パーティ追放から始まる錬金術師のTS生活
「お前はこのパーティには不要だ」
僕――グレイ・バルトはそんな一言を以て、昨日パーティを追放された。
数か月ほど一緒にいた仲間達であったが、別れとなると実にあっけないものであった。理由は簡単だ……錬金術師である僕が、パーティの足を引っ張っているということ。
そして、僕はそれを否定できなかった。
……パーティには治癒術師と魔術師がいる。いずれも後衛であるが、治癒術師は回復に特化していて、魔術師は攻撃に特化している。
それならば、僕にできることは何か? そのどちらも可能とするが、いずれもプロフェッショナルには劣る存在――そういうと、分かりやすいだろうか。
回復は術式によるものではなく薬で行う。攻撃も、錬金術師は魔石などの道具を変化させて戦うことが主軸となっている。
僕の場合、周囲の岩をゴーレムとして使役しているわけだけれど、その攻撃では前衛にも後衛にも劣るのだ。
故に、僕はパーティを追放された。――そのことについて、今更意義を申し立てるつもりはない。
けれど、不服なのは確かだ。
主に、自分の実力のなさに対して、だ。
「……ようやく、完成した」
だからこそ、僕は冒険者として次のステップへ進むことにした。――錬金術師が得意とするのは、特に秘薬を作り出すことにある。
名のある錬金術師であれば、後世にも残るような薬を作り出して、それだけで食べていくこともできるというくらいだ。
僕が作り出したのは、『魔力強化薬』。それも、通常の十倍以上の効果が望める薬だ。有り金を全て叩いて借金までして作り出した代物であるが、この薬を使えば間違いなく――僕は強くなれる。
「秘薬で強化できるのは、錬金術師の特権だ。これが上手くいけば……僕は強くなれる」
不安はあるが、自信もある。
僕の作り出す秘薬に間違いはない。……もちろん、どんな秘薬にも副作用が出る可能性はあった。
だが、そんな副作用を恐れていては――錬金術師は務まらない。
僕は意を決し、赤色の秘薬を飲み干した。
「まっず……」
思わず顔をしかめる。泥にパンを浸したような、そんな味。
秘薬の力は、飲んでから数分のうちに作用するはずだ。
「これで、完璧……ん、なんか、眠く……」
……副作用だろうか。やけに眠くなってきた。
まさか、このまま目覚めないなんてことは……そんな恐怖もあったが、気付けば僕は意識を手放していた。
「――ん」
そして、目が覚める。
どれくらい眠っていたのだろう。まだ、それほど時間は経っていないようだ。
強い眠気であったが、目覚めてみると、身体は随分と軽かった。
「秘薬の効果か――は?」
第一声。強烈に感じられたのは、僕の耳に届く違和感。
実に可愛らしい、女の子の声であった。
どうして僕が声を発して、女の子の声が聞こえてくるのだろう。そんな疑問と共に、嫌な予感がすぐに頭を過ぎる。……錬金術師の作り出す秘薬の副作用の中に、非常に稀有な例として一つ――『性転換』というものが存在する。
望んで作り出すことは非常に難しく、まだ誰も作り出したことはないもの。だが、副作用によって突発的に発生することがあり、錬金術師の中には性別が変わったまま過ごすことになった者もいると聞く。
「あはは、まさか、ね……」
僕がそんな運の悪いことになるはずはない――そう思いながらも、慌てて洗面所へと向かう。
その鏡に映った姿は……紛れもなく女の子であった。
透き通るような白い肌。藍色の長い髪に、碧い瞳。まだ幼さの残る顔立ちは、十三、四歳くらいだろうか。僕は二十歳になったばかりだというのに、年齢すら、若返っている。
「……はあああ!? いや、まさか本当に……!?」
僕はようやく、事態の大きさに気付く。
秘薬の副作用で、『女の子』になってしまったのだ。
「お、落ち着け……そうだ。秘薬の効果であるのなら、一過性の可能性もある。時間が経てば元に戻る可能性があるんだ……。それよりも、僕の魔力の方は……?」
自らの心を落ち着かせて、魔力を確認する。
身体に流れる魔力は――以前に比べると尋常じゃない程に高まっているのを感じた。
秘薬の効果は得られている……成功だ。
「ふっ、多少誤算はあったけれど……完璧じゃないか。あとはこの状態さえ治せればいいのだから」
こうして、僕は秘薬の効果で高い魔力を得ることに成功した。
けれど――一月たった今でも、僕は女の子から戻れないでいる。
気付けば、グレイ・バルトという名ではなく、クレアという天才錬金術師の少女としての人生を――歩むことになっていたのだった。
パーティ追放物をTSで書くならこんな感じかなぁ……と思い書きました。
もうちょっと深堀とかしてみたいですけど、TSした子が無双しながらも苦労するお話が書きたいだけなので、軽めでもよいかもしれませんね!




