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15話 派閥

「あの、私は隣の領地のハルトマンじゃ、そなたヴィルヘルムどのの派閥に属しておるのだろ? ぜひ口利きを頼みたいのだが」


 そう言ってルルに話しかけているのは、スグルが以前シットとともに借金を盾に協力を取り付けにいったハルトマン伯爵であった。


「えっと、あなたは私の案に賛成してくれたハントマン様……」


 ルルは困惑しながらも、口を開く。


「私はまだどこの派閥にも属してないですが……」


 ルルがそう言うとハルトマン伯爵は取り乱すように叫んだ。


「そなた! 私はそなたの味方をしてアルベール殿の派閥を抜けるはめになったのだぞ! 責任をもって私の派閥参加の口添えくらいしてくれてもかまわないではないか!」


 もちろん、秘密裏に交渉したのでルルがそれを知るはずもなく、ルルはただ困惑していた。

 すると、その会話に入ってくる貴族がいた。


「そうか、ハルトマン殿は私たちの派閥に入りたいのか」


 それはハルトマンに続いてルルの案に賛成した貴族であった。


「リッチモンド殿……!」


 苦虫を噛み潰したような顔でハルトマンはその名前を呼ぶ。


「私はヴィルヘルム様の派閥をまとめる役を担っているウィリアム・リッチモンドだ。この度はルル・アルデンヌ殿を我が派閥に迎え入れたいと思い話をさせてもらおうと思ったのだが、そうか、ハルトマン殿も我が派閥に入りたいのであったか」


 ニマっと弱者をいたぶるような目つきになったリッチモンドはハルトマンに視線を合わせる。

 対するハルトマン伯爵は視線こそ合わせるがどこか目が泳いでいた。

 ルルはリトリア貴族のメンツを大切にするという例のあれを思い出すと、こちらもまた悪い目になるとハルトマン伯爵を見て言った。


「私、まだリトリアのことがよくわかっていないので、隣の領地の領主であるハルトマン様と同じ派閥に入りたいわ」


 先ほどは、自分の案に賛成してもらったためどちらかと言うと借りがあったといった感じあったが、今度はルルがハルトマンの顔を立てる形で派閥に口利きした形になったのでルルが貸しを作ることに成功した形だ。


「そうなのだ。私も我が国に新しく加わったルル殿を支えたいと思ってな、ぜひに同じ派閥に入りたいと思っているんじゃよ」


 ハルトマン伯爵は内心この娘っ子にやられたと思いながらもその貴族の経験を活かしてにっこりと表情を取り繕った。


「そうであったか、それならばぜひお二人には我が派閥に入ってもらおうではないか!」


 リッチモンドはそう言うと、ルルの手を握ると握手をして耳元で囁いた。


「そなたがあの農耕派閥のアルベールたちの力を弱めてくれて私はとてもうれしいぞ」


 ルルがあいまいに笑って返事をするとリッチモンドはハルトマンの手を握って今度はルルにも聞こえる声で言った。


「あのアルベールらの後ろを金魚の糞みたいについていったそなたをまさか我が派閥に迎えるとはな!」


 その明らかな侮辱にもハルトマンは弱者が生き残るために必須な雑草魂を発揮すると笑顔で答えた。


「これからよろしくおねがいします。リッチモンド殿」


 リッチモンドはつまらなそうに「そうか」と返事をすると今度はルルとハルトマンに向けて言った。


「ヴィルヘルム様の派閥は騎士団に影響力を持つ派閥である。つまり王国騎士団に有利な条件を勝ち取るために集まった派閥だ、それに対してアルベールがまとめている農耕派閥はどちらかと言うと内政に影響力を持つ派閥だ。つまりルル殿は彼らと利害関係が衝突しているわけだ」


 リッチモンドはそう言うとにっこりして言った。


「ルル殿は農地を有しているのに加えて巨人を所有している。我が派閥でも大きな影響力を持つことができるだろうな」


 ルルはそういわれると笑顔で言った。


「ええ、私も食料で派閥の力になれるならうれしいわ。それと、私の所有している巨人とおっしゃいましたが、彼は私のお抱え騎士でスグルという名前もあるので今後覚えてもらえると嬉しいわ」


 スグルは自分を一人の人としてみてくれるルルにうれしさを感じながらもなんとなく自分に視点があたりそうでかなり恐怖を感じた。


「そうか、そちらの巨人殿はスグルという名前であったのだなそなたも我が派閥の一員としていざとなったら力になってもらうぞ」


 リッチモンドはそう言うと上機嫌になり「では、また次の定例領主会議で会おう」と言って去っていった。


「私もここで別れさせてもらおうかな」


 ハルトマン伯爵が場を辞そうとしていたのでスグルは改めてシットに教えてもらったプリティスマイルになると言った。


「これからよろしくお願いします。ハルトマン様」


 ハルトマン伯爵はスグルと目を合わせると「ヒィ」という声を出すと逃げるようにその場を去った。



 そのあとその様子に困惑していたルルにスグルがシットと行った裏工作を話すとルルは盛大に笑うと言った。


「それは傑作ね! でも私のためにありがとうね。スグル」


 他人の不幸を笑うルルの性格の悪さも感じながらスグルは「ありがとう」と言った時のルルの笑顔にやはりときめきを感じるのであった。


 

う~む最近主人公であるスグルが若干空気気味な感じに……。

話を書くのは難しい。

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