったようで民兵たちは大きな雄たけびでその言葉に答えた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 そうしてルルはスグル、ギル、フィン、スミス、そして故郷も守るために立ち上がった勇気ある民兵とともに布陣命令の出てる南東の国境線へと向かっていった。


 

某スレにさらしたことで自分の文章の欠点が痛いほどわかりました。

しかし、文章のクオリティーはすぐにあがるものではありません。書かないことにはクオリティーは上がらないので少しずつ上達するように頑張ります。

タイトル、あらすじ変更しました。また変わるかもしれないです。

以前の話が改稿されてたりしますが、文章の修正が主で話のあらすじ自体は変わってないので、すでに読んでもらった方には読み直してもらう必要はありません。よろしくおねがいします。

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