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16話 評判の鍛冶師1

 領主会議も終わり、ルルたち一行がその本拠地であるピレネー高地にもどる準備をしているとスグルの左肩に乗っているルルが思いついたように言った。


「そうね、スグルも一応騎士なんだし剣のひとつくらい拵えましょうか」


 ルルはそう言うと、スグルに得意げな顔で「どう」と聞く。

 スグルは剣と聞いて、どっかのアホ毛の女の子が使ってるナントカカリバーとか、ジャージで異世界転移してるあの人の相棒の喋る剣とかを思い浮かべてハッとして聞いた。


「この世界は喋る剣とかってあるの?」


 スグルがそう言うとルルはたまらないとばかりに吹き出した。


「喋る剣なんてないわよ、スグルのいた世界にはそんな変な剣があったわけ?」


 スグルはなんだか恥ずかしくなって「あったかも」とだけ答えた。


「まあ、いいわ。今回はこの前に馬鍬を作ってもらった鍛冶師に頼もうと思っているの。私も会ったことないからどんな人かはわからないけどね」


 スグルが腕がいいの? と聞くとルルは答えた。


「スグルが引けるようなサイズの馬鍬(まぐわ)を1週間ほどで作れる職人よ、かなりの腕があるはずだわ」


 スグルは凄腕の鍛冶師と聞いて、喋る剣は無理でもナントカカリバーならいけると思い始めていた。


「それは期待できそうだね」


「私は、スグルサイズの剣に一体いくらかかるのか不安でしかたないけどね」


 ルルが苦笑いで言うと、スグルはそうだった! と思い叫んだ。


「破産寸前貴族のルル様にそんな高額なものを買ってもらえませんよ!」


 スグルがそう叫ぶと、先ほどから巨人であるスグルを物珍しそうにチラチラとみていた王都の都民たちはいっせいに吹き出した。


 ルルはまず、真っ赤な顔になると、手を握り締めて、1秒静止した。


 人間、時間が止まったという感覚を感じる時があるのである。例えば、己の危機が迫っているときなどである。たっぷりその感覚を味わいながら……。


 一秒後……。


「別に破産寸前ではないわよ!」


 スグルはもう何回か耳元で叫ばれているので対処をしていたが、それでもなおルルの大声の威力はすさまじかった。もう、男の子の切ないところがキュンキュンしているのであった。

 

 そんなルルの声は王都の大通りに広がり、盛況だった市場は途端に静まり返った。

 ルルはその光景を見るとスグルの肩の上で体育座りになるとぼそぼそ言った。


「もういいもん、私なんて」

 

 ルルはイジイジしながら指で延々とスグルの肩に円を描いていた。

 そのくすぐった気持ちいい感覚を感じながらスグルは場違いにもなにこの子かわいい! とか思っていたがそれは大通りの男どもも同じようだった。

 スグルも男どももみんな揃って(*´ω`*)←こんな顔をしていたのだった。 



「ごめんよ、ルル様。」


 しばらく歩きながらも機嫌を直さないルルにスグルは悪いのは自分なのでひたすら平謝りしていると、ルルは怒った声で言った。


「領地にかえったらスグルを馬扱いにしてひたすら農地開拓させるから覚悟しなさい!」


 もう、ルルに調教されはじめているスグルはその言葉を聞くと笑顔になり叫ぶように言った。


「よろこんで! 僕はルル様の馬になるよ!」


 そのあと、ルルはその言葉で機嫌を直したが、この主従の馬にする宣言と馬になる宣言には王都の民衆も一部をのぞいて引いているのにこの残念主従は気付いてないのであった。

 


 しばらくすると王都に詳しいフィンがその目当ての鍛冶屋を見つけ出すと「ここです」と言った。


「鍛冶屋、豊穣の(くわ)。ここね」


 ルルはその鍛冶屋に入るとそのまま剣はあるかしら? と聞いた。

 それに対して帰ってきた言葉は、


「帰れ!」


 であった。



ちょっと笑える話にしてみたつもりですが、滑ってたら僕悲しいです。


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