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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
6/62

バグエッグの生態

「はぁぁぁー!!」


またも真っ直ぐに突っ込んでくる野良犬を殴り飛ばし血飛沫と共に命を散らす。

倒せた、と一息つく間もなくまた次がくる。

そしてこれを倒したら次、また次、次、次、次……。


「っていい加減にしろー! どんだけ湧くんだよお前ら!!」


何故かさっきから森の肉食獣が代わる代わると押し寄せて来てんだけどどうなってんだ、これ! 


これは明らかにおかしい、さっきまでと出没パターンと違いすぎる。

さっきまでは確実に俺より強力な個体が一匹ずつ出てたけど今は弱いのも強いのも片っ端から寄ってくる感じだ。

それに今まであった群れでの連携もなにもなく我を忘れたかのようにバカ正直に襲ってくるだけだ。

お蔭で経験値はかなり稼げてレベルも5になったがこうも次から次へと来られると敵わん。

原因として考えられるのは……まぁ、現在進行形で後ろで回避無双してる謎深き虫卵にして俺の従魔になったらしいイセットしかいないだろう。


そしてイセットが従魔になった後に追加されてた『配下』項目が点滅していたのだが、強いのから逃げるのに忙しくてまだ未確認のままだったりする。

あっちこっちからの唸り声を聞くにまだまだお代わりがあるっぽいが片っ端から倒しまくったお蔭で様子見の模様。

この少しだけで出来た暇に素早く思考操作で『配下』からイセットのステータスを開く。

_____________________


  名前『イセット』 性別『未定』 種族『虫卵バグエッグ


  種族レベル『3』 属性『無』 特性『甲殻、喰香』


 《スキル》


『回転LV5』『回避LV4』『逃走LV4』『突進LV3』『弾化LV2』


《称号》


名有化物ネームドモンスター』『付き従う者』

_____________________


……オーケイ、まーた色々突っ込みたいことが散見してるがとりあえず今はスルーだ。

スキル構成は徹底的なまでに回避・逃走に特化してる感じだ。

で、肝心なこの敵を無制限引き寄せしてる原因になってそうなのは特性『喰香』しかない。


あれか、バグエッグって物凄い珍味で美味しい匂いを漂わせてるとかそういうオチか?

俺には地面をゴロゴロとしてた時付いた土の匂いしか嗅げないけど種族的な違いか……


「ッ! おっと。もう再開か? バグエッグ屋台とか開く予定ないからそろそろお帰りに願いたいんだけど、な!」


幸いこの野犬の群れは然程強くはない、火爪熊と比べれば赤子と大人ほどの差はあるんじゃないと思うくらいに。

ダイブしたての頃なら兎も角それなりに戦い方が定まってレベルアップした今では真っ向勝負なら一発で倒せる相手だ。

まぁ、ウザったらしいくらい数多しいくら返り討ちにしても別のが襲ってくるのでこのままじゃ負けそうだけど……。


因みにイセットの方はまだまだ余裕だったりする、無駄に高難易度のスピン技で曲芸じみた空中跳躍とかして遊んでるので間違いない。

これは憶測だがイセット自身に攻撃力が皆無だからこそ磨かれた技術ではと思われる。

レベルもイセットのログを見るにこの連戦で上がったぽいしほぼ間違いなくそうなのだろう。

だって持ち上げた時に一度突っついて見たけど野良犬の爪に直撃されたらシャボン玉のように弾け飛ぶくらいに脆い感触だった。

あれじゃ体当たりとかの無茶をしたら反動で死ぬだろうと簡単に想像が付いた。


「だったらここを一旦離脱して匂いを消せばいい、はっ! ……けど、マジでキリがないなコイツら。本当何匹いるんだこれ? ふっ!」


そろそろMPも底をつきそうだから逃げるなり何なりしたいけど包囲網に隙がないからそれも難しい。

一か八かで一点突破しかないか?


《種族レベル5から6に上がりました》


レベルアップ来たあぁぁー!!

これでやっとあのスキルが取れる。


まだまだ襲ってくるがダメージ覚悟でスキル習得画面を開いて選択する。


《スキル『抗魔LV1』を習得しました》


この『抗魔』スキルは魔法ダメージと状態異常魔法に対して抵抗力が強まるというスキルだ。

もっと汎用的なのもあったが20ポイントとかするのばっかなので今はこれで妥協することにした。

これで心置きなく無茶が出来る。


「イセット! そこのを引っ掻き回せ!」

(ゴロゴロ!)


イセットが賢いのか従魔ってのになってる影響か知らないがイセットは大体の指示に従ってくれるみたいだ。

今も指示通りに自分を執拗に狙う野良犬共を誘導してお互い縺れさせたりして大活躍を繰り広げている。

これは曲がりなりにもイセットの主人である俺も負けてはいられない。

 

もう慣れた操作で魔力を肘に集めて溜め、走る。

さぁ、残り全部絞り出す勢いで……放つッ!


「はあぁぁぁッ!!」

「ギャインー!?」「グゥンッ!?」「ギャン!?」


高水圧で押し出せれた拳の威力に真っ直ぐ吹き飛んだ野良犬が他の野良犬にぶつかりドミノみたいに倒れる。

よし、大成功! 気分はボーリングのストライクを叫びたい感じだ。

そのままついでとばかりに進路上にいる野良犬を踏み付けながら全速力でダッシュして包囲網を拔ける。


「このまま逃げ切るぞ!」

(ゴロゴロ!)



♢  ♦  ♢



野良犬の包囲網を抜け出し走り続けて体感1時間くらいしたとこで漸く追尾を振り切るのに成功した。


「はぁ……はぁっ……、しつこ、すぎだろ……」

(ゴロゴロ~……)


つ、疲れた……心なしかイセットも元気が無いような気がする。

逃げる最中に少しだけ回復した魔力で水を生成して浴びるように飲みイセットにも臭い消しなるかもなので水をかけとく。

これで『喰香』が消えるか薄れてくれればいいんだけど軽く水浴びした程度なのであんまり期待出来そうもうない。


「しかし、本当に撒けたのか? 正直どこに隠れて進んでも匂いで追ってくるからここに来る直前までは追い付かれると思ってヒヤヒヤしてたけど……」


そういえばなんかこの辺りやけに静かな気がするな……長居はするのは辞めよ、なんだか嫌な予感がする。

不安が拭えないまま、ここを抜け出すためゴロゴロと付いて来るイセットと森の獣道を進んで行く。

進むにつれてどんどん熱帯樹みたな木が増えて、そこにバナナぽい紫色の細長い果物が自然と目に入った。


なんともまぁ、あざといまでに毒々しい色してる果物だなぁ~、と思いながらも歩んでいると風切り音

後に右肩へ衝撃が走る。


「くぅッ!? こ、この投擲は……やっぱりお前か空歩猿ぅー!」

「ウキー、キィ~」


石が飛んできたと方向へ視線を瞬時に向けるとそこにはバナナの皮を振り回しながらゲラゲラと卑しく嗤う緑色の体毛をした猿がいた。

間違いなく、俺を殺したランキングとかにしたら上位入りするあの空歩猿だ。


「あ、あの野郎ッ!」


毎度のことだけどあの猿マジでムカつく! どれだけ無理矢理に誘導されて罠にかかり笑われ、その度に顔に果物の皮を投げられ嗤われたことか……思い返しても忌々しい、あんのクソ猿めぇ。 

それにさっきは逃げるのに必死で不思議に思わなかったが野良犬共も慌てて引き返してた気が……さてはあの犬っころども、ここがあの猿の縄張りだと知って俺たちを囮にして逃げやがったな。


「俺もやられっぱなしだった頃よりはレベル的には強くなったけど……それでもコイツとだけは会いたくなかったなぁ」


何せまったくと言っていい程に勝てる気がしない。

考えながらも一応投石と魔法で遠距離攻撃してみてはいるんだけどやっぱり当たらない。

空中で直角で曲がるわバク転するわで挙動が読めない、あと時々混じる煽りがウザくて手元が狂う!

これまでもこのパターンに嵌って無駄に体力を消耗して疲れ切って反応が薄くなると超速接近され首を撥ねられて死んでいた。

このまま行くとまた同じような流れで首チョンパされてお終いなのは分かっているのだが……あんな複雑な三次元機動を戦闘初心者に毛が生えた程度の実力で見切るのはどう考えても無理。

火爪熊は正面から襲って来る分まだマシだったんだな、とヒシヒシと実感する状況だ。


「何とか動きを止められれば……ってイセット!?」


無い知恵を絞ってどうにか戦況を好転させられないかと思い愚痴っていたのだが足元で今までじっとしてたイセットが前触れもなく空歩猿へと飛び込んだ。


「おいおい、何やってイセット早く戻れ!」


あの空歩猿はどう考えてもイセットが敵う相手ではない、そもそもイセットは当たれば一撃で叩き割られる耐久力しかない筈だ。

なのに何で真正面から……と自分の手が届かない空中に躍り出たイセットをただ見守ることしか出来ないでいると空歩猿が腕を身に巻くように引き絞り例の『風魔法』と思われる横薙ぎを準備に入りながらイセットの通る予測軌道を立体的角度で避けたのが見えた。

自身がいる空域に入られたのが気に食わないのか警戒しているのかしれないが空歩猿は自身に接近出来る敵をほっとくつもりはさらさらないようだ。

突風を纏う空歩猿の長い腕が振るわれている光景に目を瞑り……そうになったその瞬間まるでその突風の流れに乗るように伝い空歩猿の顔面に体当たりをかました。


「ウキィー!?」

「は、はぁー!?」


あまりにも予想外の展開に殴られた空歩猿も勿論俺も間抜け面を晒す。

イセットのやつ空歩猿の動きが読めるのか!? いや、そういえば三次元的な機動はイセットも得意分野だったな。

ある程度は読めて当然って訳か……と、考えたとこで思い出したようにはっとなる。


「暢気に分析してる場合じゃない! あんな勢いでぶつかったら……」


空歩猿を弾き飛ばしてそのまま墜落したイセットの傍まで駆け寄る。

そこには無残にひび割れてイセットが……なんて事はなくなんか少しメタリックな輝きを帯びたイセットが転がっていた。

なにこれ……あ、もしかして……やっぱりいつの間にかイセットのレベルが4になってスキルに『硬化』が増えている。

そういや最後に確認した後も何匹か野良犬を倒していたからそれでレベルが上ったんだろう。

イセットのログは確認出来るけどインフォメーション音声は聞こえないから気付かんかった……まぁ、相談もなしにスキルを取ったのには言いたい事があるけどそれは後でいい。

今重要なのはイセットとならあの空歩猿を倒せるないし追い返せるかもしれないってことだ。

空歩猿は見たとこあまり頑丈ではない、いくら『硬化』したとは言え遥か格下であるはずのイセットの攻撃で今も目を回しているのがその証拠だろう。

直ぐにでも畳み掛けたいがいつの間にか生じていた風の障壁に遮られて迂回しないと無理そうだ。

そして流石に迂回してる間に回復は済ませ仕切り直すことになるだろう。

だからもう一度イセットに空歩猿を落として貰う必要がある……が、これは相手の懐に飛び込むイセットには相当なリスクを伴ってしまう作戦だ。

でもこの猿はなるべく早く倒さないと行けないそんな根拠はないけど予感がするのだ。


「イセットさっきのもう一度行けるか?」

(ゴロゴロ!)


そう聞くと肯定するように勇ましくゴロゴロと転がって答えるイセット。

一番危ない役目なのに迷いなしの即答か……正直イセットが反対したら逃げに徹するつもりだった……俺よりもよっぽど肝が座ってるなぁ。

この子は危機感がない訳ではないことはまだ共に戦って間もないがそれぐらいは分かる。

あんな脆かった体で一匹(一球?)で生き延びただけはあると言うべきか。


「はは、これは主としちゃ本格的にかっこ悪い真似出来ねーな! 上等だもう猿でもゴリラでもかかって来いや!」


自分を奮い立たせるために雄叫びを上げながらイセットと消えた風壁の向こうへと踏み出した。

・アベルくんキルランキング♪


1位:炎爪熊フレアクローベア

4位:風乱猿エアロモンキー

3位:影沈猪シャドウダイバーボア

4位:邪妖精密偵ゴブリン・スカウト

5位~:その他多数


作者の力になるよう酷評でもいいので評価ポイントを押していたたければと!




ボタンこの下だから忘れないでね? ↓

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