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あんたなんて、あんたなんて、大好きっ

「ねえねえ、土曜日にお出かけしに行かない?」

「行けば?」

こいつは俺の予定とか何も考えないから、付き合っていると面倒だ。唐突に話しかけられた俺は、ほとんど脊髄反射で同行拒否した。1年近く一緒に暮らしているが、だからこそそろそろ面倒くさい。


「一緒に」

「は?やだよめんどくさい」

「大っ嫌い!」

脛を蹴られる。

「こんど焼き鳥おごってやる」

「好き。愛してる」

後ろから首に飛びつかれる。本当に現金な奴。


「お前の愛、やっすいな。200円くらいで買えちゃうのかよ。その辺のお前のファンの奴らに教えてやったら喜びそうだ」

それ以上に、こんな気安くじゃれていることに悔しがりそうだが。


「ええー。私そんなに安い女じゃないよ。他の人におごられてもうれしくなんかない・・・わけじゃないけど」

「やっぱり俺にまとわりついてくるのって、餌貰えるからか」

そう俺が言うと、明らかに機嫌を悪くした様子で彼女はそっぽを向いた。

「餌言うな!いくら私がビーストチックだからって、そんなペットプレイみたいなことを言うなんて。私でもご飯はご飯です」

「チックっつーか、獣じゃん。その耳とか、尻尾とか。その小柄で貧相な体といい」

威嚇された。


「ままま貧しくないやいっ。胸はほら、子供が出来たら大きくなるし」

ぺたりと座り、むふんと胸を張っている。凄くほほえましい。・・・ハン。

「あ、鼻で笑ったな?!絶対でかくしてやるからな、みてろよこんちくしょう」

「畜生はお前だ」


「うるへー、やんのかこるぁ!」

「おまえ、そのなりですごまれてもキュートなだけだぜ」

「可愛いなんて言われたって嬉しくなんかないしっ。・・・結婚する?」

「めっちゃ喜んでんじゃねえか。しっぽふらふら揺れすぎ。あと結婚はしない」

てか出来ないし。


「あ、でも子供は欲しい」

「身体だけが目当てってこと?!鬼畜!人でなし!女の敵!!」

「確かに身体だけが目当てかもしれん。喋らないでくれればなお良し」

猫って普通喋らないしな。てかなんでこいつは人の言葉を話せるんだ?おかしいだろ。


「はあああ!?マグロが好みなの?!」

「マグロ言うな。ツナ缶好きなのはむしろおまえ。てかお前の身体というよりお前の子供の身体が目当てというか・・・。どっかで適当にはらんで来てくんね?それでガキだけ俺のところに置いて行ってくれ」

「さいてー!ばーかばーかっ!車にひかれて死ねっ」

死因の発想がもうそれっぽいなあ・・・。


「冗談だって。・・・いや冗談でもないか。お前ももうお婿さん探さないといけない歳だろ」

「じゃあ結婚する?」

「なんで俺が娶らにゃならん。一匹くらいなら面倒見てやってもいいから好きに婿を拾ってきなさい」

「やだ」

「俺もお嫁さん連れてくるから」

「むり」

「無理ってなんだよ、無理って」

辛辣だなこいつ。確かに今は恋人居ないが、別に過去にいたことがなかったわけでもない。


「一生私以外と結婚できないオーラが出てるから」

「酷いなお前」

すごいな俺の人生。しゃべる猫みたいな神秘の塊みたいなやつに言われたら、本当にそうなりそうな気になってくるからタチが悪い。


「でも昨日手紙貰ったんだぜ」

「はあ?勧誘?」

「宗教のチラシじゃねえよ。ラブレターだよ、ラブレター」

「嘘よくない」

「嘘じゃねーし」

「じゃあブスだ」

「いや、結構な美人」

「死ね」

「直球過ぎんだろ。なに、どっちに言ったの」

俺か、相手か。すげえドスの利いた声だった。こええよ。


「うるさい死ね」

「俺に言ったのかよ」

軽くデコピンをする。


「ふにゃっ!?なにするの!」

「ふにゃっ!?だって。かわいい」


「可愛いなんて言われたって!」

「そのくだりはさっきやった」

彼女はむっすりとむくれる。こいつは本当にかわいいな。こうも感情の分かりやすい奴はなかなかいない。膝の上に抱えて頭を撫でてやる。


「なによっ!すき!」

「嫌い、だろ。間違えてんぞ」

「間違えてないわよっ」


「お前は本当に俺のこと好きだな」

ま、俺も猫は好きだけどさ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 擬人化されたしゃべる猫が、それっぽく可愛く思えるところが良かったです。
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